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11/23 ニュースなスペイン語 Casual presencia:偶然居合わせただけ

野党(oposición)第一党の国民党(Partido Popular)があるスキャンダル(escándolo)の対応に追われている。

同党の党首であるパブロ・カサド(Pablo Casado)が先週の土曜日(11月20日)にグラナダのとある大聖堂(Catedral)で行われたミサ(misa)に出席していたことがスクープされてしまったのだ(viralizado)。

キリスト教徒たる者、ミサに出たからことで、何の誹りを受けることはないのだが・・・。

実はこのミサが、独裁者フランシスコ・フランコ(dictador Francisco Franco)の御霊(alma)に祈りをささげる(homenaje) ミサだったというのだ。これはフランコの命日(aniversario)を祈念するミサ。今年で没後46年が経過する。

国民党の思想は、確かに、右だ。しかし、フランコは独裁者であるという認識は政府内でも共有しているはずだし、ましてや、国民党が独裁時代に逆戻りすることを目論むほどの右翼思想というわけでもない。

しかし、今回のミサの参列者の中には、以下のように、ナチスかぶれの敬礼にふける右翼の連中がいる。これはさすがにまずい。

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どうして、このようなことが明るみになったかというと、見出し画像のように、フランコ熱烈信者のひとりが、カサドと写真を撮り、これをSNSに公開したのである。

カサドは当日、「夕食前にカテドラルに行ったら、すでにミサは始まっていた(a la Catedral, antes de cenar, con la misa ya empezada)」と認めた。家族(familiar)も一緒だったことを明らかにしたものの、「ミサの最中、誰もフランコのミサであるとは何一つ言っていなかった(nadie dijo nada de que fuera de Franco durante la homilía)」と釈明した。国民党本部もこれを「偶然の産物(atribuye a una casualidad)」にすぎないと声明を出した。

一方、フランコの資財などを管理しているフランコ財団(Fundación Francisco Franco)はホームページなどで、20日にフランコに祈りをささげるミサが開催されることを表明している。本当に、カサドは何も知らなかったのか。フランコ財団は、カサドを招待していないので、同ミサにカサドがいたのかどうかの責任は持たない(no puede responsabilizarse)が、カサドにミサ参列の「謝辞(agradece)」を述べた。

与党のポデモス党(Podemos)の報道官、パブロ・エチェニケ(Pablo Echenique)は、国民党本部の「偶然の産物」発言に対して、以下のようにツイートした。

去る11月20日はフランコ関連のミサが10あった。そして、スペイン国内には教会が約2万3000ある。だから、フランコのミサに偶然、足を踏み入れる確率は0.05%だ(El pasado sábado 20N hubo 10 misas por Franco y hay alrededor de 23.000 iglesias. La probabilidad de caer en una por azar es del 0,05%)。

まぁ、この低確率を見ないまでも、「偶然居合わせた」説はかなりきつい。

また、同じく、与党であるスペイン社会労働党(PSOE)の報道官は、ミサへの参列が「偶然だったのか、それとも政治的マーケティング戦略の一環だったのか(si ha sido casualidad, oportunidad, si es estrategia política de márketing)」を明らかにすべき(aclarar)と述べた。

もし、今回の参列が、国民党に極右層を呼び込むための戦略の一環だとしたら・・・・。そして、後にSNSで拡散されることも織り込み済みで、信者との写真撮影に応じていたとしたら・・・。これはこれで、ゾッとする。

写真はSNSに拡散されたカサド(右)とフランコ信者の青年。信者は、フランコのことを「最高司令官(Generalísimo)」と呼ぶ。写真のキャプションには「我が最高司令官殿のミサにパブロ・カサド氏と」とある。