11/20 ニュースなスペイン語 Madrid me mata:私はマドリードに殺された
ショッキングな文字がならぶが、実は、これ、グラフィックデザイナー(diseñadora gráfica)のマリア・ラムイ(María Lamuy)が発起人(autora)となって、現在マドリードを中心に展開されているアートプロジェクト「Madrid me mata」の名称なのである。
同性愛憎悪(homofobia)、性別転換憎悪(transfobia)、貧困憎悪(aporofobia)、障がい憎悪(discafobia)、xenofobia(外国人憎悪)、LGBT憎悪(LGBTfobia)ー。スペインとりわけマドリードには、人種差別(racismo)に加え、このような憎悪が渦巻いている。そして、こうした憎悪が引き金となるヘイトクライム(crimen de odio)によって多くの人々が命を落としている。Madrid me mataプロジェクトはこうした犯罪を可視化し(visualizar)、告発し(denunciar)、そして、その犯行が行われた現場と犠牲者(víctimas)を人々の記憶に残すことを目指す。
このプロジェクトは、見出し画像に上げた1枚と、以下のような9枚の陶器(cerámica)に犠牲者の名前や容姿を描き、あたかも実在の通り(calle)の名前のように仕上げたポストカード(postal)が中心となる:
ラムイはこうした活動を通りの「resignificación(意味の再発見)」と呼ぶ。ポストカードに収めることで、これに何かをしたためて送ること自体が、ヘイトクライムの存在を知らしめるきっかけとなるーー。ラムイの狙いはここにある。
なお、上の9枚の作品の内、右下の女性、ルクレシア・ペレス(Lucrecia Pérez)はスペインで初のヘイトクライムの犠牲者として犯罪史に名を刻む。今から29年前の1992年、ドミニカ共和国(República Dominicana)から移住してきて1ヶ月ほどしかたっていない11月13日の夜、当時、移民たちの憩いの場であった「Four Roses」というクラブにいたペレスは、突然、入店してきた男の放った銃弾2発を受け、その場で亡くなったという。享年33歳。
世間を仰天させたのが、発砲した男が、当時25歳だった警察官(guardia civil)だったこと。未成年者たちも引き連れていたという。これは、極右(ultraderecha)が組織した「移民狩り(cacería de inmigrantes)」の一環だったことが後の調査で分かった。
結局、発砲した男は懲役54年(54 años de prisión)で現在もなお、服役中だが、残る未成年者たちはすでにいずれも釈放されているという。
私たちはひと時も忘れることはありません。しかし、憎しみを忍耐に変える努力をしなければならないのです(No se nos va a olvidar nunca, pero tenemos que esforzarnos por convertir el odio en tolerancia)ーー。母親が殺害された時、まだ、6歳だった娘は、今や亡き母の齢を越え34歳になった。そして、先日、遺族として上のような声明を出した。
遺族はヘイトを別の何かに変える努力をしている。ヘイト支持者は憎悪を持ち続け、発散するだけで良いのか。
写真はMadrid me mataのメインポストカード