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教員の働き方改革と一体にした授業改善をめざすカリキュラムマネジメントについて(6)

「実践の成果と課題・構想してきたことの問題提起」

こんにちは!
毎週日曜日更新、連続7回の第6回目となりました
毎週、ご高覧いただきましてありがとうございます。また、この間、多くの方にフォローしていただきました。とても励みになります!

前回までに、全校を挙げて箕高で取組んだ、ディプロマポリシーの共有と実践、「箕高授業スタイル」、観点別学習状況の評価とパフォーマンス課題について述べてきました

一連の取組みが、生徒の成長や先生方の授業改善にどれほど影響を与え、内実を得ているのか、そのすべてを明らかにしたり、数値化したりすることは難しいと思いますが、学校教育自己診断・生徒授業アンケート結果の経年変化を追い、一定の考察をすることはできるのではないでしょうか
 
以下、生徒版と教員版の学校教育自己診断結果の推移です

生徒版と教員版の学校教育自己診断結果の推移

続いて、授業アンケートの結果推移です
各項目の最高値は4、学校教育自己診断結果(数値)は箕高ホームページで毎年公表していますが、授業アンケート結果は公表していませんので、令和元年度平均値と令和4年度平均値の増減で表記します。
 
○先生の声や話し方は聞き取りやすく、授業の流れや内容が分かりやすい +0.21
○先生は生徒の状況をきちんと把握して、授業改善に生かしている +0.23
○授業に、興味・関心をもつことができたと感じている +0.23
○授業を受けて、知識や技能が身についたと感じている +0.27
 
以上の結果より、生徒は授業内容の理解や授業への参加を肯定的に捉えることができるようになっており、先生方の意図やねらい(めあて)が生徒に伝わっている授業が増していると分析できます
 
また、先生方は以前よりも教員同士の連携や交流が増していることを肯定的に捉えたり、信頼関係が強固なものになっていると感じていることが見て取れそうです
 
学習指導室が行ってきた活動と照らし合わせて考えていくと、教育理念や教科で重点的に取組みたいディプロマポリシーについて協議する機会が増えたことで、教員同士の交流や信頼関係が増していき、ディプロマポリシーをはぐくむためのよりよい授業を追及する教員の姿勢を具現化していこうと、先生方が実情にあった企画を実施したりしていくことが、総合的に生徒の心に響いていったのではないでしょうか

授業改善で先生方は着実に授業力をつけてきていますが、まだカリキュラムマネジメント面では道半ばです

ディプロマポリシーに基づき、教科教育活動・教科外教育活動の両輪で生徒たちの人間的成長・発達に働きかける、自身の教科・科目で学年の発達段階に応じて卒業時に身に付けて欲しいCompetencies(資質・能力)のどの部分を育てていくのか、そこを学校全体で共有することにより、各単元、それを構成する一時間一時間の授業で単元終了後、授業後に育成をめざしたい生徒の姿をイメージしながら授業創りを研究・開発・実践に取組んだのが、授業の「めあて」・生徒の活動場面(グループワーク等の協調学習など)・「振返り」を取入れた「箕高授業スタイル」の実践です

教科・科目において1年間で身に付けるべき資質・能力を踏まえ、先生方が一番本質的な学びだと考える単元(若しくは、一番教えていて楽しい・充実感溢れる単元)を選び、そこにパフォーマンス課題を設定して、「思考・判断・表現」と「主体的に学習に取り組む態度」を一体的に評価することで新学習指導要領・観点別学習状況の評価の理念に基づく適正な学習評価・授業改善を実践していきます

これを先生方の働き方改革と一体にしたカリキュラムマネジメントにすべく問題提起します

例えば、「知識・技能」評価の7割は、教科書の副読本、授業プリントから「単元テスト」として出題します。単元の学習内容を展開講座数で任意に分け、授業内で小テストを実施するようにGoogle Classroomを活用し実施します。採点はExcelを利用すれば、作問・採点は不要となり採点ミスなどもなくなります

「思考・判断・表現」評価の2割は、「単元テスト」を活用します。「単元テスト」には、「知識・技能」問題・「思考・判断・表現」問題を明記する必要があります

さらに、「思考・判断・表現」評価の6割と「主体的に学習に取り組む態度」評価の7割、「知識・技能」評価の3割を「パフォーマンス課題」で一体的に評価します。「パフォーマンス課題」の設定は年に1回若しくは2回で良いと考えています。ディプロマポリシーを踏まえて、先生方が教科・科目の一番本質的な学びだと考える単元、若しくは、一番教えていて楽しい・充実感が溢れる単元を選べば生徒の学びは深まりを見せ、先生方の負担感は軽減されるのではないでしょうか

現場での研究・開発・実践・リフレクションを積み重ねること、研究者の先生方の専門性に学び、指導・助言をいただくことで、適正な学習評価として、生徒・保護者に対する説明責任を果たせるように努める必要があります

また、「パフォーマンス課題」はグループで取組むべきだと考えています。それは、2015年にOECDが実施した「協同問題解決能力調査」における、15歳の「グループの中で、他人と協力をして問題を解決する」力が加盟32カ国で日本はトップであり、同時に実施したアンケートで「人の話をよく聞く」「ほかの人が興味を持っていることに気を配る」などの質問に肯定的な答えをした生徒の得点が高い傾向にあったことを根拠としています

発表後には、個人論文・レポート・提案書・ジャーナルを書かせます。これで「思考・判断・表現」評価と「主体的に学習に取り組む態度」評価の残りの部分を一体的に評価します

但し、「パフォーマンス課題」の集中による生徒たちの負担を和らげるための調整が必要になります

このように考えれば、「単元テスト」で定期考査は不要となり、長時間を要する作問作業・採点作業も不要です。「平常点」=「主体的に学習に取り組む態度」と思い込むことで生じてしまう、情意も含めた授業の取組み態度の評価やノート・プリント点検等の業務も、「パフォーマンス課題」で「思考・判断・表現」と「主体的に学習に取り組む態度」を一体的に評価することで不要となります

教員の働き方改革と一体にした授業改善をめざすカリキュラムマネジメントは、新学習指導要領の完成年度という10年に一度の一大教育政策を契機にせねば実現は困難であると校長職の6年間ずっと考えてきました

教員の長時間勤務解消の本質的な解とは言いえませんが、定期考査やいわゆる平常点業務に費やす時間は膨大なものとなっているのが現状です。採点ミスのないようにという緊張感も存在します
勤務時間内に生徒と向き合う時間を保障し、定時退勤を促すには、生徒と向き合う以外の時間を大胆に削減するしかないという考えに到りました
教材研究は授業改善・適正な学習評価のために不可欠ですので、定期考査、昔ながらの平常点作業、これらしか削減対象として思い当たりません
意味のない会議も、その意義を問いただせねばなりませんね

箕高を定年退職する直前の教員研修では、令和5年度はChallenge・試行の1年として「パフォーマンス課題」策定と適正な学習評価・授業改善に取組んで欲しい、そのなかで、
・生徒たちの真の学びとなっている
・適正な学習評価となっている
・先生方の働き方改革になっている、
の3点のいずれかが達成されていなければ、方向性をまた一から出直して考えてみましょう、と伝えました

新学習指導要領・観点別学習状況の評価の理念に基づく適正な学習評価・授業改善の取組み、先生方の働き方改革は一体にして語られ、思考され、校長としてのカリキュラムマネジメントとして実践されていくべきです

先生方が生徒・保護者、或いは大学等に、学習評価のエビデンス・アカウンタビリティを迷わず自信をもって示すことができるように、校長がそれらを指し示してあげて安心して学習評価できるようにマネジメントすることが求められていると考えます

そのために、「ディプロマポリシーの共有と実践を進めていくこと」が非常に大切となります
次回、本連載最終回となる(7)では、そのあたりの私が考えるエビデンスを示し、全体のまとめをしていきたいと思います

何かのきっかけで、現場の生徒たちや先生方が幸せになっていくような議論が拡がればと願います

引き続き、どうぞよろしくお願いいたします

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