10/22 ニュースなスペイン語 Salir antes de prisión:刑期前に出所
「Salir de prisión(刑務所から出てくる)」に「antes(前に)」がくっついた表現なので、表題のように訳しておいた。
さて、どういうことか?
20日にマドリードで大規模なデモ(manifestación)が行われ、「サンチェスは首相を退陣せよ(Pedro Sánchez, dimisión)」などのシュプレヒコール(grito)がカスティージャ広場(Plaza de Castilla)を埋め尽くした。
参加者は、政府機関(Delegación de Gobierno)発表で2万5000人、主催者発表で40万人なので、まぁ、間を取っても20万人を超えているので、デモとしてはかなりの規模。
デモは国民党(PP)とボックス(Vox)といった右派野党によって召集されたもので、主な原動力のひとつは小欄でも最近取り上げている「コルド案件(caso Koldo)」を巡る、首相周辺にうごめく汚職(corrupción que rodea)の解明。
そして、もうひとつが今回取り上げる、受刑者らが刑期を終える前に出所が可能となってしまう法案が、先日、上院(Senado)での審議を経ずに、下院(Diputado)だけで可決したことによる怒りである。
ここで言う受刑者とは、主に「バスク祖国と自由(ETA)」の元メンバーで現在服役中の人々を指している。
ETAは1960年から1980年代にかけて、スペインを震撼させた、バスク州の分離独立を目指すテロ集団で、現在は解散しているものの、当時のテロ行為で服役している受刑者がまだいる。
法案によると、どうやら、スペインの国外で受けた有罪判決の刑期を国内の刑期に合算する(acumular las condenas cumplidas fuera de España)ことが可能になるらしい。
スペインでの刑期が、例えば、10年だとして、他国で何か犯罪を犯し、有罪判決が出て、その刑期が、例えば、5年だったとすると、これを全うしていれば、その期間を差し引いて、スペインでの刑期を5年にしてやる、ということか。
具体的には、ETAのメンバーらが、かつてフランスで受けた有罪判決の刑期をカウントすること(contabilizar las condenas cumplidas previamente en Francia)で、スペインでの刑期が短くなるケースが問題となっているようだ。
この法案はすでに官報(BOE)に出ていて、国王フェリペ6世(Felipe VI)の承認(sancionar)も得ているので、何事もなければ20日以内に発効するのだが、上院での審議をすっ飛ばされた国民党としては、当然、納得いかないところで、早くも、同法が違憲であると憲法裁判所(Constitucional)に「法的解決権の確認(conflicto de competencias)」を申し立てる準備を進めている。
いろいろ注視しなければならないことが出てきた……。
写真はデモ参加者のプラカード(pancarta)。
「サンチェス、あなたはスペインを破壊している」
と書いてある。
出典
デモ関連
https://www.rtve.es/noticias/20241020/miles-personas-piden-madrid-convocatoria-elecciones-con-respaldo-pp-vox/16295503.shtml
法案関連https://www.rtve.es/noticias/20241019/boe-publica-ley-permite-a-terroristas-acumular-condenas-cumplidas-fuera-espana/16294776.shtml