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「感情的になってはいけない」のか?(生きづらさに効く哲学#1)

私たちは大人になる過程で
「感情的になってはいけない」
と教わります。

人前ですぐ泣くことは
弱いことだと

怒りにわれを忘れるのは
恥ずかしいことだと

そう教わります。


そうした考えがあるから、
悲しいこと、怒りを感じることが
起こった時、

「感情的になってはいけない」
と自分を押さえつけて
なんとか冷静を保つようにする。

それでも感情を抑えられない時があって
「自分はダメな人間なんだ」と思い
生きづらさを感じる。


この記事は、そうした生きづらさに
エポケー」という哲学の概念を使って
対応してみよう、というものです。


■感情的になっては「いけない」?

ここで、少し頭の中の言葉に
意識を向けてみましょう。

「感情的になってはいけない」
「泣いてはいけない」
「怒ってはいけない」

「いけない」という言葉が
すぐに浮かんできて
私たちの行動を抑制しようとします。

「いけない」というのは「よくない」こと
つまり、「良し悪し」の問題だということ。

私たちの頭にできた規範やルールが
瞬時に「これはいけないことだ」と
判断をしているのです。


でも、どうでしょう。
「笑う」ことは感情的ではありませんか?
「喜ぶ」ことは感情的ではありませんか?

本当に
感情的になっては「いけない」
のでしょうか?


■スキーマと自動思考

実は、この「いけない」のように
自動で行われる判断が
生きづらさにつながっている場合があります。


そのために
「スキーマ」と「自動思考」
という概念を紹介します。

スキーマとは、
外界を理解するための枠組みのこと。
その人の中に形成された価値観や信念です。

そして、自動思考とは
そのスキーマに基づき
自動で頭に浮かぶイメージのこと。


先ほどの例で言えば、
「大人は感情的になってはいけない」
というのは1つのスキーマです。

このスキーマがあると、
街中で怒り散らしている人を見たとき
「恥ずかしいな」とか「情けない」
という自動思考が生まれます。

まだこのスキーマができていない
小さい子どもは
同じ人を見て

「どうして怒っているの?」
「どうして恥ずかしいの?」
「怒っちゃだめなの?」

と疑問を浮かべて
あれこれ考えます。
それにはとてもエネルギーを使います。

私たちの脳は
できるだけ楽に情報を処理したいので、
自分の経験からこうしたスキーマをつくって
なるべく自動思考で処理をするのです。

これは、
私たちの脳が進化した結果でもあるのですが、
時に、この仕組みが
私たちの心を蝕むことがあります。


それは、
このスキーマとそれにより生まれる自動思考が
悲観的な方向へ偏ってしまう場合です。

例えば、自分自身に対して
「私は誰からも好かれない」
というスキーマがあると

褒められるというできごとに対しても
「そんなわけがない」と否定したり
「何か裏があるのでは」と疑うなどの
自動思考が生まれ、そう捉えてしまいます。

こうした偏りのことを
「認知の歪み」ともいいます。

この偏りは生きづらさのもとになり、
不安症や抑うつなどにつながりやすいと
されています。


では、この偏りは
どうしたら気づくことができるのでしょうか。

そのためには、
自動で起こる思考で判断せずに、
一度立ち止まって考えてみることです。


■速い思考と遅い思考

ノーベル経済学賞をとった
ダニエル・カーネマンは
著書の『ファスト&スロー』で

私たちの思考、判断の様式を

「速い思考(システム1)」
「遅い思考(システム2)」

とに分けています。


速い思考には、以下の特徴があります。

・直観的
・無意識的
・自動的
・バイアスがある反応

それに対して、
遅い思考には、以下の特徴があります。

・内省的
・意識的
・制御的
・規範的反応

こうして見ると
「速い思考」は先ほどの「自動思考」に
あたりそうです。

一方で「遅い思考」は、
自動思考を生み出すスキーマについて
改めて考えるような思考です。

先ほどからの例だと、
「感情的になることは恥ずかしい」
などは速い思考。

それに対して、
「感情的になることはいけない」のか?
と意識的に考えるのは遅い思考です。

「速い思考」の特徴の1つは
バイアス(偏り)があるということ。
先ほどの認知の歪みと共通しています。

ということは、

こうした歪みから生きづらさを感じるとき
私たちは「速い思考」から「遅い思考」へ
思考を切り替えていく必要
がありそうです。


■生きづらさに効く「エポケー」

そこで、キーになるのが
哲学の「エポケー」という概念です。

ギリシャ語で
停止する」という意味を持つこの言葉は

判断停止」「判断留保
などと訳されます。

つまり、
何かについて判断を下すことを
一旦保留する態度
のことです。

エポケーという言葉は、
立場によって意味が少しずつ異なるのですが、 
今回はそこまでは立ち入りません。

「判断を停止する・保留する」なんて言ったら

「決められないなんて優柔不断じゃないか!」
「ビジネスで保留なんかしていられるか!」

そんな言葉が聞こえてきそうです。

確かに、変化の速い現代において
「即断即決」は一つの美徳とされます。

しかし、それは
「よく考えもしない、拙速な判断」
になる危険性も持ち合わせています。

自動思考や速い思考の
デメリットですね。


では、エポケー(判断留保)が
どのように生きづらさに効くのか。

それは、エポケーによって
「速い思考」を一旦保留にして、
「遅い思考」で考えることができるようになる

という点です。


速い思考、自動思考は、
反射的で自動的です。

もちろんそれは
脳の負担を少なくするという
重要な意味があります。

しかし、「なんだかうまくいかない」
「生きづらさを感じる」という場合には
遅い思考で「考え方を考える」必要があります。

つまり、
自分のスキーマ(価値観、信念、思いこみ)を
考え直してみる
、ということです。

そのためには、
絶えず自動で動いている「速い思考」を
一旦保留にして、「遅い思考」で考えること。

これがまさに
エポケー(判断停止・判断留保)です。


このエポケーを感覚的にわかりやすく
示してくれるのが

かっこ()に入れることです。


例えば職場で上司に
「こんなミスをするなんて、何やってんだ!」
と注意を受けたとします。

こうしたとき、
私たちの頭はフル回転します。

「その通りだ、自分はなんてダメな人間なんだ」
「そんなこと言ってもしょうがないじゃないか」
「内容は正しいけどそんな言い方しなくても」
「この上司は私のことが嫌いなんじゃないか」

これらはすべて「速い思考」です。

普段であれば、
これが正しい認識だと思って
そのまま考え続けたり、行動したりしますが、
これをエポケー、かっこに入れてみましょう

自分はなんてダメな人間なんだ)?

自動思考では、
「上司に怒られる自分はダメな人間」
と判断しています。

これを ()に入れて、俯瞰で見てみると
「怒られる人はダメな人間」という
スキーマが見えてきます。

このスキーマは妥当でしょうか?
偏っているでしょうか?

それはあなたの「遅い思考」に
考えてもらうとして、

少なくとも、
()に入れて俯瞰で見る
つまり、エポケーすることができると

その時点で、
偏った認識、そこから生まれる感情などから
一歩離れることができています。

こうして、自動思考を鵜呑みにしない、
そこから生まれる感情に呑まれない、
それだけで生きづらさがだいぶ軽くなります。

もちろん、そうした方向に
心を持っていくのは少し練習が必要です。

瞑想、マインドフルネスの手法なども
助けになるでしょう。

こうした感覚をつかんで
自分のお決まりの悪いパターンから
抜け出せるようになること

エポケーは、その力になるはずです。


おわりに

最後までお読みいただきありがとうございます!


私は、「人生迷子を1人でも減らす」ために
日々活動をしております。


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提供している具体的なプログラムが
こちらとなります!

よろしければ、
自己紹介も兼ねたこちらの記事も
ご覧ください。

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