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単品量産と決別した大型工場・ウッドエナジー協組・上

平成11年に三陸木材高次加工協同組合(岩手県住田町)がスギ集成管柱生産に先鞭を付けて以来7年、現在は全国で10のスギ集成材工場が稼働している。三陸木材開設当時は、スギとホワイトウッドのラミナ価格に歴然とした差があり、スギ集成管柱生産に対しては悲観的な見方が多かった。しかし今では、ホワイトウッド集成管柱1本1,750円(4月の市況)に対してスギは1,700円〜1,800円で販売できるまでになった。次第に力をつけている証拠だ。

今回、遠藤教授が訪れたのは、スギ小・中断面構造用集成材の生産・販売で九州をリードするウッドエナジー協同組合(宮崎県南郷町)。同協組の集成材は、スギ集成管柱を中心に、九州のプレカット工場や工務店から高い評価を得ている。

年7万㎥の丸太を消費、集成管柱に豊富なアイテム

  宮崎県日南地域。かつて弁甲材で名を馳せた飫肥林業の中心地だ。このあたりの山々は「植えて天まで至る」という表現がぴったりするほどスギが植林されている。その一角に、吉田産業(資)の製材工場がある。年間約7万㎥のスギ丸太を製材する、わが国屈指の大型工場だ。この吉田産業が中心になり、平成13年3月にウッドエナジー協同組合(出資金1億円)が設立された。同協組の吉田利生代表理事は、吉田産業の代表社員でもある。

  同協組は、林業構造改善事業を利用し、乾燥施設12基、モルダー、集成材加工施設、木屑炊きボイラー、発電施設などを導入して、14年8月に操業を開始。翌年12月には JAS 認定を取得。現在、月800㎥(小断面500㎥、中断面300㎥。なお、最大能力は1200㎥)の製品を生産している。中国木材伊万里事業所(4月の異樹種集成材生産量は1,836㎥、第280号参照)を除けば、九州ではトップクラスの生産規模だ。

  同協組の工場でまず目につくのは、集成管柱のアイテムが多いこと。集成管柱といえば、内外産を問わず10.5㎝角、3m、 FJ (フィンガージョイント)ラミナ5プライが定番商品であるが、ここでは数種類の集成管柱が生産されている。中でも驚きは、オール1枚物ラミナ( FJ しない3m定尺ラミナ)の5プライ集成管柱だ。ライバルメーカーも舌を巻くというが、これで採算をとるには相当な工夫があるとみられる。このほかフェイスとバックが1枚板で中が FJ ラミナの集成管柱や4プライの集成管柱もある。

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4プライ集成管柱の説明をする吉田代表理事(右、後方は回転プレス)

遠藤教授
  ホワイトウッド集成管柱の量産工場とはかなり趣が違う。

吉田代表理事  
  顧客第一を経営方針にしているためだ。注文に応じてさまざまな製品をつくる。それをリーズナブルな価格で販売している。フェイスとバックを1枚板にしたのはムクのような意匠性をもたせたい工務店の注文に応じたもの。4プライスギ集成管柱(フェイスとバックが1枚板)はウッドエナジーの「売り」だ。コスト縮減が狙いだが、品質には十分自信がある。

売れるものを自由につくる、集成材のメリット追求  

遠藤 
  コストダウンの秘訣は?

吉田 
  丸太をとことん使い切るために、木屑炊きボイラーで発電も行っている。ウッドエナジーという名も、丸太のもつ力を十分に発揮させたい、そんな想いを込めて命名した。単品の量産はやらない。品質管理を徹底させながら、効率的な多品目生産を推進したい。

遠藤 
  ラミナの調達はどうしているのか?

吉田 
  吉田産業が核になって供給している。同社はもともと割物中心の製材工場だから板挽きは得意だ。従来の製材とラミナ供給を両立させるために現在ラインを増設している。

遠藤 
  ラミナの乾燥は?

吉田 
  天然乾燥を3カ月する。その後、人工乾燥に移る。乾燥機は12基(100㎥・9台、30㎥・3台)。イタリア製だ。最終含水率は10%以下におさえている。

遠藤 
  製材業と集成材生産の違いは何か?

吉田 
  製材は最初に原木ありきだ。太いムク製材品が欲しいなら太い丸太が必要。さらに副製品は何をとるか、丸太を見ながら歩止まりも考える。これに対して集成材のメリットは、売れるものを自由につくれる。積層もできるし継ぐこともできる。丸太の大きさに制約されない。つくる商品が決まっているから原価計算ができる。

スギのKD化に有効策なし、メジャーは目指さず

遠藤 
  製材の規模拡大を図らずに集成材生産に着手した理由は? 

吉田 
  一般製材を続けていくことは実に難しい。やめようと思ったこともある。特に、芯持ち柱のKD化は難しい。品質管理とは完成品の管理のことではない。1つ1つの工程管理の集積になる。ところが、製材工程の1つであるKD化というプロセスには、漠とした点が少なくない。「割れ」が生じることもその1つだ。柱のKD化にこれほど投資しているのは世界中で日本だけ。打開策を探しに米国の製材工場を何度も視察した。しかし有効策は見つからなかった。そんなとき、林業用高性能機械購入のため欧州へ行く機会があった(吉田産業には山林部がある)。向こうではボード類や集成材生産が盛んなことを肌で知り、感じるところがあった。

遠藤 
  ウッドエナジー製集成管柱の評価は確実に上がっている。 

吉田 
  我々は、グローバル市場を前提とした単品量産によるコストダウン方式はとらない。意味のある売り方にこだわりたい。販売先の工務店の中には、ウッドエナジーの姿勢に共鳴して「決してメジャーにならないで」と応援してくれるところもある。  

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スギラミナの天乾(左)と人工乾燥機(右)、
後方は木屑炊き発電施設

遠藤 
  そのような経営戦略をとる理由は何か?

吉田 
  「地域」と飫肥スギに徹底的にこだわりたいからだ。その良さ(スギ特有の粘り強さ、白アリに対する防蟻効果など)を理解してもらえるところに売っていきたい。市場への投げ込みはしたくない。スギの良さがわかってくれるのならば、日本にこだわらない。東南アジアへスギ集成材を輸出することも検討している。

『林政ニュース』第295号(2006(平成18)年6月28日発行)より)

次回はこちらから。

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