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教員の働き方改革と一体にした授業改善をめざすカリキュラムマネジメントについて(4)

「観点別学習状況の評価とパフォーマンス課題について」

おはようございます!
毎週日曜日更新、第4回目となりました
毎週、ご高覧いただきましてありがとうございます。とても励みになります

私が提起している仮説「カリキュラムマネジメントで、ディプロマポリシーの共有と実践を進めていくことは、観点別学習状況の評価の理念に相応した「授業改善・適正な学習評価」、さらには「教員の働き方改革」に繋がる」について、さらに論を深めていきます

観点別学習状況の評価においては、「主体的に学習に取り組む態度」の評価に対する説明責任を気にするあまり、先生方が情意も含めた平常点的な要素の詳細な記録をエビデンスやアカウンタビリティとすることがないように、校長から先生方に説得力のある解を提示する必要があります
先生方が生徒・保護者、或いは大学等に、学習評価のエビデンス・アカウンタビリティを悩まず自信をもって示すことができるように、校長がそれらを指し示してあげて安心して学習評価できるようにマネジメントすることが求められています
もちろん、教育庁(教育委員会)の全面的なバックアップを得られれば校長も力強いです

私は、「主体的に学習に取り組む態度」の評価、観点別学習状況の評価の理念に相応した「授業改善・適正な学習評価」、さらには「教員の働き方改革」に総合的にアプローチする最適解のひとつが「パフォーマンス課題」(参照:パフォーマンス評価(用語解説) | E.FORUM | 教育研究開発フォーラム (kyoto-u.ac.jp))にあると考えています

箕高での具体的な取組・実践を紹介します

箕高においても、「主体的に学習に取り組む態度」はどのように評価すればよいのかなど、多くの不安や悩みの声が、各教科より首席・学習指導室に寄せられました

令和3年12月20 日(月)に開催された 大阪府立学校長協会「府立学校教育シンポジウム」記念講演 京都大学 西岡 加名恵 教授による『「資質・能力」を育てるパフォーマンス評価 ―教科における観点別評価をどう進めるか― 』の動画・当日配布資料の各校での共有を、西岡先生が快諾してくださり、同年12月年末、翌1月年始に箕高で数回に分けて視聴・勉強会を実施しました

さらに、学習指導室が中心となり、関西学院大学 時任 隼平 准教授(現 教授)の指導・助言を得ながら、令和4年1月〜3月の約3ヶ月をかけ、全ての教科を対象に、観点別学習状況の評価やパフォーマンス課題、パフォーマンス評価に関するワークショップを実施し、学習評価の基本的な考え⽅や、各教科等における評価規準の策定及び評価の実施(評価基準の明確化)等について研究・協議に取組み、その成果と課題を全体で共有しました。引き続き、Google Classroomを活用し、主体的に学習に取り組む態度を効果的に評価するGoogle Formを全教員で共有するなど、学習評価に関する情報を共有しながら、学習評価を含むカリキュラムマネジメントを円滑に進めています

私は、先生方の教科・科目において1年間で身に付けるべき資質・能力を踏まえ、先生方が一番本質的な学びだと考える単元(若しくは、一番教えていて楽しい・充実感溢れる単元)を選び、そこにパフォーマンス課題を設定して、「思考・判断・表現」と「主体的に学習に取り組む態度」を一体的に評価するよう伝えています
もちろん、「教科・科目において1年間で身に付けるべき資質・能力」は、学校全体で共有したディプロマポリシーに基づいて教科内で共有されていなければなりません

令和3年度より、国語科・地歴公民科・数学科の先生方有志が、公開授業でパフォーマンス課題の取組みを共有してくれています。
同年12月・翌年3月には関西学院大学 時任 隼平 准教授(現 教授)による全体研修を実施しました。
さらに、令和4年8月には京都大学 田中 容子 特任教授による「パフォーマンス評価の実施と方法」をテーマに再び全体研修を行いました。
令和5年3月には再び時任准教授(現 教授)を講師に招いて、各教科が今年度取り組んだ「パフォーマンス課題」と、「3観点評価」を中心にワールドカフェ方式で全体共有する研修を行いました

箕高で取組んだパフォーマンス課題のなかから、英語科 森田 琢也 首席(現 大阪教育大学附属高等学校池田校舎 教諭)による、令和4年度 グローバル科2年生 専門教科 英語 学校設定科目「創造英語」における「絵本プロジェクト」の実践を紹介します

「絵本プロジェクト」では、芥川小学校との連携授業に取組み、セカンドストーリーを創作するというパフォーマンス課題を設定しました
グローバル科2年生の生徒たちは、犬や猫など動物と人間の関係性に関するトピックSelective Breedingを学校設定科目「骨太英語」で学び、「英語表現」では、そのトピックで使われている仮定法などの文法事項を勉強しています。「創造英語」では、「骨太英語」や「英語表現」で生徒が勉強している内容とリンクさせ、動物と人間の関係性の考察というテーマを掲げ、犬と人間のつながりはどのように始まったのかなど、動物と人間に関する歴史を英語で聞き、メモを取り、要約するなど、さらに生徒の学びが深まるよう、教科内でも協力連携をしています

芥川小学校の児童は、Puff “The Magic Dragon”を教材に、英語の勉強を進めていました。空想の生き物ドラゴンと少年ジャッキーとの物語を通じて、人間と動物との関係性を考察することができるこの絵本を通じて、箕高生は、この絵本のセカンドストーリーを英語で創作します。創作活動の前には、絵本の内容を英語で考え、芥川小学校の児童とZOOMでつなぎ、互いに英語で対話しながら、児童が読んでみたい絵本を、箕高生が英語で聞き取りをしました。芥川小学校4人1グループ、箕高2人1グループでの、わずか数分の対話ではありましたが、画面にうつる小学生と高校生はみんな笑顔で、英語を通じて、コミュニケーションを楽しんでいました。語学教育の本質を感じることのできる一場面でした

このつながりで大切にしていることは、学習の目的・状況・場面設定に加え、教科や人との関係性、自己肯定感、自律性です。骨太英語、英語表現、創造英語など科目を横断して学習内容を統一していること、校種を超えた連携、解がひとつではない、既習事項を統合して新たな価値観をペアと協働しながら創出する論理的・多角的・創造的思考の育成、自分は小学生のために何かできることがあるかもしれないという自己有用感の向上が、キーポイントとなっており、目標と評価を一体化させた取組みでもあります

受験のための勉強も重要ですが、それのみではなく、カリキュラムマネジメントを通じて、箕高のディプロマポリシーを念頭に置き、どのような生徒を育みたいのか、その授業で何ができるようになるのかという資質・能力の視点を含め、授業計画を組み立てることが肝要です。箕高の生徒と教職員によるチャレンジは、続いています

パフォーマンス課題により、「思考・判断・表現」と「主体的に学習に取り組む態度」を一体的に評価することで、「主体的に学習に取り組む態度」の評価を、先生方が情意も含めた平常点的な要素の詳細な記録をエビデンスとして用意する必要はなくなるはずです。ここから、新学習指導要領・観点別学習状況の評価の理念に基づく適正な学習評価・授業改善の研究・開発・実践・リフレクションをいかに積み重ねていくか、校種・学校間を超えた取組みが求められます
提起している仮説「カリキュラムマネジメントで、ディプロマポリシーの共有と実践を進めていくことは、観点別学習状況の評価の理念に相応した「授業改善・適正な学習評価」、さらには「教員の働き方改革」に繋がる」については、次々回、さらに論を深めていきます

次回は、私が、東百舌鳥高校 校長時に取組んだ 国立教育政策研究所(国研)「総合的な学習の時間」教育課程研究指定校事業 研究主題「学びに向かう探究学習の研究・開発及び評価」から、「総合的な探究の時間とカリキュラムポリシー」について、学んだことを綴っていきたいと思います
これは「教科・科目において1年間で身に付けるべき資質・能力」を、学校全体で共有したディプロマポリシーに基づいて教科内での共有を進めるために大切な観点です

何かのきっかけで、現場の生徒たちや先生方が幸せになっていくような議論が拡がればと願います

引き続き、どうぞよろしくお願いいたします

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