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国産材利用へ、銘建工業の新たな挑戦・上

国内最大の集成材メーカー・銘建工業(株)(岡山県真庭市、中島浩一郎代表取締役社長)が国産材の本格利用を計画している。これまでは、もっぱら北欧から輸入するラミナに依存してきたが、今後は原料調達先を国産材にも広げる方針だ。その理由は何か――。遠藤日雄・鹿児島大学教授が同社を訪ね、中島社長と国産材復権の可能性を考える。

ラミナが目の前を飛んでいくハイスピード工場


  内外産構造用集成材供給量は200万㎥/年に達する。このうち銘建工業は約15%に当たる29万㎥(集成管柱13万㎥、集成平角16万㎥)のシェアを握る国内最大手だ。ちなみに、ストゥーラエンソティンバー社(フィンランド)の対日供給量は97万㎥(平成17年の実績)である。銘建工業はこの規模には及ばないものの、グローバルビジネスを展開しているトップ企業といってよい。では国際企業の工場とはどんなものか。中島浩一郎社長に案内していただいた。

  工場には小、中、大断面それぞれの独立生産ラインがある。ラミナ(レッドウッド&ホワイトウッド)の流れの速いのには驚かされる。目の前をピュンピュン飛んでいく感じだ。他の大手集成材メーカー数社を視察したことがあるがその比ではない。国産材関係者が見たらびっくりするだろう。

遠藤教授
  ものすごいスピードですね。これでは、国産材工場はとてもかなわない。

中島社長 
  このラインは、北欧材でも国産材でも、どんな樹種にでも対応できる。ただ今までは、このラインに流せるだけの国産材が揃わなかったということです。

遠藤 
  その状況が変わってきたと?

中島 
  今すぐ、全面的に国産材を流すのは難しいでしょう。ただし、これまでは集めづらかったスギが、ある程度はまとまって調達できるようになってきました。

  だから私は、年頭の挨拶で社員達に、「今年の終わりまでには、集成管柱生産ラインの1割以上をスギに変えるぞ」と宣言したのです。まだ計画段階ですが、たぶんやれるでしょう。

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最先端のラインを説明する中島社長(左)と遠藤教授

世界一安いスギ、この値段は放置できない

  中断面集成材(集成平角)の生産工程を紹介しよう。ラインに投入されたラミナは水分チェックを受ける。含水率15%以上はここで排除される。次はラミナの寸法を整えるためのモルダー加工だ。このモルダーが凄い。早いのなんの、毎分300mのスピードで加工するという。ラミナはさらにマシンストレスグレーディングに進む。強度を測定し選別する工程だ。次はラミナの欠点除去のためウッドアイを通る。中国木材(株)など日本国内に3機しかないという。その後、ラミナは検査データをもとに6つのステーションに仕訳され、接着、プレス、養生に入る。最後に、四面プレーナー加工を施し、検査後、梱包・出荷体制に入る。中断面の生産量は近いうちに月間1万5,000㎥に達するという。

遠藤 
  スギの供給体制に不安はないですか。

中島 
  スギの生産量は年々増えていくだろうと思っていますから、不安はないですね。大断面集成材では、すでにスギを使っていますし、乾燥の仕方など品質管理面でも、こんなもんかなというイメージは掴んでいます。

  それよりも、スギの値段がバカみたいに安くなっていることが問題です。たぶん世界で一番安いでしょう。木材加工に携わる者として、一人の業界人としてこの現状を放置しておくわけにはいかない。

  ただし、我々が基本としなければならないのは、ユーザーに価値の高い製品を提供すること。この観点から言えば、国産材でも外材でも、いいものを使っていく。外材がすべて悪いわけではないし、国産材だけで日本の住宅用材を賄えるものでもない。この点を踏まえた上で、国産材をもっと使える時期に来たということです。

競争力アップのキーワードは「いいところ出し」

  中島社長は「いいところ出し」というコンセプトを提唱している。「いいところ出し」とは、「それぞれの会社の得意分野に特化した協業化」のことだ。具体的に、スギラミナ生産で「いいところ出し」の一端を担うのが宮崎県都城市の外山木材である。同社の外山正志社長は、次のように話している。「今さら補助金もらって中途半端な集成材工場を立ち上げても国際競争に勝てない。その余力があるなら、現在のKD技術の完成度を高めたほうがいい。日本一の銘建工業と組んで『いいところ出し』の一端を担ったほうがスギのシェア拡大につながる」。

遠藤 
  「いいところ出し」は、スギが国際競争市場に参入する近道であり、重要なキーワードだと思います。

中島 
  これからスギの利用量を増やす場合に、当社が1から10まですべてをやる必要はないでしょう。例えば、製材なり乾燥なりに関して信頼の置ける会社があれば、そこと連携する。いろいろな組み合わせを考えていく時代になっていると思います。

  製材ならば木取りや挽きスピード、鋸を変える回数、板を削るならばプレーナーの刃先をどう設定するかというようなコアの技術をできるだけ共有する。あれもこれもというわけにはいきませんが、こちらの持っているいいところはお出しするし、相手のいいところも出していただく。これは海外の企業との関係でも同様です。

  繰り返しになりますが、我々の役割は、社会に対して価値のある製品を提供すること。スギに新しい機能なり価値なりを加えた上で、低コストでユーザーに届けることが目的であり、使命です。

  私は、集成材は製材品の一部だと考えています。その製材品の一部を、いろんな人達と分担して、価値を高めて提供できる仕組みをつくることが当面の課題です。(次号につづく)

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溢れる欧州材の中にスギが加わる日も近い

『林政ニュース』第289号(2006(平成18)年3月22日発行)より)

次回はこちらから。


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