見出し画像

でこぼこを受けとめる。ADHDと診断された佐々木翼さんが伝えたい、3つのこと。


みなさんこんにちは。ジブン研究編集部です。

周りの人が当たり前にできているようなことが、自分にはできないと感じて、落ち込むことはありませんか?

自分の努力が足りないんじゃないか、もっと頑張ればできるんじゃないか。ついそう思ってしまうけれど、ふと立ち止まってみれば全てが自分だけのせいではなく、特性によるものであるかもしれません。


日常生活の中で感じる違和感や疑問についてオープンに語り合える場を、当事者との対談形式で実施するオンラインイベント「Original Life Talk」。今回はADHDである佐々木翼(ささき つばさ)さんに、お話を伺います。


ADHD(注意欠如・多動障害)とは、発達障害を構成する特性のひとつで、「不注意」、「多動性」と「衝動性」が特徴と言われます。
イベントに先立ち、ADHDという特性を活かし、心地よく生きるために模索を重ねている日々の話をお聞きしました。


第8回「発達障害ーでこぼこを受けとめるー」どうぞ、お付き合いください。



はじめに

初めまして。佐々木翼(ささきつばさ)です。みんなからつっつ、と呼ばれています。
僕は、大学生の頃に発達障害のADHD(注意欠如・多動障害)と診断されました。
今日は、発達障害について、同じように悩んでいる人に向けて色々お話しできたらと思います。


Q.つっつ、よろしくお願いします!早速ですが質問をしていきたいと思います。最初に自分の特性に気づいたのはいつからですか?

思い返せば、小さい頃から自分のこだわりがあったように思います。例えば小学校に遅刻しないことよりも、朝ごはんの方が大事だったし、観たいテレビ番組があれば、それを観てから登校したいし。「なんで自分の大切にしたいことがあるのに、言われた通りやらなきゃいけないの?」とずっと疑問に思っていました。
中学校に入ったころ、なんとなく周りと溶け込めない感じがしてきました。僕は楽しいと感じていても、周りのみんなはなんだか違うことを感じているときがある、ということに気付きました。

画像1


最初の違和感

中学に上がった頃から、なんだか周りとずれているなって感覚がありました。みんなの輪に入りづらいような、歓迎されていない感覚。
そんな気持ちが強まったきっかけは、友達の一言です。
僕は、授業の中で興味のあることが紹介されると「それ知ってる!」と一番に反応したり、好奇心から沢山質問をするような生徒でした。僕にとって学校は新しいことを知ることができる楽しい場だったんです。
しかしある時友人から、「翼って授業中結構うるさいよね」と言われてしまいます。「僕は、いらないことを言ってしまっているのか。これは良くないことだったのか。」と奔放に喋りすぎていると気付いて、そこから人との会話に対して、ブレーキをかけて話すようになりました。
「こういう時は、何て言えばいいんだろう?」と考えるようになったけど、考えた末に出した一言が相手をすごく傷つけたり、ズレた発言をして周りが困ってしまうことに気づくようになり……コミュニケーションって難しい、と感じるようになりました。
それからは、「いらないこと、変なことは極力言わないようにしよう。」と決めて、中高の僕はクラスの中で口数がどんどん減っていきました。
好きな友達といるときだけは、思うまま話していましたが、それ以外はでしゃばると嫌な顔をされるし、空気が微妙になるから口数を減らしていきました。


心地良い大学生活

Q.ふむふむ。周りに言われて自分の特性に気づいたのが大きかったんですね。そこからはどんな変化がありましたか?

中高時代はずっと周りとの関わりを難しく感じていました。しかしそれから進学した大学での生活は今までになく新しい環境でした。
自分が思ったことを自由に言っても受け止めてくれる。上手く伝えられなかった時にも、「どんな意味で言ってるの?」と対等に話してくれる。
そういう仲間に出会ったことで、自分の居場所を得られた感覚がしました。
ただ、時間や期限を守ることは苦手で、1・2限は行けなかったし、提出物も期限を守って出すのが難しかった。
でも今度は、自分の苦手を理解してくれる人が周りに多かったので、例えば僕が授業に出られなかった日は行ける友達がプリントをもらってくれたり、連絡しあって助け合うような関係ができていました。
たくさん助けられたし、自分も出来るところで友達を助けようと思うようになった。
発達障害じゃなくても「でこぼこ」がある人が多くて、みんなでうまくやっていこうって空気ができたから、とてもありがたい環境でした。

画像4


社会人になって

Q.自分の特性を理解してくれる人が周囲にいるのは安心できる要素ですよね。社会人になってからはまた環境が変わったと思いますが、今の人間関係はどんな感じですか?

そうですね、大学を卒業して、今は、エンジニアのお仕事をしています。
働き始めて最初の現場では、仕事のスピード感に戸惑いました。
大学時代のような、各々が好き勝手に制作をやる感じではなく、みんなでじっくりと進めていく空気感だったので、ルールからはみ出さないように、みんなのペースに合わせていくというのが難しかったです。あと、居眠りがとにかく大変。書類作成が多かったんだけどどうしても苦手で、集中してやっているはずが、いつのまにか居眠りしちゃう。
気づいた先輩からはいつも「大丈夫?」と声をかけられていて、申し訳ない気持ちになることが多かった。こんな状況が3か月くらい続いて、見かねた先輩が「病院行ってみたら?」と言ってくれました。
先輩の言葉もあって病院に行ったら、先生はあっけらかんと「ああ、ADHDの方って居眠りをしちゃうことあるんですよね。もし大変なら、お薬出しますね」と言ってくれて、それから、コンサータという薬を飲むようになりました。
薬の力を借りるようになってからは本当に楽になったし、先輩やほかのプロジェクトの人たちともうまく関われるようになりました。


ADHDと診断されて

Q.気づいて病院に行くことを促してくれた人の存在も、病院の先生も素敵な人だったんですね。ADHDと診断されたのはいつ頃で、その時はどう感じていましたか?

薬を飲み始めたのは社会人になってからでしたが、ADHDという診断自体は、大学生の頃に受けていました。はじめに診断を受けたきっかけは、大学1年生のとき付き合っていた子から「翼ってADHDっぽいよね」と言われたこと。その時初めてADHDという言葉を知りました。
診断を受けて結果が出るまではすごく不安で、障害ならばうまくできなかったことも理由が付くけれど、そうでないなら、自分がだめな人だと分かってしまうように思っていました。「発達障害であるかどうか」が、僕のすべてを決めてしまうような感覚があったのかなと思います。
本当は「障害かどうか」の間にはたくさんの要素があるので、どっちか、とは言えないものなんですけどね。


でこぼこを受けとめる

Q.自分のすべてを決めてしまうような感覚を感じたんですね。自分の特性を診断されてからは、苦手なことやできないことがある自分を受け止められるようになりましたか?

ここ1年くらいでやっと受けとめることができるようになってきました。
去年までは、いろいろなことに対して、「ADHDだから僕は出来ないんだな」と思ってました。でも今は、対策を講じられるようになって、自分の取り扱い方がわかってきました。遅刻や忘れ物をしてしまう自分を責めるのではなく、かといってADHDだからできないと諦めるだけでもなく、「うまくできないのは仕方ないよね、じゃあどうしよう」とバランスが取れるようになってきました。
バランスが取れるようになるまでは「他の人よりも頑張らなくちゃ」と思っていたけど、何をどう努力すればいいかはわかっていなくて、ただただ疲れていました。頑張ろうと思う一方、無理をせずに、自分のままで生きたいと思うような矛盾した気持ちもあって。
そんな時に、今のシステムエンジニアの仕事をする中で、わかったことがありました。
システムって、人がミスをする前提で作られていることが多いんです。例えば、間違ってAmazonで買い物をしてしまっても大丈夫なように、取り消すためのボタンがあります。ミスをする前提でシステムを作ったほうが、使いやすくなるんです。
この学びから、自分もミスをする前提で考えた方が楽だなということに気づきました。ミスをしないように頑張らなきゃって考え方だと疲れちゃうんですね。

画像4


伝えたい3つのこと

Q.「システムもミスを前提で考えて作られているという事実からつっつが気づいた姿勢がとても素敵なエピソードだなと感じました。最後に、つっつがこの記事を読んでくれている人に伝えたいことはありますか?

①僕の経験が全てではないこと
僕はADHDと診断されましたが、今回お話した僕の悩みや困りごとが全ての人に当てはまるわけではないです。周りに、もしかして?と思うような人が居たら、まずはその人がどんな特性で、どんな人なんだろう?と考えてみてほしい。それを考えるときに、僕がお伝えしたことを一例に、その違いや共通点を考えてもらえると嬉しいです。
②精神的な問題ではないこと
発達障害とか精神障害とかも、突き詰めれば脳みその化学反応。僕はコンサータという、脳の神経系に作用して、ドーパミンやノルアドレナリンなどの伝達物質の働きを活性化するお薬を飲んでいます。脳がうまく働くように薬の力を借りているんです。
発達障害は、自分がしっかりしていないから困ってしまうとか、精神的に弱いからダメなんだとか、そういうことではない「障害」です。化学物質の受け渡しの問題でしかない、と僕は考えています。
③対策を一緒に考えませんか
この記事を通して興味を持ってくれたみなさんが、自分なりの対策をとっていくために、僕や周りの人を巻き込んで一緒に対策を考えられたらいいなと思っています。僕の話でよければたくさん話しますし、相談も大歓迎です。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

最後まで読んでくださり、本当にありがとうございます。

ADHDの方、もしかして私・僕もADHDや発達障害かもと思われる方、ADHD・発達障害について考えてみたい方など、ぜひイベントにご参加ください!
当日は、佐々木さんへの質問タイムや参加者同士の対話の時間もご用意しております。

イベント参加は、以下のイベントページ内の応募フォームよりお願いいたします!みなさまにお会いできることを楽しみにしております。

画像4

https://fb.me/e/NgHOCe2P(イベントページ)

話し手:佐々木翼

https://note.com/wing_meraru/m/mbca4636aa2f6(note)

聴き手・編集:原田優香

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?