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3/20 ニュースなスペイン語 Un giro histórico(1):歴史的転換(1)

A君はとってもかっこいい自転車に乗っていました。ある日、「もう自転車、要らない」と言って、自転車を手放しました。すると、その自転車が前から欲しくてたまらなかったB君とC君が、自転車を巡りケンカになりました。A君はそのケンカをずっと黙って、見ていました。ところが、ある日、突然、「その自転車はB君のものだよ」と言ったのです。C君はとても驚いて、A君に「だったら、前に貸していた本、返してもらうかね!」と言いましたとさ…。

まぁ、子供同士のケンカにありがちなシチュエーションだ。時が経てば忘れてしまうくらいの、些細なことだ。

しかし、これが国家間の問題となると、ややこしいし、深刻だし、今後の火種にもなる。

A君がスペイン、B君がモロッコ、C君がアルジェリア。

そして、「自転車」が西サハラ、「本」が在マドリードのアルジェリア大使。

タイトルの「歴史的転換」とは、ケンカをずっと黙って見ていたA君(スペイン)が、ある日、「その自転車(西サハラ)はB君(モロッコ)のものだよ」と突然言ったこと、を指す。

つまり、スペインは西サハラ問題について、長年保ってきた「中立(neutro)」な立場を急に変えた(cambio repentino)のである。

ロシアのウクライナ侵攻の陰に隠れて、大きな転換が、シレッと実現した。

とても、1回の記事では扱いきれない問題なので、今後、何回かに分けて、紹介していこう。

まずは、「A君と自転車」の関係について。

西サハラはサハラ砂漠(desierto de Sáhara)の西側にある地域だ。漁業(pesca)とリン(fosfato)が豊かな土地で、1884年から、スペインの植民地(colonia)となった。当時は「スペイン領サハラ(Sáhara español)」と呼ばれていた。

1965年の国連(ONU)からの非植民地化(descolonización)の要求に応じ、1976年に、スペインは西側サハラを手放した。

その後、モロッコ(Marruecos)は西サハラを自国の領土(propio)と主張、これを併合(anexionó)した。その一方、西サハラでは、アルジェリア(Argelia)から支援を受けている「ポリサリオ共同戦線(Frente Polisario)」という集団が独立を求めている(reclamar independencia)。

当然、西サハラを巡り、モロッコとポリサリオ共同戦線(アルジェリア)は対立する。武力紛争も少なからずあった。

では、なぜ、スペインは突然、傍観の構えを崩し、モロッコに肩入れをしたのか。次回のテーマだ。

写真は西サハラの一部。緑はモロッコによって支配されている地域、クリームはポリサリオ共同戦線(アルジェリア)によって支配されている地域。

出典
〈本文〉
https://www.rtve.es/noticias/20220318/dice-resolucion-onu-sobre-sahara-proceso-descolonizacion-pendiente-desde-hace-decadas/2317004.shtml
〈写真〉
https://www.esglobal.org/sahara-occidental-cambiar-algo-para-no-cambiar-nada/