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6/6 ニュースなスペイン語 Un riñón por una cama UCI:腎臓とICU病床を引き換えに

スペインの話ではない。

ペルーで先ごろ、話題になり、スペイン語圏を中心に話題になっていることだ。

「みなさん、僕は今、母のICU病床にために、腎臓を提供しようと思います(Queridos amigos, estoy ofreciendo mi riñón a cambio de una cama UCI para mi madre. )」とSNSのメッセージは始まる。

メッセージの送り手はカルロス・チチョン(Carlos Chicchón)。30歳の男性だ。

「僕には腎臓がふたつあるけど、母はひとりしかいない( tengo dos riñones pero una sola madre)」

チチョンはもちろん、臓器の売買は犯罪(delito)だということくらいは知っている。しかし、闇のマーケット(mercado negro)での臓器の需要は高い。

ICU病床への待機リスト(lista de espera)に登録するのに、3万ユーロ(約399万円)かかる。首都のリマ(Lima)のチョコレート工場(fábrica de chocolate)での月230ユーロ(約3万円)の稼ぎだけではまったく足りない。そして、運良くICUに入れたとしても、1日8000ユーロ(106万円)が重くのしかかる。

チチョンの母親はICUに入れたものの、その後、他の病院に転院して、結局、亡くなった。

今回の一件で、「死者ガイドライン(protocolo de la muerte)」の存在も示唆された。決して「銘文化されていない基準(normas no escritas)」ではないが、医療従事者は皆知っているものらしい。

ある専門家は言う。

災害時に我々医者が生涯使ってきた基準だ。全員の命を等しく救うことはできない。患者が20名、ICU病床がひとつ。ならば、医療の質に見合う年齢の評価をしなければならない(Son protocolos que toda la vida los médicos hemos utilizado en situaciones de desastre, porque no puedes salvarle la vida a todo el mundo. Tienes veinte pacientes y una cama UCI y se hace una evaluación de los años de vida ajustados a la calidad)

ペルーは先ごろ、死者数を大幅修正した。18万5000人の死者を認め、国民ひとりあたりの死者数が世界で最も多い国となってしまった(el país del mundo con más fallecidos per cápita por COVID)。ペルーでは、コロナ第1波で、ICU病床はすでに崩壊(colapsadas)していて、第2波でも改善しなかった。

スペイン国営放送の記事は次のように締めくくる:

来る第3波では、弱者たちは顔の前で十字を切ることしかできないだろう(Los más vulnerables cruzan los dedos de cara a una posible tercera ola.)

写真は取材を受けるカルロス・チチョン。