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「富裕税」を払うのは誰?お金持ち?貧乏人?

「富裕税」と言われるような財産にかかる税金を支払うのは誰だと思いますか?
一般には「富裕層」「お金持ち」だと思われています。
また、富裕税は、公共サービスの充実させることによる格差是正を理由に正当化されがちです。

しかし、「富裕税」を負担しているのは、本当に「富裕層」なのでしょうか?

今回は、アメリカの自由主義系シンクタンク「ミーゼス研究所」HP掲載の論文を要約・抜粋して紹介しようと思います。(太字は筆者です)
2022年11月30日に掲載のヘスース・ウエルタ・デ・ソト教授の記事です。

※デ・ソト教授の記事は下記もご覧ください。


全文はこちらから読めます(全文も短いです)

Who Pays Wealth Tax: The Rich or the Poor?
富裕税を払うのは誰か。富裕層か、貧困層か?


「蓄積された富や資本のストックに対する課税」に反対する主な論拠は、
そのような課税が「労働者」にとって害があるからです。
この税の害が特に大きいのは、労働者の中でも最も貧しく最も脆弱で最も不利な立場にある人です。

雇用・仕事の質・賃金水準は、「富の量」と、その富の所有者が賢明に投資しより高度な機械・製造工場・天然資源・コンピューター機器などの形で労働者に提供される「資本の量」に直接依存します。

市場経済では、賃金は労働者の生産性によって決定される傾向があります。
労働者が利用できる資本財群がますます大きく洗練されていく場合にのみ、生産性の継続的かつ持続的な上昇が起こりうるのです。

インドの労働者が1日3ユーロしか稼げず、アメリカの労働者がその100倍稼いだとしても、その原因はアメリカの労働者の方が賢いとか労働時間が長いとかではありません。
アメリカの労働者は平均してインドの労働者の100倍の資本設備を享受しているからです。
インドの労働者は、洗練された設備がなく、しばしば家畜で耕したり事実上手作業で収穫することを余儀なくされています。
アメリカの労働者は、最新の付属品を備えた強力なトラクターを利用することができます。
両者の賃金に大きな差があるのは、最新鋭のトラクターを使えば、アメリカの労働者はインドの労働者が初歩的な道具で耕す面積の100倍もの面積を耕すことができるからです。

ここで重要なのは、最先端のトラクターを労働者が利用可能になったのは、何人かの資本家が富と資本を蓄積し、それらをトラクターという形でアメリカの労働者に提供したからなのです。
トラクターは高度資本財であり、生産性を劇的に向上させ、その結果として労働者の賃金を増加させたのです。

この推論は、経済科学の最も重要な教えのひとつを要約したものです。
貧しい人々に必要なのは、目先の空腹を満たす「魚」ではなく、飢餓の問題を一挙に解決する「釣り竿(つまり資本財)」であるという、長年の偉大な大衆の知恵を示しています。
ここでもまた、科学が党派的デマゴギーに対する最高の解毒剤であることが証明されています。

例えば、ZARAのオーナーであるアマンシオ・オルテガ氏が600億ユーロの財産を持っているとします。その全額を収用して、相対的に世界で最も貧しい20億人に分配しても何の意味もありません。
この貧困を生み出す行為の代償は大きいです。
この著名な資本家の無数の工場・施設・建物を消滅させ、清算し、閉鎖する必要があるからです。
何万人ものZARAの従業員と何百万人もの顧客にとって、これらの施設は日々、富と幸福を生み出し続けています。その結果、多くの人々の生産性と賃金を押し上げているのです。

貧困と闘い、繁栄(特に賃金の低い人々の繁栄)を促進したいのであれば、
私たちはすべての納税者、特に富裕層を大切に扱い、彼らの富の蓄積を支援すべきです。富裕層に対して、迫害や社会的非難はすべきではありません。

富裕税などの富や資本の蓄積に課税される税金は、
労働者(特に相対的に最も弱い立場にある労働者)に有害な影響を及ぼすことになります。

どのような資本(有価証券、投資ファンド、銀行預金、不動産など)で蓄積されているかに違いはありません。
なぜなら、これらの資本の利用には、労働者の協力を必要とするからです。それにより、雇用と労働の質を高めます。

富裕税は、「本来は蓄積できたはずの資本」を減少させることになります
そして、「生産性の低下」と「実質賃金の低下」をもたらします。

富裕税は、最終的には労働者が負担するものなのです。

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