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外材供給拠点で国産スギを利用・シーアイウッド(株)

シーアイウッド(株)(本社=茨城県水海道市)は建材商社大手・伊藤忠建材グループのメンバーで、住宅資材・木製品の製造・販売、プレカット加工・販売、国際埠頭の運営管理を行っている。同社袖ヶ浦事業所には、首都圏で唯一の大型集成材工場(小断面)がある。主に北欧からラミナを輸入して集成管柱を製造・販売しているが、ここにきてスギの活用を検討し始めた。袖ヶ浦事業所長の中島啓和氏(シーアイウッド(株)専務取締役)を遠藤日雄・鹿児島大学教授が訪ね、外材供給の一大拠点で国産材を利用する可能性について考える。

首都圏マーケットにジャストインタイムでデリバリー

  袖ヶ浦事業所の敷地面積は25,000坪と広大だ。京葉工業地帯の中心に位置しており、東京湾アクアラインにも近い。この抜群の立地条件を活かして、首都圏をマーケットエリアとした生産・物流拠点になっている。最新のピッキングシステムを備え、パワービルダーの施工現場へジャストインタイムで納品できるのが同事業所の強みだ。ビジネススタートは1974年(前身の伊藤忠ランバー(株)からシーアイウッド(株)へ商号変更)。

  当初は、北米から丸太と製材品を輸入・販売し、1991年に2×4プレカット工場を整備した。マーケットニーズにあわせてメイン商品を切り替えながら、30年以上にわたって外材を取り扱ってきた。まさに木材販売のプロである。  

遠藤教授
  集成管柱を生産し始めたのはいつから? 

中島所長 
  1998年からだ。北欧と一部オーストリアからホワイトウッドとレッドウッドのラミナを輸入している。現在の月間使用量は5,000㎥、集成管柱(5プライ)の生産量は月間11〜12万本になっている。

遠藤 
  ホワイトウッドとレッドウッドの割合は? 

中島
  ホワイトウッドが85%、レッドウッドが15%だが、最近はレッドウッドの需要が伸びている。梁にレッドウッドが使われるので、柱もというニーズが強い。強度的に大きな違いはないのだが、レッドウッドは強いというイメージが広がっているようだ。

乱尺ラミナ対応でコスト減、多様化するニーズに即応

  中島所長は遠藤教授を集成管柱工場へと案内した。注目は、今年になって新設した高速水平フィンガージョインター。ラミナ材をカットするデッキソーなどを含めて、1億5,000万円の資本投資をした先進加工ラインだ。

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高速水平フィンガージョインター

遠藤 
  ラミナの流れがとても速い。
 
中島 
  ラミナ木口をフィンガー加工後、最大毎分120mのスピードで、プレスしながら接続して正寸カットできる。ラミナはラフ材であるが、高速水平プレス式なので、接着効率も高まった。

遠藤 
  多額の投資は集成管柱生産の拡張が目的とみていいか?

中島 
  それだけではない。利用するラミナの多様化に対応したものだ。これまでは3mの定尺ラミナが中心だったが、乱尺ラミナを使用することで、仕入れコストを低減できる。

  関東地方のパワービルダーやマンションの建築では、柱の寸法が3mの定尺ではなく2m85㎝が多い。2階の柱になると2m65㎝が主流だ。ラミナサイズを縦横に生産することで、さまざまなニーズに対応できる。

遠藤 
  大消費地での木材流通にはスピードと対応力が求められる。

中島 
  我々集成材メーカーが品質の確かな製品を生産し、それをプレカット工場が24時間体制で加工して邸別配送するシステムが定着した。パワービルダーの「顔の見えない家づくり」でも、ほとんどクレームがなくなり、消費者の信頼を得て業績を伸ばしている。国産のスギも集成材化することで、こうしたマーケットの流れに乗ることができるだろう。ムク製材とは別の需要先を確保できると思う。

国産スギのラミナでも専用埠頭で受け入れ可能

  中島所長と遠藤教授は、東京湾に臨む専用埠頭へと歩を進めた。深さ12m、長さ200m、4万6,000トンの大型輸送船が接岸できる。北欧から輸入されたラミナは、東京からコンテナのまますべてここに持ち込まれ、デバン(荷揚げ)される。

  ユーロ高とアメリカの住宅バブル、ドイツ、フランスの景気回復などで、北欧産地は対日輸出で強気の姿勢に出ている。ホワイトウッド集成管柱もこれまでにない高値を更新しそうだ。この状況の中、中島所長は原材料調達の多様化が不可欠と見ている。

遠藤 
  北欧産ラミナの代替として、スギに着目してはどうか?

中島 
  大いに関心をもっている。この専用埠頭にスギラミナを船でもって来てくれればありがたい。外材向けの国際埠頭に国産材が揚がるようになれば画期的なことだろう。

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専用埠頭を視察する中島所長(左)と遠藤教授

遠藤 
  スギを使う上での課題は?
 
中島 
  価格と安定供給だ。月産使用量5,000㎥のラミナのうち、2割でも3割でも安定供給ができれば、問題なく使うことができる。価格については、ホワイトウッドラミナと同程度が条件。船輸送ならば、トラックやトレーラー輸送よりもコストは安くなるはずだ。とくに、スギ材産地の九州は供給力が高まっていると聞く。活用策を考えていきたい。

◇    ◇

  袖ヶ浦事業所には、首都圏という巨大市場に木材製品を供給するためのインフラが完備されている。国産材の供給力を高めるためにゼロから投資するのはリスクが大きい。このような既存インフラを活用する方が現実的だ。中島所長は、「林野庁が進めている『新生産システム』に注目しています」と話している。安定供給体制ができれば、国産材を受け入れる拠点はすでにできている。

『林政ニュース』第299(2006(平成18)年8月9日発行)より)

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