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第5話 たまたま出会った健康グッズが、私を動かした

手術によって、全身性ジストニアになった。
なのに、私はそれ以降も同じことを繰り返した。
なぜそれほど手術にこだわったのか。
理由は、根本的に治りたかったから……。

これが前回までのお話です。




第5話 たまたま出会った健康グッズが、私を動かした



手術を繰り返す5年の日々に変化が訪れたのは、2012年。
叔父が、自分のはめているブレスレットについて話題にしたことがきっかけでした。

それはゴム製でできた、健康グッズ。
手首の右か左、どちらかにはめると体のバランスがとれて疲れにくくなるというもの。
アスリートも愛用する人がいるのだとか。

「ひさこちゃんも、これをはめたら歩けるようになったりして!」

叔父は笑って言いました。

当時の私は、自力で歩くことが難しくなっていました。
喉がつまって、声も出ない。
呼吸も苦しい。

笑う表情を作るのも辛い状態だったけれど、何とか笑みを浮かべて、反応を示しました。

「つけてみるか?」

面倒だと思ったけれど、断るのも面倒。
試しにはめさせてもらいました。
すると、あれ、何だか少し楽になる。
もちろん、歩けたりはしないけれど、何だか楽。

これはいったい、どういうことなのだろう。
この健康グッズ、すごいかもしれない。

さっそく自分用に購入して、ここから半年ほどはその効果に魅せられていました。
しかし、ふと、あるとき疑問に思ったのです。
本当にこのブレスレットが良いのだろうか、と。

そこで、代わりに腕時計やアクセサリーを手首にはめてみました。
すると、もっと楽になる。
呼吸がしやすくなり、声だって少し出せるようになるのです。

もしや、この健康グッズが良いわけではなかったのかもしれない。
手首にかかる小物の重みが、良い働きをしてくれているのかもしれない。

さらに実験を進めるうち、新たな気づきが生まれました。
それは、小物をしばらく付けつづけてから外すと、脳がバランスを失って迷っているような感覚があるということ。

もしかして私の身体の問題は、バランスを失っていることなのだろうか。
小物をつけると良いのは、足りないバランスが補えるからだろうか。
だから症状を出す必要がなくなるのだろうか。
全身のバランスを整えれば、私は回復していけるのだろうか……。

新たな希望が生まれてきた。

こうして少しずつ少しずつ、瞼で身体のバランスを整える意識から全身で身体のバランスを整える意識へと変わっていったのでした。

気持ちに変化が生まれ始めた、まさに同じ頃。
両親が朝のワイドショーで、ある情報を手に入れてくれました。
2013年4月のことです。

それは、顎の歪みをとると、全身のバランスが整って、心身のあらゆる症状まで軽減できるという内容でした。

やはり、身体というのはバランスが大事なのではないか。
試す価値があるかもしれない。
私は、治療を受けることにしました。

(つづく)


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