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8/11 ニュースなスペイン語 Gesto del Rey(2):国王の振る舞い(2)

昨日の続報。

コロンビアの新大統領グスタボ・ペトロ(Gustavo Petro(写真右))の就任式に参列しているフェリペ6世(Felipe VI(写真左))のある振る舞いをめぐり、スペイン国内の政党が二分している。昨日の記事では否定的な意見を紹介したので、今回は、肯定的な意見を見ておこう。

フェリペ6世は、就任式の際、「シモン・ボリバルの剣(espada de Bolívar)」が歩兵隊によって持ち込まれるセレモニーの際に、起立も拍手もせずに、着席したままだった。

こうした国王の立ち振る舞に対して、ポデモス党(Podemos)などは「他国の民主主義に対する敬意がない」とか「謝罪すべき」という批判を展開しているのだが、文化大臣(Ministro de Cultura)のミケル・イセタ(Miquel Iceta)は、スペインが謝罪することは「馬鹿げている(disparatado)」と、ポデモス党を中心に噴き出ている批判を一蹴した。

イセタはカタルーニャ社会党(PSC)だ。つまり、スペイン社会労働党(PSOE)の同朋なので、こうした国王擁護は当然である。

イセタによると、ボリバルの剣のセレモニーは「突然の出来事(sobrevenida)」だったようだ。通常、こうした外交事案(estas cosas protocolias)は事前に通告(avisar antes)があるが、今回はそうした通知はなかったという。

今回は突然のことだったので致し方がないーー。イセタやスペイン社会労働党のスタンスは、フェリペ6世が着席したままであったことを、政治的な意図とは結び付けないというものだ。

一方、極右政党のボックス党(Vox)が国王を支持する理由は、もっと歴史的な性格を帯びる。

ボックス党議員のフアン・ルイス・スティグマン(Juan Luis Steegman)は、ボリバルの剣は「未だに、スペイン人たちの血で染まっているだろう(Estaría todavía manchada de sangre de españoles)」と述べた。

また、同じくボックス党員の外務省報道官ビクトル・ゴンサレス(Víctor González)は、ボリバルについて、「反逆軍(=独立軍)に合流したがらなかったスペイン人、先住民、混血の人々を大量に殺害する(el genocidio de aquellos españoles, indígenas, mestizos o criollos o los que fueran que no quisieran unirse a los insurgentes)」ことを可能にした法令を制定した人物とした。

スティグマンとゴンサレスは、スペインからの独立戦争の際、解放者(Libertador)であるボリバルが率いる軍によって命を取られたスペイン人たちに想いを寄せた格好だ。つまり、フェリペ6世が起立しなかったことを、歴史的に擁護し、過去の解放軍の蛮行に対する抗議と捉えている(もちろん、国王が起立しなかった本当の理由がまだ分からない中で、だ)。

また、市民党(Ciudadanos)も国王支持のスタンスを取る:

スペインの国賊のいろいろな反応を見るのはもう十分だ。国王フェリペ6世が、今回もまた、スペインを守るための適切な行動をとったということが分かる(Basta con ver la reacción de los enemigos de España para saber que Felipe VI vuelve a acertar en su defensa de España)。

立つべきか、立たざるべきかーー。

しかし・・・、とも思う。

もし、今回、フェリペ6世がセレモニーの時、起立していたら、同じように文句を言う人がいたはずだ。

国王稼業も楽ではない。

写真はフェリペ6世(左)とグスタボ・ペトロ新大統領(右)。ところで、本文でも言及したイセタは今回のような論争を「polémica veraniega」と表現した。直訳すれば、「夏向けの議論」ということ。夏のバカンスに誰もが政治姿勢に対して、何かひとこと言いたくなる(algunos marquen una especie de posición política)ーー。こんなニュアンスか。

ちなみに、太字部分を「oposición política(野党)」としている新聞もある。

イセタのインタビューの引用だが、以下のURLに含まれる音声データの13:31あたりが問題の箇所。うーん、小生の耳には「政治姿勢」、つまり、posición políticaに聞こえる。

出典
https://www.rtve.es/noticias/20220809/iceta-disparatado-pedir-disculpas-gesto-rey-espada-bolivar/2395200.shtml