4/8 ニュースなスペイン語 Vox:ボックス党
ボックス党(Vox)関連のニュースを2つ。
まず、ボックス党の概要について。
2013年創立の政党なので、ポデモス党(Podemos)とほぼ同い年。もっと正確に言うと、ボックス党は同年12月17日、そして、そのちょうど1か月後の2014年1月17日にポデモス党が誕生した。何か運命めいたものを感じるが、両者の主張は真っ向から対立する。ボックス党は極右(ultraderecha)、ポデモス党は左派(izquierda)を自認するが、政敵からは極左(ultraizquierda)とも非難されることもある。
ボックス党を率いるのが、サンティアゴ・アバスカル(Santiago Abascal)だ。アバスカルはもともと国民党(Partido Popular)だったから、ボックス党と国民党の近頃のネンゴロぶりは決して不思議ではない。
そんなボックス党をめぐって、スペイン国内がきな臭い。
ひとつは、来月4日に控えたマドリード州知事選挙に向けて、ポデモス党がある人物を候補者として送り込んだ(fichar)ことによる。その人物の名はセリ・ンバイ(Serigne Mbayé)。セネガル出身の男性で、スペイン在住15年。スペイン国籍も取得している。路上販売組合(Sindicato de Manteros)の代表を務める。ここで言う「路上販売」は大きな毛布(mantel)の上に、モノを並べて売る形態を指し、セネガルをはじめとする外国からの移民たちがこれで生計を立てている。時に違法な出店として摘発の対象となる。
このンバイが出馬表明のビデオをSNSに公開した先月29日、ボックス党は「我々はあの男を追放する(Nosotros le deportaremos)」とツイートしたのだ。理由などの詳細は示していないものの、ンバイが黒色人種(negro)であるから、と周囲は受け止めている。ンバイ自身は「マドリードは大変人種差別的だ(Madrid es muy racista)」と嘆く。
そして、もうひとつのハプニングは7日、マドリード市バジェーカス地区(Vallecas)で起きた。マドリード州知事選のボックス党からの候補ロシオ・モナステリオ(Rocío Monasterio)が党首アバスカルと共に、遊説のため同地区を訪れた際、ボックス党の支持者たち(simpatizantes)と反ファシズムを掲げる住民たち(antifascistas)が衝突したのである。結果、2名が逮捕、13名が負傷した(うち1名は警察官)。
この衝突事件をめぐって、各党が様々に反応した。ざっくりまとめると、ボックス党とこれを支持する国民党、ボックス党とその支持者たちを非難するポデモス党、そして喧嘩両成敗の市民党(Ciudadanos)とスペイン社会労働党(PSOE)という構図だ。
アバスカルはすぐさま「ペドロ・サンチェス(首相)と(ポデモス党首の)パブロ・イグレシアスは我々がバジェーカスで演説することを妨げたかったようだ。数千の住民が我々に投票してくれたこの地区で。だが私たちは無事、話し終えた。マドリード全域で、そして、スペイン全土で我々は話し続けてゆくだろう(Sánchez e Iglesias, ... han querido impedir que hablemos en Vallecas donde nos votan miles de vecinos. Hemos hablado.Y lo haremos por todo Madrid y por toda España)」とツイートした。
現マドリード州知事イサベル・ディアス・アジューソ(Isabel Díaz Ayuso)は、「バジェーカス地区で起きた耐え難い攻撃に立ち向かうボックス党に、私の全面的な支持を表明します。マドリードは皆のものです(Todo mi apoyo a VOX ante los ataques INTOLERABLES sufridos en Vallecas. Madrid es de todos)」とツイート、ボックス党との蜜月ぶりをもはや隠すことはなかった。
州知事選に出馬することになっている、市民党のエドムンド・バル(Edmundo Bal)とPSOEのアンヘル・ガビロンド(Ángel Gabilondo)もツイートした。バルは「思想によって誰のことも非難する権利はない(No hay derecho a acosar a NADIE por sus ideas)」、ガビロンドは「極端な思想は極端な思想の持ち主によって育まれる(El extremismo se alimenta de extremismos)」とそれぞれツイートした。喧嘩両成敗的、優等生の弁だ。
ポデモス党党首のパブロ・イグレシアス(Pablo Iglesias)は「今日、ボックス党の極右の連中がバジェーカス地区で暴動をおこしにやって来た(Hoy los ultras de VOX han ido a provocar violencia a Vallecas)」とツイートし、名指しでボックス党とその支持者たちを非難した。「映像を見れば明らかだ(Las imágenes son inequívocas)」ともツイートし、極右グループが物を投げたり、アバスカルが警察の予防線を支持者と共に突破しようとしている、などと映像の解説を行った。
今回の衝突に関しては、ポデモス党とその支持者たちの分が悪い。「ファシズムの奴らは我々のバジェーカスから出て行け(Fuera fascistas de nuestros barrios)」と叫ぶ住民たちの映像が与える心証は良くない。結局、反ファシズムを掲げておきながら、最もファシズム的な方法で異なる思想を追い出そうとしているわけだから。今後、同様の衝突は各地で発生しそうだ。
写真はアバスカルのツイート(4.8)より。警官に「卑怯なケリ(patada cobarde)」を入れている極左の男性。