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8/25 ニュースなスペイン語 Bienestar animal:動物の福祉

「Bienestar」は一般的には「福祉」と訳されるが、語の構成上は「bien(良く)」と「estar(あること;いること)」という意味のふたつの語が組み合わさった語なので、「福祉」以外の訳でも良い。

動物が心地よくいられること――。

こんな長い訳でも良いかもしれない。

そして、これが、今回のお話しのテーマでもある。

ここでの「動物」は主に「牛」もしくは「家畜」、「どこで」は「matadero」という施設内で、だ。

Mataderoのmataは「殺す」という意味。つまり、「屠殺場」のこと。ちなみに「闘牛士」を意味するmatadorも同語源。こちらは「殺しびと」が本来の意味だが、直訳は何かと物騒だ。

さて、家畜たちがいかに屠殺場で不安なく最期の瞬間を迎えることができるか――。こうした動物たちの福祉を保証するための法令(decreto real)が昨日、閣議(Consejo de Ministros)で可決された。

食の安全を改善する(mejorará las garantías de seguridad alimentaria)ことがもうひとつの政府の思惑だ。

この法令によれば、食肉処理場では、動物たちがトラックから降ろされる所(descarga)、施設内の廊下(pasillo)、屠殺器具(aturdimiento)、解体施設(sagrado)などに監視カメラ(cámara de videovigilancia)の設置を義務付ける。

そして業者は、後に問題があった時の検証(posible comprobación a posteriori)のために、録画を保存しておかなければならない。

この法令をまとめた消費大臣(Ministro de Consumo)のアルベルト・ガルソン(Alberto Garzón)によると、これ程までに徹底した動物福祉対策を講じている施設は、EU圏内では、トップクラス(primeros)だという。

動物福祉を充実させることには多いに賛成で、何の異論もない。肉派の小生としては、消費者の命になってくれる家畜たちが感じる苦痛は最小限であってもらいたい。

ただ、本法案を取りまとめた大臣、ガルソンはちょっと変わった人物。何かと物議を呼ぶ言動の主で、この「ニュースなスペイン語」にも、たびたび、現れる準レギュラー。

去年は消費大臣でありながら「肉を減らし、寿命を伸ばそう」というキャンペーンを執行部に諮ることなく、勝手に立ち上げて畜産業者から猛反発を受けた(2021年7月9日〜10日の記事を参照)。

今年に入って、巨大畜産業(megagranja)は「 土壌と水を汚し、虐待された動物たちの、品質の悪い肉が輸出されてゆく」という、データに基づいているのか分からない発言をして、国内の畜産業を敵に回した(1月6日〜7日の記事を参照)。

監視カメラの設置までの猶予期間として、大規模施設では1年、中小規模の施設では2年が設けられているが、ガルソン嫌いの畜産業者たちが、果たして、反発しないか…。

日ごろの行いがものを言う――。何もガルソンに限らない。自戒を込めて……。

写真はMatadero Madrid。マドリードにあり、現在は美術館だが、かつてはその名が示すとおり、屠殺場だった。

本文中に「屠殺器具」を表わす語に「aturdimiento」という語が出てきた。この語は「失神」という意味で、以下のような器具で、動物のコメカミに電気ショックを与えて、失神させた後、食肉に加工する:

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動物たちはこういう最期の経験を経て、我々の口に入ってくるだから、そんな彼らの肉を旨いだの、不味いだの言うのは、やはり、彼らに対する敬意が足りない。

出典
https://amp.rtve.es/noticias/20220823/espana-videovigilancia-mataderos-animales-alimentos/2397823.shtml