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1/17 ニュースなスペイン語 Latido fetal:胎児の心音

中絶(aborto)を考えている夫婦に胎児の心音を聞かせる――。こんな酷なお節介を柱とする「反中絶ガイドライン(protocolo antiaborto)」がカスティージャ・イ・レオン州で成立しそうだ。

中絶容認派と反対派の対立の中で、後者の、胎児の命を優先する立場を「プロライフ(provida)」と言うことから、この指針は「プロライフ措置(medida provida)」とも呼ばれる。

このガイドラインには、タイトルにも挙げたように

① 胎児の心音を親に聞かせる

他に、

②その姿を映し出す4Dエコー(ecografía 4D)の画像を提供する

ことや、ここまでした上で

③ 心理カウンセリング(atención psicosocial)を薦める

という、何とも、悪趣味な3つのサービスが揃い踏み。

その一方で、中絶措置を行う医師の拒否権を守る(proteger la objeción de conciencia de los profesionales sanitarios)というのだから、プロライフ措置の名にたがわない。

現在、カスティージャ・イ・レオン州を牛耳っているのは国民党(PP)とボックス党(Vox)の保守派だ。当然、この反中絶ガイドラインを推し進めたのもこの2つの政党だ。

プロライフ措置はあくまでも「ガイドライン」という位置づけだから、義務ではない。

しかし、医師たちは「上記3つのオプションがあることを女性に告げなければならない(deberá decirle a la mujer que tiene esas tres posibilidades)」とした上で、「これらを利用するか否かは女性の自由選択(su uso o no será una decisión voluntaria de la mujer)」とする。

記事には妊娠何週間目に心音を聞かせり、エコー映像を提供するのかなどの詳細が書いてあるが、今回は割愛する。

なお、このガイドラインの目的は「女性たちが最良の環境で妊娠と向き合い、寄り添ってもらえていると感じられる様にする(tengan todo el apoyo para afrontar el embarazo en las mejores circunstancias y se sientan acompañadas)」ことらしいが、本当に妊婦に優しい措置かどうかは疑問。

そして、女性に傷(una huella)と壮絶な体験(un drama)を残す、社会的な悲劇(tragedia social)たる中絶と、女性自身の、心から妊娠を継続したいという意志(natural y propia" de seguir con el embarazo)の間の選択をしてもらうことを主眼とするらしい。

小生はプロライフでも、その逆の立場であり、女性の中絶の選択を尊重する「プロチョイス(pro-elección)」でもない(なお、中絶容認派と反対派の対立については、昨年6月27日の記事を参照)。

ただひとつ、夫婦で決めたことに他人が口を出し、無責任なお節介や正義を振りかざすのが、何とも鬱陶しい。

案の定、このガイドラインに対しては、各方面からいろいろな反応(批判)が噴出している。

稿を改めて紹介しよう。

写真はカスティージャ・イ・レオン州の副知事(vicepresidente)のフアン・ガルシア・ガジャルド(Juan García-Gallardo)。ボックス党所属で、反中絶ガイドラインを推進する中心人物のひとり。

出典
https://www.rtve.es/noticias/20230112/castilla-leon-medidas-prevenir-abortos-escucha-latido-ecografias/2415362.shtml