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11/6 ニュースなスペイン語 Pegarse:くっつく

この記事を紹介しようかどうかは迷ったのだが……。

国家警察(Policía Nacional)は、昨日、プラド美術館が所蔵するフランシスコ・デ・ゴヤ(Francisco de Goya)作「着衣のマハ(Maja vestida)」と「裸のマハ(Maja desnuda)」に「くっついた」として、ふたりの活動家の若者(activistas)を逮捕したと発表した。

2枚の絵画には、最初の点検(una primera inspección)をした限り、被害はない(no han sufrido daños)が、裸のマハの額縁(marcos)にキズがついたという。

ふたりの活動家は、最近各国の美術館で多発している絵画へのテロ行為の時と同様、政府に対して環境問題への対策を講じるよう求め、2枚の絵画の間の壁に「+1.5℃」と黒いスプレーで書いた。

これは、「地球全体に不安定な気候と深刻な影響を及ぼしかねない世界的な気温の上昇に警鐘を鳴らすため(alertar sobre la subida de temperatura mundial que provocará un clima inestable y graves consecuencias en todo el planeta)」のメッセージだという。

ちなみに、1.5℃は産業革命以前の水準(nivel presindustrial)から上昇した平均気温で、2015年パリ協定(Acuerdo de Paris)で引き下げ目標として採択された数値。

ところが、先日、国連(ONU)は、この数字を下回ることはできない(imposibilidad de mantenernos debajo)と発表した。

そんなことから、活動家のひとりは、「気候変動に恐怖を抱いている(Tengo pánico al cambio climático)」と語った。

被害を受けた額縁も、実は、年代ものという。1900年代の初頭に作られたもので、極めて高い歴史的価値(un significativo valor histórico)を有すと学芸員は述べる。

世界で頻発している絵画テロを受けて、プラド美術館は警戒レベルを最大限に引き上げた(habían extremado la precaución)ばかり。

その一方で、マドリード市の文化担当は、警備員が不足していて、最近、いくつかの美術館で規模を縮小していることの懸念を書簡で文化省(Ministerio de Cultura)に伝えていた。 

さて、小生が冒頭のように迷ったのは、プラド美術館の館長が、各国で多発している同様の事件が起こっていることを受け、こうした蛮行(acto vandálico)を報道しないように求めていた(no dar pábulo(直訳は「エサを与える」))ためだ。

報道することが宣伝になり(dar publicidad)、それこそが彼らの求めていること(justo lo que buscan)だから、というのが館長の見方。

この小欄を「報道」などと言うつもりは毛頭ないが、スペインの情報を発信している身としては、彼らとその蛮行に少なからぬ注目の機会を与えてしまうことは、まったく、本望ではない。でも、コトの重大さから紹介した。ジレンマ……。

なお、館長は活動家たちの「崇高な動機(nobles causas)」を達成するためには、もっと賢い(inteligentes) 方法がある、とも語っていた。

館長のセリフを深読みすると、もし「崇高な動機」と素直に言いたいなら、「causas nobles」という語順(名詞+形容詞)になるはず。

だが、館長の弁では、形容詞+名詞という語順になっている。

これは「ご立派な」という、冷めた視点が入っている可能性が高い。

写真は逮捕されてふたりの活動家の若者の2枚のマハ(一部)。若い人たちが地球のことを考えるのは大いに賛成。でも、やり方を考えないと……。

変な流行が日本にやってこなければ良いのだか。

出典
https://www.rtve.es/noticias/20221105/dos-activistas-se-pegan-marcos-cuadros-majas-goya/2408054.shtml