第10話 この物語が、ジストニアから回復する手助けとなれたら
今後の生き方を考えるために、過去の整理をしてみた。
そこで、ジストニアになってからの症状は、幼い頃からのそれが強まっただけだと気づいた……。
これが前回までのお話です。
そして、今回で最終話となります。
第10話 この物語が、ジストニアから回復する手助けとなれたら
私は、2011年から、都内にある脳神経内科にも通っています。
特に治療をするわけではありません。
ただ半年に一回、症状の経過を話しているだけ。
でもそのたびに先生は、私の変化を喜んでくれています。
「ジストニアは治ることが難しいと言われています。
けれど永松さんは、時間をかけながら、少しずつ回復されていますね。
ご自身で、何が理由でここまで良くなれたと思いますか?」
ある日、先生がこう尋ねました。
改めて訊かれると、理由はなんだろう。
*
2014年から今の治療院に通ったことは、間違いなく大きい。
けれど、治療とは別に、私個人がしたことで何が一番効果的だっただろうか。
思い返してみると、結局もっとも変化を感じたのは、過去の症状記録や日記を振り返ったことだと思います。
もちろん、書くことで少しずつ気づきが増えて、何をしたら体は安心するのか、何をしたら体は喜ぶのか、考えるようになりました。
それにより瞼への執着がなくなり、顎や首の治療、今の治療院にも出会えたのだと思います。
だから書くことは、とてもおすすめ。
*
けれど、よりたくさんの変化をもたらしてくれたのが、振り返る時間でした。
過去の自分を他人ととらえて、新たな視点で冷静に言動を振り返ることができました。
それにより、自分への誤解が減り、行動が変わり、自分から否定されない安心感が生まれたのだと思います。
人にも伝えられることが増えて、見守られている安心感を少しずつ感じられています。
孤独とは、理解者が少ないほど感じるものなのかもしれません。
自分からも他人からも理解されない不安が、人を孤独にさせるのだと思います。
一人かどうか、愛されているかどうかよりも。
*
「ご自身で、何が理由でここまで良くなれたと思いますか?」
今、先生に質問されたら、私の答えはこうだろうか。
「自分自身とジストニアを客観的に理解して、安心できたことだと思います」と。
この物語も、そのような役割を担えたらと思っています。
今、ジストニアで困っている人たち、そしてそのご家族が、他人である私の文章を通して気づきを増やしていけるように。
ジストニアを理解していけるように。
それにより、自分への誤解、患者さんへの誤解、そして病気への誤解が少しでも解けてくれたら嬉しいです。
理解することは、安心感につながる。
回復するエネルギーにつながると、私は信じています。