9/14 ニュースなスペイン語 Víctimas de violencia sexual:性被害者
昨日と全く同じタイトルだが、ぜんぜん異なる文脈のお話。
マドリード州知事イサベル・ディアス・アジュソ(Isabel Díaz Ayuso)は「性被害男性のための総合ケア専門センター(Centro de Atención Integral Especializado para Hombres Víctimas de Violencia Sexual)」を来年、開設する(abrirá)と発表した。
同州はこの施設のための準備金として、年間70万ユーロ(約1億900万円)を計上する予定(invertirá)。
性被害者というと、「女性」であることが暗黙の了解となっていた感があるが、マドリード州が今回打ち出したのが、性被害に苦しむ「男性」のためのケアセンターの設置構想。
アジュソは「幼い時に被害を受けた人もいるし、多くの男性たちが性被害に苦しんでいる。そのことで後遺症にもさいなまれている。また、薬物を使った性交渉に苦しむ人もいる(muchos varones han sufrido este tipo de violencia, algunos durante la infancia, motivo por el que arrastran secuelas, y otros en el entorno del conocido como chemsex)」と現状に言及した。
マドリード州は2009年に「性被害女性のための総合ケア専門センター(Centro de Atención Integral Especializado para Mujeres Víctimas de Violencia Sexual)」を設立している他、性被害の相談に365日24時間対応する危機センター(Centro de Crisis 24 horas)も他の自治州に先駆けて開始するなどして、この分野でのパイオニア的(pionera)地位を築いている。
そんなマドリード州の動きに対する平等省(Ministerio de Igualdad)の大臣、アナ・レドンド(Ana Redondo)の反応がやや意外。
曰く、
男性向けのケアセンターの設立宣言はバランスを欠き、軽薄で、悪らつである(es una declaración desproporcionada, frívola y perversa)。
とし、その理由を
女性たちの暴力や性被害に対する戦いと、男性たちの他のタイプの被害に対する戦いとを混同してはならない(no se puede mezclar la lucha de las mujeres víctimas de violencia de género y de violencia sexual con la lucha de otros tipos de violencia que los hombres también sufren)
とする。
ただ、今回のマドリード州の構想では、男性が受けたのは「他のタイプの被害」ではなく、「性被害」であることは明らか。
平等省は性被害に苦しむ女性たちには手厚い支援を尽くしているが、性別が異なるだけで、こうも反応が違うものかなぁ。
レドンドはスペイン社会労働党(PSOE)、アジュソは政敵国民党(PP)の所属。
与党の面子もあるから、何もエールを送れとは言わないけど、マドリード州政のパイオニア的な試みを「悪らつ」と一刀両断するのはいかがなものか。
日頃、ドンパチが尽きないマドリード州と中央政権だが、今回くらいは、これまでないがしろにされてきた被害者に、よくぞイニシアチブを取って、救済の手を差し伸べた、敵ながら、あっぱれ、あっぱれ、くらいの態度で臨めなかったのか…。
写真はアジュソ。
出典
https://www.rtve.es/noticias/20240912/madrid-abrira-centro-atencion-hombres-victimas-violencia-sexual/16246092.shtml