障害者雇用における社員の「管理」と「評価」の関係
最近、マルクスの資本論に興味があって、少し勉強する機会がありました。
とはいえ、難しい用語はわからないので、簡単な解説書を何冊か読んだだけです。
会社はどうして商品を売ったあとに「儲け」が残らないとだめなんだろう?
社員の働きにふさわしい「賃金」って、どうやって決めるんだろう?
社員がどれくらい働いてくれたのか、どうやって測るんだろう? それが社員を「管理」するってことだろうか。
給与を決めるために社員の仕事を「評価」することも必要だけれど、それも「管理」のうち?
そんな問いを続ける中で、障害者雇用の現場における社員の「管理」と「評価」の関係について知りたくなって、JPTの役員2人に話を聞きに行きました。
(執筆:ミッションパートナー ちひろ)
管理を支える「ルール」の存在
(ちひろ)
会社って、モノやサービスを作って売るという表向きの仕事のほかにも、いろいろと業務がありますよね。
中でもバックオフィス業務の代表的なもの、人の管理についてJPTではどんなふうにしているのか教えてください。
(成川)
社員を管理するという言葉は、とても広い範囲を指しますよね。
多くの企業では「管理職」というと責任のある立場になります。
管理をするのも管理をされるのも、言葉上はあまり気持ちのいいものではないかもしれません。
でも、その人に合った業務の割り当てや、研修の実施といった、社員により良い仕事をしてもらうための業務も「管理」になります。
業務時間や労働日数の管理は、社員がその時間働いたという証明になり、社員自身を守ってくれます。
JPTではなるべく業務の成果に関係のない不要なルールは排除していますが、日々の業務については、勤怠打刻、日報、個人面談で把握しています。
社員にとっても管理職にとっても手間が増えることは事実ですが、どうしても必要なことなので、社員自身のためにも、こちらがサポートしてでも実施してもらっています。
どれだけの時間働いて、何ができたかというのを知ることは、社員を評価するうえでもとても大事です。
ルールを守れないことに対して怒ることはありませんが、甘やかしているわけでもありません。
その分、かかったコストは、きちんと考慮します。
(阿渡)
言い換えれば、管理のための「最低限のルール」を守ることは、社員にとって自分の業務成果を評価してもらうツールを提供することでもあるんです。
決して、打刻や日報の提出などの「ルール」を守ること自体がプラス評価になるわけじゃない。
これができないことをマイナス評価にするかどうかは、難しいところですが。
障害があっても、自立した社員であってほしい。
誰もが対等に働けることを目指すJPTですが、誰もが入社できるわけではない。
全員共通の「やるべきこと」が守れるかどうか、難しければ、それを守るために自分なりにどんな工夫ができるのかも採用基準になっています。
評価項目の作り方
(ちひろ)
阿渡さんのおっしゃっている「プラス評価」について、次年度の給与アップの基準になるような評価項目はあるんでしょうか? 多くの企業では、業務成果とは関係のない項目も評価項目に加わっていたりします。ルールの少ないJPTで、評価はどのように測っているんですか?
(成川)
これができる、これができないという絶対的な評価項目を作ることは、JPTの場合は特に難しいです。みんな、ほんとうに、いろんな仕事をいろんなペースで進めているので。
でも、雇用義務があるからと言って、価値がないものに過大な報酬を払わない。
障害があるからと言って、価値があるものを買い叩かない。
これは処遇を決めるときには意識しています。
当たり前のように聞こえますが、意識しないとバイアスがかかってしまい、正当に評価できないですから。
(ちひろ)
では、完全に成果のみで判断するということでしょうか。
(成川)
スキルと給与の関係については、ITエンジニアの市場価値に照らし合わせて決めていけるのが理想だと思います。
そこから、個々人の配慮にかかったコストを差し引きする。
でも実際にはなかなか難しいですね。
スキルも成果も、可視化できない部分が相当にあります。
成果が見えにくい場合は、日報や面談で「過程と進捗」を聞いて判断するようにしていますが、その際の公平性の担保については、今後の課題です。
(ちひろ)
なるほど。新しい働き方を作っていくには、ルール作りや評価項目の作り方がすごく難しいんだなということがわかりました。
配慮と甘やかしの境界線、成果の測り方。
社員に対して個別のマネジメントが必要なJPTだからこそ、永遠の課題になるかもしれませんね。
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