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11/24 ニュースなスペイン語 88 euros:88ユーロ

日本円に換算すると約1万4300円。

バルセロナのとある一角に55年間暮らす78歳の女性が、この88ユーロの支払いが不履行だったとして、裁判所から立ち退き(desahucio)を命じられた。

そして、今週の水曜日、退去が執行される段になって、活動家(activistas)や近隣住民ら(vecinos)がこれを阻止したというニュース。

検索してみると、こうした強制退去と活動家たちの攻防劇は比較的頻繁に起こっていることが分かる。

女性の名はブランカ(Blanca(写真))。

ブランカの住居はバルセロナの旧市街地にあり、ランブラス通り(Ramblas)にほど近いことから、現在、家賃は1000ユーロ(約16万2000円)にまで膨れ上がっている。

しかし、ブランカは昔からの家賃(una renta antigua)である338ユーロ(約5万5000円)を払い続けている。

オーナー(propietaria)はこの点には目をつぶったようだ。

しかし、オーナーが見過ごせなかったのは・・・

ブランカさんね、部屋を勝手に工事しちゃってね。それが、まぁ、ひどくて。おばあさんには工事費の請求書を送ったんですけど、気づかなかったみたいですね(Hizo unas obras en el piso, además mal hechas, y le pasó a Blanca una factura de 88 euros, pero la anciana no se enteró)

とのこと。延滞金も含め、負債総額は177ユーロ(約1万9000円)までになった。

しかし、家主はブランカから直接徴収することはせず、ブランカに対して、工事実費88ユーロが未払いであることを理由に、退去命令を出すよう裁判所に訴えたを起こした。

実はこの立ち退き命令は当初、2020年までに執行されるはずだったが(la ejecución del desahucio estuvo en un primer momento prevista para 2020)、コロナのために延期されていた(se suspendió por la COVID19)。

そして翌年はブランカから、自らが生活弱者(ser considerada vulnerable)であることを理由に立ち退きの延長を要望があり、これが認められた。

しかし、裁判所の最新の見解では、ブランカは社会的にも、経済的にも困窮状態にはおらず(no se encuentra en situación de vulnerabilidad social o económica)、2010年から、生活を維持するための経済的な収入源がある(recursos económicos como para mantenerse por sí misma)と認定されている。

こんな背景から、昨日の強制退去に至ったわけだが、様々な支援団体(diversas organizaciones)が早朝よりブランカの自宅に集結し、立ち退きを阻止した。

治安警察などは出動しなかったようだが、高齢(dada su edad)のブランカには、騒動はこたえたらしく(La tensión de la jornada ha sido muy grande para la mujer)、法務医(médico forense)が体調を診察する事態とになった。

観光客賑わう土地に物件を持ち、それに見合う収入を希望するオーナーの正義、法を粛々と執行する裁判所の正義、そして、老婆を守る市民団体の正義――。

そして、ここに、債務者を力ずくで退去させる追い出し屋(desokupa)の正義が加わることもある(4月16日の小欄)。

ややこしや、ややこしや。

写真はブランカの自宅前に集結し、強制退去を妨げようとする市民団体や近隣住民。

出典
https://www.rtve.es/noticias/20231122/mujer-enfrenta-desahucio-barcelona/2461626.shtml