にせもんのクロムハーツの十字架に焼かれて、灰になった私
「私、焼き鳥が食べたい。」
「わかった、じゃあトリキでええやん。トリキ行こ。」
数年前のある日、数年ぶりに再開したメンズとデートする事になった。
ひょんな事から再び連絡を取り出し、
「久しぶりにデートしようや。」と誘われたので、デートする事になったのだ。
彼とは昔、何度か遊んだものの、良き友人、飲み友達止まりだった。
顔がイケメンで、とても優しく、悪戯っぽく笑う笑顔が印象的だ。
当時、少し気になっていた時期もあったので、内心久しぶりの再開、デートに胸を躍らせていた。
(服何を着ていこう?もっとかっこよくなっていたらどうしよう。)
インマイハート、ドキがムネムネである。
ついに来たデート当日。
久しぶりに「少し飲みに行こうか」と言う話になり、「焼き鳥が食べたい」ということだけを伝えていた。
待ち合わせ場所に、心ともどもスキップをし、
たどり着くと、
「久しぶりやな。」と彼は笑った。
再開した彼は、当時のギャル男風(死語)のまま、よく言えばHYDE、悪くいえば青ヒゲ海賊団の隊長、青ヒゲだけが濃くなり、髪型に金のメッシュが細かくギラギラ輝く。ツンツンと尖った毛先、そして、エムジバンク(M)の前髪も顕在している。
前髪のM寸マーク、いやマクドナルドが当時の流行り、ギャル男の記憶を彷彿とさせた。
私「ひ、ひさしぶり〜」
内心(おおおお、、う。ちょいとまだギャル男が、抜けとりませんね。)と思っていた。
「じゃあ行こうか。」と言われるがままに歩き出す。ダメージとブリーチが『クラァッシュ!!』とガンガンに効いたピチピチのパンツ、歩く度に、腰についた、ぶっといチェーンがガシャガシャと揺れる。
その上に催しているのが、筆記体の英語がスタイリッシュに銀文字で書かれた、黒のガラガラのTシャツ(小さめ)だ。そのどれを取っても当時の流行り、ギャル男臭が拭えない。
「消臭りきぃぃぃぃぃ〜〜〜!!」
心の中のTMレボリューション・西川貴教が叫ぶ。(※貴教は【たかのり】と読むんですね)
かきけせぇ!!このギャル男臭を!!
かきけせぇぇ〜!!!!
「消臭りきぃぃぃぃぃ〜〜〜!!」
そうこうしているうちに
「どこに行こうか?」と言われたので、
(あっ…場所決まってないんスネ…(察っし)
「ワタシヤキトリタベタイナ」とカタコトになりながら再び伝えると、
「じゃあトリキでいっか。トリキ行こ。」と言われ、トリキに行く事になった。
いやぁ、待て、と。
ちょっと、貴教、集合。
心の中でTMレボリューション西川貴教を再び呼び出す。
久しぶりの(いや、むしろ数年たってるし初めてと言えよう。)デートで場所を決めておらず、
「じゃあトリキでええか。」でトリキ。
鳥貴族って皆さんご存知ですか?
全国にあるチェーン店ALL 280円〜(tax)
トリキはええねん。トリキに罪はない。
ただ話したい。ただ皆で集まってわいわい、安い酒で飲んで話したい。
そんな時に集合する場所、その名はトリキ。
大学の飲みサーメンバーで、リア充共々わちゃわちゃ飲み散らかして、女の子酔わして持って帰る。その前に集まるのがトリキ。
その名も皆大好き鳥貴族。
スキップしていたはずの心が凍えだす。
心が凍えてきた、
やばい。寒い。夏なのに。
韻を踏まずにラップ調で唱える。
ちょっと貴教、あの曲いっちゃってくれる??
貴教「おっしゃ!任しときぃ!!!
♪凍えそうな〜!!再開に君は〜〜!トリキでええか!って云うの〜〜〜?」
【TMレボリューション : White Breathより】
貴教が叫ぶように歌う。
季節は夏だが、心が冬を迎えだした。
テンションも氷点下に落ちかけた時、
トリキに到着した。
(これはこれでトリキ久しぶりやしな。楽しもう!なぁ!貴教!)
そう心で西川貴教に呟き、
メニューをみてビールを注文した。
久しぶりの「乾杯!!」よっしゃ!宴だ。
その時だった、
目の前のTシャツではにかむ、エースと目が合った。
ワンピースのポートガス・D・エースのTシャツを着ていらっしゃる。ご丁寧に筆記体でデカデカと描かれた銀文字の英語が、ええ感じにそのTシャツのダサさを増していらっしゃる。
銀文字の英文や、キンキラの赤線の絵が、我が我こそがと主張し、柄がガラガラすぎて気づかなかった。
Tシャツに描かれていたのは
はにかみ王子、こと、ポートガス・D・エースと、その名言らしきものが筆記体で書かれたTシャツだった。
ギャル男×エース×青ヒゲの破壊力に
マイダサいセンサーのリーチがかかる。
貴教「旗をかかげろぉぉ〜!!リーーチだぁ!!出港だぁ!出港の準備をしろ!野郎どもぉぉ!!!」
キャラT、そしてポートガス・D・エースになんの罪もない。むしろエースは大好きなキャラだ。
そしてその、銀文字でデカデカと書かれた筆記体の名言にも罪はない。
ワンピースは全てが名言。
名言を生み出す海。
舵を取るのは、我らの尾田栄一郎氏だ。
(ONE PIECE 著者)
だがしかし、デートでギャル男とエースがヒュージョンしてもええ。とは言っていない。
「美味しいフルーツ全部混ぜたら、なんと!めっちゃまずいミックスジュースになりました!残念ですね!」みたいな感じだ。銀や赤キラキラの曲線文字の主張が主張を呼び、でかい筆記体の銀文字が真ん中に効きすぎてる。
エースは優しく、そして私に、はにかんでいる。
ねぇエースがいるよ?
聞こえてる?貴教。ねぇ?
貴教と会話しつつ、チラチラとエースと目が合う。そんなに私を見つめないで…エース。
「君の瞳に乾杯!」エースがそう言っている様だった。
なるべく愛を語ってくるエースから目を逸らし、お酒は進む。
久しぶりの会話に楽しさを感じつつも、再会した彼は、どこか覇気がない。(エース着とんのに何故覇気がない)
顔色もパッとしない。仕事でえらい、疲弊していらっしゃるな。と思いながら、青ヒゲを肴にグビグビと酒を飲んでいた。
(トリキのチャンジャ、結構美味しいな。)などと考えていると、
時折、なにかが、眩しい事に気づく。
なにかが時折り、私の顔面を、テラテラと照らしている。
グハァァァァァッ(吐血)
彼の首から何か大きな物がぶら下がっている。
「な、なんじゃあれはぁぁぁぁああ!」貴教が叫ぶ。
偽物のクロムハーツ、にせもんのクロムハーツ、クロムハーツ風とも言えよう、ドデカい十字架のネックレスがエースの頭部に突き刺さっている。その、チープな銀メッキはテラテラと輝き、トリキの光を打ち返す。
にせもんのクロムハーツの十字架に、トリキの電球の光が跳ね返り、私と酒にテラテラと相の手を入れているのだ。
グハァァァァァッ(吐血)
カードは揃った。
「ウーーーーッ!ビンゴォォオ!!お前ら!出港だぁぁぁあああ!!!」
貴教が叫ぶ。
彼が話すごとに、酒を飲むたびに揺れる、にせもんのクロムハーツ。
その度に、テラテラと私の顔と酒を照らす、偽物のクロムハーツのドデカい十字架から解き放される、光。トリキの電球の光。
グハァァァァァッ(吐血)
身体が、皮膚が焼けるように熱い。
あまりのダメージに数回目の吐血をした私をみて、エースが悲痛に叫ぶ。
「貴教!いったれ!
西川家伝統の!最終奥義!!ホワイトブレェェス!!」
トリキ内にエースの叫び声が響く。
貴教「くらえぇぇ!!!ホワイトブレェェェス!!!
♪凍えそうな〜デート中に君は〜
偽物のクロムハーツでテラテラ顔を照らっっすのぉ〜〜〜?」
グハァァァァァッ!!(吐血)
その時だった。
私は一瞬で、灰になった。
貴教のホワイトブレスを、にせもんのクロムハーツが打ち返したのだ。
光とホワイトブレスが私の胸を貫く。
グハァァァァァ(灰化)
「我が最終奥義…敗れたり…。」心の中の貴教はそう呟き、息を引き取った。
灰&me「たったかのりぃぃ〜〜〜〜〜!!(貴教)
いやぁぁぁぁぁぁぁああああ!!!」
私が泣き叫ぶ声に、ウェイウェイ大学生が集まるトリキの騒音は冷たかった。
灰になった私は、風に乗って、サッササラサラと帰路につく事にした。
空を見上げると、一瞬、はにかんだエースが見えた気がした。
さようならエース…。さようなら青ヒゲ…。
そしてありがとう…心の中の貴教…。
夜の街に、白いため息(ホワイトブレス)が漏れる。
浪速のヴァンパイアが一人、灰になり、大阪の街へと消えた。
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