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【メディア部コラム01-1】団地を変える、アツい男

みなさん、こんにちは!
NPO法人 自治経営 メディア部リーダーの永井です。
ケーススタディブックvol.03 出版委員会 編集班 を中心としたメンバーで、事業のケーススタディやインタビュー記事、イベントレポートやちょっとしたコラムなど、今後様々な記事を発信していきます!

自治経営イチ暑苦しい男?

第一弾となる今回は、私が現地取材に行ってまいりました。
お話を伺ったのは、神奈川県住宅供給公社に勤める一ツ谷正範さん。
公民連携プロフェッショナルスクール(現・都市経営プロフェッショナルスクール)を第一期で修了し、NPO法人自治経営関東甲信越アライアンス代表も務めています。
本当に心の芯から指の先まで熱々の男で、公民連携界の松岡修造と呼ばれているとかいないとか。

画像1写真 1 一ツ谷正範さん ユソーレ相武台にて(写真撮影/新井友和)

事業を手掛ける2つの団地をこの目で見ながら伺う一ツ谷さんの言葉は、一つひとつが強く心に響くものでした。
2日間にわたり取材をしたものを計3回、皆さんにもその熱を余すことなくお届けいたします。アツい団地とアツい男のお話です。ぜひお楽しみください!
(取材・文:永井大輔 写真撮影:新井友和)

団地は古い?

今回訪問させていただいたのは、一ツ谷さんが団地再生プロジェクトを推進する2つの団地。相武台団地と若葉台団地でした。

相武台団地は1964年着工(約33ha)。公社賃貸住宅11棟448戸、分譲住宅82棟2080戸、計2528戸。
若葉台団地は1973年着工(約90ha)。現在は公社賃貸住宅7棟790戸、分譲住宅66棟5186戸ほか、計約6,302戸。

画像7写真 2 相武台団地(写真提供/神奈川県住宅供給公社)

画像7写真 3 若葉台団地(写真提供/神奈川県住宅供給公社)

ヒャー!北海道生まれ、茨城在住の筆者にとっては目ん玉飛び出るくらい巨大な団地・・・。
し、信じられない・・・。
相武台団地に至っては、もうすぐ還暦なんですね!長い間、お疲れ様です!!

ところで皆さん、“団地”と聞いてどのようなイメージをお持ちですか?きっと世代によって変わるのでしょうが・・・。
団地建設が始まった当初は、近代的なモノとして憧れのライフスタイルの象徴だったそうですね。しかし今やそれから半世紀以上。間取りのトレンドは変わり、エレベーターやキッチン・浴室などの設備関連も世界が全く変わっていますね。
そうなってくると、古臭いとか、薄暗い、不便、ダサい、イメージ良くない、などなど、検索サイトで「団地 イメージ」と入れると、もうそれ悪口じゃん、みたいな内容も出てきます(涙)

でも、団地ってすごい!
一ツ谷さんの携わる2つの団地に行ってみてわかりました。
団地は古い?いえいえ、建物は年寄りかもしれないけど、旧くないんです!
“団地”からこれからの時代のライフスタイルを描いていくこともできるんです!
そんな未来志向の「団地(まち)づくり」を、一ツ谷さんのチャレンジからご紹介していきます。

問われる“公社”の在り方

一ツ谷さんご自身の入社は1992年、バブル真っ盛りで都市部では人口増加が著しく、公社もガンガン建てていく時期だったと言います。入社後初期に携わった高齢者向けの商品開発の経験が、これからの超高齢化社会の課題解決に向かう今の取組に活きているそうです。
しかし、バブルは入社後すぐに弾け、それに端を発した業績悪化と、2000年ごろから始まった職員数の削減や資産売却、事業縮小、凍結などにより身動きが取れなくなった一ツ谷さん。
そんな状況の中、「勤労者向けに良質で低廉な住宅を供給する」という公社の所期の役割がほぼ達成された状況にあるとして、神奈川県は2006年「公社民営化の基本方針」を通知、2010年には「平成27年4月の株式会社化」民営化方針を発表するなど、公社の完全民営化への議論がすすんでいました。
公社の在り方や存在意義が問われ、不要論も唱えられるその中で、それでも、チャレンジする姿勢は忘れなかったと言います。
「新たな事業に取り組めないという状況の中で、どんどん提案しては却下されるという苦しい時期を過ごしました。でも、私にはまだ公社がやるべきこと、公社だからこそできることがあると思っていました。できないと言われても、何もせずにはいられなかったんです。」

画像4写真 4 当時を振り返りながら力強く語る一ツ谷さん(写真撮影/新井友和)

変わる潮目と踏み出した一歩

可能性を信じる一ツ谷さんや職員の皆さんが一丸となり、公社は、2006年度当時約1500億円あった借入金残高を2012年度には約1200億円まで削減し、2007年以降は毎年20億円以上の単年度経常利益を確保し続けるなど、経営改善努力による成果を上げていきます。
一方、超少子高齢社会、人口減少、産業の衰退、建物の老朽化など、誰もが経験したことのない縮退社会の中、「増加する高齢者へのサービス対応」、「コミュニティ衰退」、「空き家・空き店舗」など、大きな課題が公社には存在し、その解決方法を模索する必要性が生じます。

2010年、一ツ谷さんは公社内に組成された部署横断の高齢者新規事業プロジェクトのリーダー(後に新規プロジェクト推進課長)として、公社資産を生かして、前述の課題解決の手法を探る検討を進め、度重なる県との協議を経て、2011年、相武台団地内の汚水処理場跡地に「高齢者・子育て支援の複合施設」の建設計画を策定します。
その計画は、「県住生活基本計画・県高齢者居住安定確保計画(神奈川県第1号事業)や国のモデル事業にも位置付けられるとともに、県に頼らない新たな資金調達を行う先駆的な取り組みになりました。」と一ツ谷さん。
こうした公社の実績や、一ツ谷さん達の熱意が、その風向きを変えていくこととなります。

2013年10月には、神奈川県が「公社民営化の基本方針」を廃止するに至り、時を同じくして、公社の公的役割(存在意義)に位置付けられた「団地再生事業」第一号となる、サービス付き高齢者向け住宅を核とした複合施設「コンチェラート相武台」が竣工することとなります。

画像7写真 5 コンチェラート相武台(写真提供/神奈川県住宅供給公社)

一ツ谷さんは当時をこう振り返ります「本当に苦しい時期でしたが、諦めなくて良かった。この時期の経験がその後の取組にも活きていますし、あの頃に比べれば最近の困りごとなんて小さなものと思えます(笑)」

動き出した団地再生事業

相武台団地では「コンチェラート相武台」を皮切りに、
団地内商店街を活用する「グリーンラウンジ・プロジェクト」、
健康まちづくりをテーマにした多世代交流拠点「ユソーレ相武台」、大学との連携によるコミュニティ活性化など立て続けに事業を展開、少しずつ成果が見え始めています。

画像6写真 6 ユソーレ相武台 内観(写真撮影/新井友和)

また、時を同じくして動き出した若葉台団地では、
「未来づくり協議会」や「みらいづくりプラン推進会議」の組成、
住民協働のマスタープラン「横浜若葉台みらいづくりプラン」策定、
コミュニティオフィス&ダイニングなどを活用した団地活性化、
地域包括子育てを実現する様々な取組、
「みらいづくりプラン」による都市計画変更、
そしていよいよリリースされた当該プロジェクトに係る事業者公募。(2020年12月14日リリース)
など、取組は多岐にわたり、大きな動きも出てきています。

画像8写真 7 横浜若葉台みらいづくりプラン(写真提供/神奈川県住宅供給公社)

これらを振り返り、一ツ谷さんはこう言います。
「一つ一つの取組は小さな“点”に過ぎませんが、その点を繋げることで、それらが線になり面となり、広がりを持ってきます。それらを重ねて厚みを持たせてみたり、横に展開して更なる広がりを見せたりと、住民・商店会・行政・大学などと協働した取り組みは、まだまだ途中なんです。相武台や若葉台だけじゃなく、日本の団地はこれからまだまだ面白くなりますよ!」

その目はとても優しく、力強い熱意に溢れていました。

次回以降は、相武台団地、若葉台団地、2つの団地でのプロジェクトの詳細と、そこでの「プロセス」に深く迫ります。一ツ谷さんの武勇伝に(?)乞うご期待!

(つづく)

続編(予定)

01-2_相武台団地「団地でつながる、風景が変わる(仮)」
01-3_若葉段団地「フラットテーブルから始まる“団地(まち)づくり” (仮)」

※次回は2021年1月ごろの配信を予定。お楽しみに!

プロフィール

一ツ谷 正範(ひとつや まさのり)

NPO法人 自治経営 関東甲信越アライアンス代表 神奈川チーム代表
神奈川県住宅供給公社 高齢者事業部 担当部長
一般財団法人シニアライフ振興財団 理事
公民連携プロフェッショナルスクール1期終了

1969年神奈川県生まれ 東京工芸大学工学部建築学科卒業 平成4年神奈川県住宅供給公社入社  建築技術職として入社後、平成10年に一級建築士を取得。新規プロジェクト推進課長、団地再生課長を経て現職。 介護付き有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅、在宅支援施設など、高齢者事業全般に従事。 また、超高齢化が進む団地の再生に向けては、「住民連携によるまちづくり」、「大学連携による団地活性サポーター制度導入」、「商店会・地域包括支援センターなどと連携した健康まちづくり」などを推進し、築50年前後の住宅団地課題解決モデル構築に向けて、日々チャレンジし続けている。

【参考URL】
神奈川県住宅供給公社 https://www.kanagawa-jk.or.jp/
団地未来~団地再生の取り組み~ http://www.danchimirai.com/



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ヒトづくりと地域事業から日本の「自治」を変える組織、NPO法人自治経営です。 https://www.jichikeiei.com 全国にいるアライアンスメンバーによる地域事業の活動紹介やその考え方をコラム形式で掲載しています!