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ゲームデザイン関連書籍をまとめてレビューします

ゲームデザイン本の読書ガイドがインターネットにあまりなかったので、読んだ本をまとめてレビューします。

国内で最も充実したゲームデザイン本のまとめにしてるつもりなので、掲載されていない推薦書籍があれば是非コメントやTwitterで教えてください。
最終更新日:2024年2月15日(更新履歴を末尾に記載しています)

★★★:万人におすすめできる。読むべき本
★★☆:幅広く有用。もしくは、ある分野の非常に優れた本
★☆☆:需要と一致すれば有用
☆☆☆:ややニッチ、あるいは優先順位が低い本


★★★:万人におすすめできる。読むべき本

ゲーマーズブレイン

認知科学の観点からプレイヤー体験(UX)の設計を解説した本。
知覚、学習、動機づけなどのゲームデザインに活かせる脳・認知の知識を学び、UI、チュートリアル、ゲームの面白さ、報酬、難易度曲線などに組み込んでいく。設計手法やユーザー調査についても触れられている。

UXはあらゆるゲームの根幹となる重要なテーマ。このテーマを分かりやすく、深く解説している。ゲームデザインの土台となる理論を学べる素晴らしい本。非常におすすめ。

ゲームデザインバイブル

ゲームデザイナーが関わる領域を網羅的に解説した本。
ゲームシステム、ストーリー、グラフィック、UIなどゲームの内容だけでなく、発想法、プロトタイピング、ドキュメント作成などのHow-toや、コミュニティ形成、デモグラフィックなど、最も幅広い内容が取り扱われているゲームデザイン本。

書かれている内容は基礎的だが網羅性が非常に高く、自分が詳しくない領域の最低限の知識を得られるのが嬉しい。参考文献も分かりやすく紹介されており、ゲームデザインを学ぶ入り口としてもおすすめ。

★★☆:幅広く有用。もしくは、ある分野の非常に優れた本

ゲームメカニクス

ゲームシステムを抽象的なモデルに置き換え、代表的な構成要素やデザインパターン、シミュレーション手法の「マキネーション」を紹介する本。
ゲームシステムの設計において重要な概念や、要素を抽象化して機能を正確に捉える手法を学べる(マキネーション自体を習得しなくても問題ない)。

恐らく、ゲームシステム面の掘り下げが最も深い本で、スマホRPGやストラテジーなどリソースの管理が複雑なゲームの開発者におすすめ。アクションゲームには活かしづらいが「スキル原子」の考え方はレベルデザインに重要。

「ヒットする」のゲームデザイン

ゲームの顧客層をプレイスタイルとハードコア・カジュアルの2軸で分類し、各グループにどう訴求するかを中心にゲームシステムやゲームジャンルを分析した本。ジャンルの成り立ちや主要ゲームも掲載されている。

プレイヤーやゲーム体験を分類しゲームデザインに当てはめる手法は、ゲームを高い解像度で理解するために必要。また、ゲームジャンルの解説は資料としても優秀。

この本の欠点は若干古いこと(2006年出版)と、古典的なゲームタイプの分類を使っている点。このアプローチの発展として調査会社Quantic Foundryのブログを参照するのが良い。ゲームタイプの分類は筆者のnoteでも取り扱ったので、興味のある方は是非。

ゲームデザイナーのための空間設計

実在の建築・庭園・都市や名作ゲームからレベルデザインを学ぶ本。

レベルデザインにおいて意識すべき点や、建築・空間が持つ機能がまとめられている。設計や分析の切り口となる視点を得られる良書。アクションだけでなく、FPS・RPG・オープンワールドなど様々なジャンルに活用できる。

入手困難になっており、版元に問い合わせたところ再版予定はないとのこと。古書を探すか、図書館で読もう。

3Dゲームをおもしろくする技術

3Dゲーム開発のノウハウを自キャラクター・敵キャラクター・レベルデザイン・あたり判定・カメラに着目して解説した本。

開発者の目線で意識しなければ気づかない工夫が大量に掲載されており、図も豊富に使い、詳しく分かりやすく説明されている。それぞれの工夫がどのようなプレイヤー体験を意図しているかに触れているのも良い。

一から3Dアクションを開発するとき、この本を知っているか否かで労力が全く違いそう。プレイヤーにとって自然な体験が膨大なノウハウのもとに成立していることが分かる良書。

ゲームシナリオ入門

ゲームシナリオの書き方を解説した本。製品として成立させることに重点が置かれており、発想法なども含め、業務で行うときのイメージがつきやすい実践的な本。

キャラクターの設定に必要な要素や、役割の分類などが解説されているのが特徴。巻末付録にあった『ファイアーエムブレム』と思われるゲームのエピソードのような、ゲームシステムやレベルデザインと複合した取り組みなどが具体的に掘り下げてあれば、もっと貴重な本になったかもしれない。

実践ゲームUIデザイン

UIデザインの進め方を解説した本。開発の初期段階からリリースまでの手順と、各フェイズにおいて注意すべき点が具体例とともに掲載されている。

業務標準化の意識が強く、初心者が知っておくべきノウハウから、レギュレーションの策定方法などリード視点の解説まで網羅されている。プロセスを解説した本は貴重で、UIデザイナーだけでなく幅広い職種の人におすすめ。

ゲームメカニクス大全

アナログゲームに使われているゲームシステムを「ターン構造」「ゲーム終了と勝利」「不確実性」などのカテゴリごとに要素分解して分類した本。システムごとに長所・短所や実装例、関連するゲーム、相性の良いシステムなどが載っている。

アナログゲームをデザインする人には必須。デジタルゲームに活用できる要素も多い。資料としてかなり凄い本で、デジタルゲーム版が出たら10万円でも買いたい。

ゲームプランナー入門

ゲーム開発の流れやチーム編成、企画書、仕様書の書き方など、国内ゲーム企業のプランナー(企画職)の業務を解説した本。ゲームデザインについても要所をまとめて簡易的にに解説してある。

企業におけるゲーム開発の全体像をつかめる良書。ゲーム企業への就職に興味がある人は是非読んでみよう。

★☆☆:需要と一致すれば有用

中ヒットに導くゲームデザイン

原題は"Game Design Workshop: A Playcentric Approach to Creating Innovative Games"(革新的なゲームを作るためのプレイ中心アプローチ)。原題のとおり、プロトタイピングを中心としたゲームデザインの本。

プロトタイピングやプレイテストは多くのゲームデザイン本で重要とされているが、具体的な手順が書かれている本は少ない。恐らくタイトル固有の事情や、開発プロセスと密接に関わっており表に出にくいためだと思うが、その中で本書はプロトタイピングの手法を体系的に書いた貴重な本。

欠点は翻訳が悪いこと。日本語として読みにくく、明らかに意味が違うものや英語を知らないと意味の分からないものもある。内容的には★★。

「レベルアップ」のゲームデザイン

アクションゲームの開発に必要な知識を網羅的に解説した本。『ゲームデザインバイブル』のアクションゲーム特化版。

レベルデザインや、アクション、敵、障害物のパターンなどがより深く解説されている。ドキュメントのテンプレートやテーマのアイデアリストも付録されている。アクションゲームに関わる人の入門書としておすすめ。

2Dゲームをおもしろくする技術

『3Dゲームをおもしろくする技術』の2D版。

ボリュームはかなり少なくなっているが、様々な名作ゲームのプレイヤー体験を抽出し、体験を実現するための工夫を丁寧に解説している。基本的ながら見落とすと致命的なノウハウが書かれているので、入門書として目を通しておくのが吉。

レベルデザイナーになる本

企業でレベルデザインを行うプロセスを解説した本。ゲームの企画・要素の洗い出し・レベルのコンセプト決め・ダイヤグラムの設計・ツールを使った構築・アート面も含めたブラッシュアップなど。

面白くする手法というより、進め方中心。設計の大きな枠組が分かる。『3Dゲームをおもしろくする技術』『ゲームデザイナーのための空間設計』と併せて読むと全体像が掴めそう。実践用にゲームエンジンのデモが入ったCD-ROMが付属(動作未確認)。

ニンテンドーDSが売れる理由

ゲームのUI・UXデザインの基本的な手法を網羅的に解説し、電化製品や教育などへの活用を検討した本。

ゲームのUI・UXで注意すべき点が豊富な具体例とともに確認できる。『ゲーマーズブレイン』の副読本としてもおすすめ。後半は今ならもっと良いデザイン本がありそう。

ゲームデザインプロフェッショナル

『Fate/Grand Order』の塩川洋介氏執筆の仕事マニュアル。ゲームデザインというよりゲーム企業特化のビジネス本に近い。

このnoteで紹介している本はほとんどがゲームの設計に関する本だが、実際にゲーム企業で働くと設計に充てる時間は業務時間の10%くらいで、残りは実装依頼や進行管理、諸々の雑用などに費やされる人が多いだろう。この本はゲーム開発「業務」の進め方に焦点を当てた珍しい本で、新卒社員としてプランナーをやる人におすすめ。

プロフェッショナルゲームプランナー

国内ゲーム企業のプランナー向け教科書。ゲームデザイン、開発・運営業務のノウハウ、マインドセット、キャリアプランなど。

カバーされている範囲が広いのが長所。ただ、話のつながりが怪しかったり、箇条書きがMECEじゃないなど、全体的に整理されてなさが目立つのは残念。単語の使い方なども怪しい。興味深い内容は多いので、Tips集として見るのが良さそう。プランナーの得手不得手のタイプ分けは良い着眼点だと感じた。

ゲーム開発プロジェクト管理の基本

ゲーム企業におけるプロジェクトマネジメントの本。開発の大まかな流れから、計画や仕様の策定、タスクの管理、マイルストーンの管理、成果物の評価、リリース後の運営など、必要な事柄が網羅的に解説されている。

類書が少なく、全体像をひととおり把握できるのが良い。それぞれの具体的な手法は、掲載されている参考書籍から掘り下げていくのが良さそう。

「ついやってしまう」体験のつくりかた

『スーパーマリオブラザーズ』や『ドラゴンクエスト』などの例を挙げて、プレイヤーの行動や感情を誘導する手法を解説した本。

情報量は少なめだが解説が丁寧なので、行動経済学、心理学、サービスデザインなどの本の敷居が高いと感じるなら、入門編としておすすめ。

「気持ちいい」から考えるゲームアイデア講座

『風のクロノア』『ミスタードリラー』の吉沢秀雄氏のゲームデザインガイド。

「気持ちいい」ことを膨らませ、目的と課題を加えてゲームの「核になるアイデア」とし、アイデアを補強するアイデアを組み込んでいく。アイデアの発想法や評価法が主題なので、プロトタイピングの方法論に組み込めれば面白そう。

Dの食卓はなぜ伝説のゲームになったのか?

企画の根幹をコンセプト・セールスポイント・システム・世界観・キャラクターの5要素とし、各要素のつくり方や企画書の書き方を解説した本。

5要素が2つの三角形を形成するように相関してるという話は分かりやすく、面白い。『Dの食卓』の話はあまり出てこないので、サブタイトルの方が正確。

チェインクロニクルから学ぶスマートフォンRPGのつくり方

『チェインクロニクル』の初期設計、運用の考え方や体験談を綴った本。

新書ということもあり情報量は少なめだが、運用型ゲームの設計について書かれた本は少なく、ストーリー重視のスマホRPGという新しいジャンルに関する記述は貴重。発注やディレクションの方針は他ジャンルでも参考になる。

ソーシャルゲームはなぜハマるのか

ソーシャルゲーム(SNS上で遊べるカジュアルゲーム)と、開発ノウハウのゲーム以外への応用を解説した本。

『パズル&ドラゴンズ』リリース前年の2011年に出た本で、軽視されがちなソーシャルゲームのゲームデザインに着目した貴重な本。開発で考慮すべきポイントや『釣り★スタ』『怪盗ロワイヤル』の事例分析がある。「ソーシャルゲーム」を開発する機会はもうないと思うが、現代でも参考になる箇所は多そう。

僕たちのゲーム史

1980、90年代家庭用ゲーム黎明期のタイトルを中心に、ゲームジャンルの成り立ちや、各ジャンルがどのような面白さを目指して作られたかを、当時の開発者の声などから論じた本。

面白さ・ゲーム体験の要素を捉えるのに役立つ良書。読み物としても面白く、おすすめ。

GAME 2.0

ボードゲームデザイナー「スパ帝」氏が発行していた同人誌。ゲームのプレイヤーを7つの民族に分類し、各民族の特徴や民族に基づくゲームの分析、ゲームトレンドの変化などを解説している。

Quantic Foundryに近いアプローチだが、こちらは統計ではなくゲームデザイン面からの考察。関連記事があるので興味を持った人は是非読んでみよう。

スパ帝氏の同人誌はボードゲームのルールをモジュールに分解し、モジュールからゲームを設計する手法を紹介した『ルールデザインノート』もおすすめだ。

自分だけのボードゲームを作ろう

ゲームの構成要素をメカニクスとコンポーネントに分類して、主なメカニクスやコンポーネントを紹介する本。タイトルに反して制作ノウハウは少なめだが、サンプルゲーム4つがカスタマイズ案込みで掲載されており、学んだ内容を使ってカスタマイズしてみようという趣旨。

ボードゲームをつくってみたいが、何をやったらいいか分からないという人におすすめ。『ゲームメカニクス大全』の入門版としても読める。

FINAL FANTASY XV の人工知能

『FINAL FANTASY XV』の開発に用いられたAI技術の紹介本。ゲームにAIがどう活用されてるかなどの基本から、仲間や会話を自然に見せる、敵の行動、mobの制御、写真撮影等、AI設計のノウハウが満載。

AIだけでなく、量産性を担保する開発ツールやワークフロー、ゲーム体験から重要な箇所を逆算し重点的に作るなど、開発全般に活かせる内容も多い。

背景アーティスト導きの書

ハイエンドタイトルの背景制作プロセスおよびノウハウを解説した本。

アーティスト向けの本ではあるが、大規模開発のチーム体制やパイプラインがまとめられている。また、レイアウトの章はプランナーの参考にもなりそう。レベルデザインに関わる人はとりあえず目を通しておくのが良さそう。

インディーゲーム・サバイバルガイド

インディーゲームの開発やパブリッシングにおいて、ゲームデザイン「以外」の部分を網羅的に解説した本。見落としがちな機能やデバッグ・プロモーション・税金や各種法令への対応・プラットフォームやパブリッシャーへの対応など。

様々なサイトや本に散らばっているが、穴があってはいけないノウハウが1冊にまとめられており、非常に貴重。

ルールズ・オブ・プレイ

ゲームの定義やゲームの構成要素を多角的な視点で分析した本。
学術的な研究の側面が強く、実用だけを考えるならゲームデザインに特化した本の方が読みやすい。ゲームデザインに活かせる観点も豊富に存在してはいる。

ゲームスタディーズと呼ばれる分野の用語はこの本を読んでいれば大抵理解できる。ゲームとは何か考えたい人や、ゲーム学に興味のある人におすすめ。

ハーフリアル

ビデオゲームとは何か定義し、ゲームルールとゲームで描かれるフィクションの関係を論じた本。

『ルールズ・オブ・プレイ』と同様にゲーム研究本だが、表現の抽象度と進行型・創発型の関係などゲームデザインの面からも興味深いことが書かれている。これもゲーム学に興味のある人におすすめ。

☆☆☆:ややニッチ、あるいは優先順位が低い本

「おもしろい」のゲームデザイン

ゲームの面白さとは何かを考察した本。ゲームデザイン論とゲームスタディーズと著者の哲学が書かれている。

書かれている内容には興味深いものもあるが、ゲームデザイン本の中ではかなり初期のものということもあって抽象的な記述が多い。実用性のみを考えるなら、新しく具体的な本を読んだ方が良い。

はじめて学ぶ ビデオゲームの心理学

ビデオゲームについて心理学から得られる知見を大まかに説明した本。前半は『ゲーマーズブレイン』のダイジェストに近い。後半はビデオゲームをプレイすることによる害・利益に関する研究結果がまとめられている。

第5章では、ゲームデザイナーに求められる倫理が論じられており、「ダークパターン」は今後重要になっていきそうなテーマ。

なぜ人はゲームにハマるのか

ゲームやゲーム性の定義から、ゲームと記号や身体との関わりを解説。ゲームの本質的な要素として「効率予測」を提示し、実際の事例に当てはめる。

各説明はあっさり気味。効率予測の概念も少し飛躍を感じるので、あくまで考え方の1つとして受け取るのが良さそう。よく話題になる「ゲーム性」の定義に関する様々な見解がまとめられてるのは嬉しい。

おもしろいゲームシナリオの作り方

ゲームシナリオの典型的なフレームワークや、プレイヤーの介入度と分岐の仕方を基にした分類、それらの長所、短所や導入のポイントなどをまとめた本。

プロットに関する話がほとんどで、隣接領域のキャラクターデザインや世界観構築についての話が少ないので、不完全な印象は否めない。ファイナルファンタジーやアークザラッドなど国産ゲームのシナリオ分析が豊富にあるのは面白い。

ゲームインターフェイスデザイン

ハードウェアやゲームシステムも含め、UIにおいて考慮すべき要素・機能や、制作プロセス、ゲームジャンルごとの特徴を解説した本。

説明自体はあっさりしており深い掘り下げがあるわけではないが、一読して要素をまとめて確認しておきたい人にはおすすめ。

「タッチパネル」のゲームデザイン

『レベルアップのゲームデザイン』の続編で、スマートフォンなどタッチパネルデバイス向けゲームに関する解説書。

2012年に書かれた本で、当時からスマートフォンゲームが大幅に進化しているため、内容が古くなってしまっている。タッチパネル操作における基本的な注意事項と、当時主流だったゲームジャンルの構成要素は学べる。

ネットワークゲームデザイナーズメソッド

携帯電話ゲーム黎明期、iモードを使ったオンラインゲームの設計について解説した本。

ゲームの内容自体はさすがに古いが、データ構造の設計や企画書が詳しく掲載されており、設計のプロセスも解説されるなど資料として興味深い。発売当時に読んでいたら凄い本だと感じたかもしれない。

ゲームクリエーターズバイブル

原題は"Game Architecture and Design"(ゲームのアーキテクチャとデザイン)。ソフトウェア開発の工程・チーム管理・コーディング手法などを重点的に解説しており、ゲームデザインは20%くらいの量。ゲーム理論(経済学)の利用が掘り下げられている。

20年以上前の本で、開発体制やコーディングに関しては課題自体に時代を感じる。ケーススタディやサンプルゲームのドキュメントが豊富に掲載されており、いま読んでも興味深い箇所もある。

ゲームプランナー集中講座

吉沢秀雄氏のゲームデザインガイド。『「気持ちいい」から考えるゲームアイデア講座』の6年ほど前に出た本。
サブタイトルの「テンポ」は、一般的な意味のテンポというより「スムーズなUX」くらい広い範囲。網羅性が高くなく、体系化された理論というわけではないが、一貫したテーマで平易に書かれている。

「テンポ」で失敗しているゲームタイトルが多い中、ここに注力している本は意外と少ない。テンポをもっと網羅的に掘り下げたら面白い本ができそうだと感じた。

組み立て×分解! ゲームデザイン

ゲームメカニクスの設計を論じた本。簡素なゲームを制作・改善しながら、改善の切り口や手法とその実例を紹介していく。

ゲームメカニクスのみを取り扱った本は少なく、ゲーム内経済などが中心のことも多いので、中核部分のみを取り扱った本書は貴重。実践寄りの本なので、ここから体系化が進むと面白そうだと思った。

コンピューターゲームデザイン教本

コンピューターゲーム(ビデオゲーム)の特性を解説し、コンピューターの特性をゲームにどう活用するか論じた本。

1990年に出た本ということもあり、さすがに古くなっている記述も多いが、コンピューターがゲームに与える影響を改めて考えるのは興味深く、現在でも参考になる内容は多い。黎明期のゲームデザイナーのインタビューも登場するので、歴史資料としても面白いかも。

遠藤雅伸のゲームデザイン講義実況中継

『ゼビウス』『ドルアーガの塔』などの遠藤雅伸氏の架空の講義録。前半はゲームシステム、レベルデザイン、AIなどについての話。後半はジャンルの黎明期の話を中心とした作品の紹介など。

講義録ということもあり、そこまで網羅的でもなく体系的でもないが、レベルデザインの章の、製品全体の構造とボリュームを想定から各要素の割合や所要時間を逆算していく話は面白い。

アプリ&ゲームプランナー必読! レベルデザイン徹底指南書

本書の「レベルデザイン」は一般的な用法ではなく、ゲームバランスやUIなどプレイヤー体験全般を指すもの。いくつかのジャンルにおいて、難易度や体験を変化させる要素を紹介している。

軽く触れるだけのジャンルが多いが、後半のいわゆる「ソーシャルゲーム」の報酬設計やプレイヤーの分類の話は概要がよくまとまっている。

ゲームデザイナーの仕事

プランナー向けビジネス本と、ゲームデザインのノウハウが合わさった本。

プランナーが考えるべきことがざっくりまとまっており、企業でプランナーを始める人への入門書として選択肢の一つに入りそう。13年前の本で、今からすると言葉遣いがやや乱暴。割り引いて受け取ろう。

プロになるための ゲームプランニングの教科書 《基礎》

国内ゲーム企業のプランナー業務を解説した本。

企画書や仕様書の作成だけでなく、シナリオ執筆・デバッグ・スケジュール管理・難易度調整などに関する記述があり、類書より実務を意識した本なのかもしれない。2012年の本なので、古く感じる部分もある。

ゲームプランナーの新しい教科書

国内ゲーム企業のプランナー業務を解説した本。

後半が主要ゲームジャンルの紹介にあてられており、各ジャンルの面白さのポイントがまとめられているのが類書と比較したときの特徴。また、スマートフォンも意識されており、UIやマネタイズに関する記述もある。

ゲームプランとデザインの教科書

前半はゲーム開発の基礎知識や開発の流れの簡易な説明。後半は開発者が語るゲームデザイン論。

国内企業の開発の流れがざっくりと分かる。ゲームの要素を「システム」「バランス」「シチュエーション」と分類するのは面白い見方だと思った。後半は章ごとに違う人が書いているため、クオリティにバラつきがある。

ゲームの教科書

ゲームとは何か?から始まり、ゲーム開発の流れや職種を紹介する本。

1日のスケジュールや開発工程のサンプルなど、具体的な話が掲載されているのが特徴。とは言え、2008年の本なので現代にそのまま当てはまるわけではない。特にスケジュールの部分は、今の基準で言えば無茶な働き方が書かれていると感じた。

ゲーム屋が教える! 売れるゲーム企画書の書き方

『みんなで暮らそう! ひつじ村』『メタルサーガ・ニューフロンティア』『英雄クロニクル』『おさわり探偵 小沢里奈』の4タイトルの企画書と、企画者へのインタビューがメインの本。

『まきば生活ひつじ村』のプロジェクト試算表・売上予測表も掲載されており、あまり世に出ない資料を見れるのが特徴。内部資料に興味ある人におすすめ。

バカ売れアプリ生活

スマートフォンのゲームアプリの開発やマネタイズのノウハウをまとめた本。

2017年出版とやや古いが、レビュー対策や企画のパターン、広告クリック率や収益の実数など今見ても興味深い内容がある。マインドセットなども含め、ほかの本とは毛色が違うのが面白い。

テンプレート式 ノベルゲームの作り方

ノベルゲームのシナリオライティングのハウツー。

『ゲームシナリオ入門』と比べると情報量は少なめだが、埋めるだけでシナリオが完成するテンプレートを提供することが重視されている。また、ノベルゲームに特化した本だけあって選択肢の設け方に触れられている。

ゲームシナリオ創作指南

ゲームシナリオ創作の解説書。ゲームジャンルの分類やアドベンチャーゲームの歴史。創作手法や創作論、著名タイトルの評論などが掲載されている。

創作手法はロバート・マッキーの『ストーリー』を簡略化したものという印象を受けた。創作論は抽象的なので人を選びそう。

コボルドのボードゲームデザイン

アナログゲームの開発・調整・出版について複数の開発者が書いたコラム集。出版は北米市場についてなので国内には当てはまらないかもしれないが、業界の内幕が伺えて興味深い。体系化された設計理論が書かれているわけではないので、開発・調整についてはヒント集くらいに受け取ろう。

コボルドのRPGデザイン

TRPGの開発・出版に関するエッセイ集。かなりニッチな本だが開発のプロセスやマインドセットなどは他分野でも参考になるかもしれない。TRPGのデザイナーやGMの人におすすめ。

ボードゲーム デザイナー ガイドブック

アナログゲームの開発と出版についての本。開発について深く掘り下げられているわけではないが、『コボルドのボードゲームデザイン』よりまとまりはある。

必要な要素や注意すべき点のリストがあるので、チェックリスト的な使い方が向いている。アナログゲームを作りたい人は一読しておいてもいいかも。

ボードゲームが人を変える、まちを変える

行政・教育機関・企業などによる(アナログ)シリアスゲームの活用事例の紹介と制作ガイド。地方自治体職員向けの出版社から出版されている。

制作について深く解説されてるわけではないが、注意すべき点と、普通のゲーム開発との違いが書かれており興味深い。伝えるべきポイントとそのために必要な体験・場面を考えるというのは通常のゲーム開発でも大事かもしれない。

ゲームテスト&QA

ゲームのデバッグについての本。デバッグ計画や具体的な手法というより業界ガイドに近く、チームで働く方法や心構えについても多く書かれている。

10年前のものなので古く感じるところもある。バグの分類やゲームジャンル別の注意点、バグレポートの記述方法などは知識0の状態だと役に立ちそうなので、一から知識を仕入れたいときに読んでみてもいいかもしれない。

ゲームをテストする

ゲームのデバッグについての本。『ゲームテスト&QA』と比べて、国内のゲームデバッグの手法や組織形態が簡潔にまとめられている。

概説書なので、これを読むことでデバッグをできるようになるわけではないが、デバッグ・ソフトウェアテストがどのようなものか知っておきたい人にはおすすめ。

ゼロからはじめるゲームテスト

ゲームのデバッグについての本。前半はよくあるバグの事例集。バグレポート、原因、発見法など。後半はテストの種類や手順の解説など。

国内のスマホゲームに特化しており、『ゲームをテストする』より具体的な記述が多い。自分がデバッグをする目的なら、本書が一番良いかもしれない。

モバイルゲーム運用プランナーのためのマスターデータ入門

スマホゲームのマスターデータに、どのような値を入力すべきか(IDの採番ルールなど)や入力・運用のノウハウ。DB設計に関しても少し書いてある。

元々は同人誌ということでページ数は少なく実本を購入すると割高感はあるが、関わるならとりあえず読んでおいても良い内容。Kindle Unlimitedの読み放題対象。

図解即戦力 モバイルゲーム開発がこれ1冊でしっかりわかる教科書

モバイルゲームの開発・運用を解説した本。設計・プロトタイプ・アルファ・ベータ・運用などのフェイズごとに必要な作業が列挙されている。

各作業の手法が詳しく載っているわけではなく、あくまでアウトラインをつかむ本。本書に加えて『ゲームプランナー入門』『ゲームデザインプロフェッショナル』を読むと「プランナー業務」のイメージがわくだろう。

ゲームクリエイターの仕事

企業におけるゲーム開発の流れや、業務内容を紹介する本。

『図解即戦力 モバイルゲーム開発がこれ1冊でしっかりわかる教科書』と比較すると、開発工程ではなく職種に紐づけられているのが特徴。ゲーム業界を志望する学生が、仕事の内容を知るにはいいかもしれない。

ゲーム制作 現場の新戦略

ゲームの企画・運営の解説とインタビュー集。ゲームデザイン・制作というよりビジネス寄りの本で、最上流の「企画」面の話が中心。

運用型ゲームも含めた企画・開発・プロモーション・運用の流れをざっくりと把握できる。具体的なエピソードが多いことが特徴。

ゲーム作りの発想法と企画書の作り方

7名のゲームデザイナー・シナリオライターが発想法・マインドセット・ノウハウ・企画書などを紹介する本。巻末にはインタビュー集も収録。

体系化されているわけではないが、色んな人の体験談を読みたい人にはおすすめ。

売れるゲームのUI/UX

スマホ・コンシューマ・アーケードゲームに求められるUI・UXの特徴をおさらいしたあと、モンスト、FF14、ガンストなど9つのゲームの工夫を解説した本。

工夫自体より没バージョンとの比較や内部での議論などプロセスが面白く感じたが、分量的には少なかった。各ゲームの全画面を採り上げて、変更履歴や議論などを全部まとめたら面白い本になりそう。

桜井政博のゲームについて思うこと

星のカービィ、大乱闘スマッシュブラザーズなどの桜井政博氏のエッセイ集。

様々なゲームの仕様書・企画書や、膨大なゲームの感想、ディレクターとしての日常などが掲載されており、ゲームファンとして楽しめる本。開発手法や仕事論などは桜井さんだから可能なことに思えるので、批判的な目線も必要かもしれない。

吉田の日々赤裸々。

ファイナルファンタジーXIVの吉田直樹氏のエッセイ集。FF14や吉田さんが好きな人におすすめ。

1巻に収録されているFF14にヘルプに入る前後を振り返った座談会と、2巻以降に見え隠れする長期運営特有の組織運営やスタッフのキャリア形成への問題意識が興味深かった。

新ゲームデザイン―TVゲーム制作のための発想法

ポケットモンスターの田尻智氏のゲーム評論・開発記。

様々な視点からゲームが分析されており、細かな仕様の分析によって設計意図を読み解いていくところが面白い。「テトリスのブロックが4つの理由」は納得感があった。

ゲームデザイン脳

天外魔境、俺の屍を越えてゆけなどの桝田省治氏のエッセイ。

テーマを見つけ、ゲームに落とし込む発想法や体験談が独特の語り口で書かれている。生活から見つけたテーマを膨らませていく実例が書かれた本は少ないので特徴的。

パックマンのゲーム学入門

パックマンの岩谷徹氏によるゲームデザイン解説本。

前半はビデオゲーム黎明期の歴史や著者の来歴、ゲームの面白さの要素、ゲームデザイナーとしてのマインドセットなど。後半は宮本茂氏など著名クリエイターとの対談集。パックマンのモンスターの色を4色にするための交渉や、開発終盤で速度を倍にした話などは面白かった。

おまけ:ゲーム関連以外のおすすめ本

はじめてのUXリサーチ

新しいサービスを開発したり、既存のサービスを改善するために、インタビュー・アンケート・テストなどを行う「UXリサーチ」のハウツー本。

非常に実践的な本で、国内・組織内でUXリサーチを始めてみることに主眼が置かれている。ケーススタディも多数掲載されており、いくつか読んだUXリサーチの本の中でもっとも使いやすそう。

インタフェースデザインの心理学

心理学をもとにした、UIデザインのTips集。

心理学・行動経済学・UXデザインの本に出てくる知見がまとまっており、効率よく摂取したい人におすすめの本。

ノンデザイナーズ・デザインブック

グラフィックデザイナー以外の人に向けて、基本的な原則を解説した本。近接・整列・反復・コントラストと、色や活字について。

この本を読むことで明らかにおかしい、ダサい、見づらいなどを排除できる。グラフィックやアートに関わる予定がなくとも、一読する価値がある。

ストーリー

脚本や物語創作の考え方やノウハウをまとめた本。脚本の構造や要素を紐解き、それぞれにおいて考えるべきことや、構成の戦略を網羅的、論理的に論じている。

シド・フィールドの『映画を書くためにあなたがしなくてはならないこと』の方が推薦されていることが多いが、こちらの方がゲームに活かしやすく感じた。会話に特化した『ダイアローグ』もおすすめ。

ネットワーク・エフェクト

利用者が増えるほど価値が高まるサービスが、初期の人が居ない状況から脱却したり、爆発的に成長した事例を紹介し、手法を解説した本。先行企業が参入障壁を築いたり、新興企業が参入障壁を破る手法も紹介されている。

立ち上げ時に人が少なく盛り上がらない「コールドスタート問題」は、ゲームの世界でもよく見られる。対戦ゲームなど、プレイヤー人口が重要なゲームに関わる人におすすめ。

パーソナリティを科学する

パーソナリティを5因子で捉えるモデルの一般向け解説。モデルの紹介、各因子の解説、各因子の役割や要因など。

人間の性格や個性について知りたいなら、まず読むべき。色々な人がいることを実感でき、多様なプレイヤー像を捉えたり、仕事や生活全般に役立てることができる。簡易診断つき。

更新履歴

・2021年1月19日
ゲームプランナー集中講座
ボードゲーム デザイナー ガイドブック

・2021年5月5日
FINAL FANTASY XV の人工知能
コボルドのRPGデザイン
組み立て×分解! ゲームデザイン
遠藤雅伸のゲームデザイン講義実況中継
ゲームプランとデザインの教科書

・2021年5月11日
僕たちのゲーム史
図解即戦力 モバイルゲーム開発がこれ1冊でしっかりわかる教科書

・2021年6月16日
ゲームデザイナーのための空間設計
GAME 2.0

・2021年8月29日
3Dゲームをおもしろくする技術
2Dゲームをおもしろくする技術
ゲームインターフェイスデザイン
ゲームテスト&QA

・2021年9月24日
レベルデザイナーになる本
ゲームシナリオ入門
ゲームクリエーターズバイブル
なぜ人はゲームにハマるのか
売れるゲームのUI/UX

・2021年10月11日
ゲームデザイナーの仕事
ネットワークゲームデザイナーズメソッド
桜井政博のゲームについて思うこと

・2021年11月25日
行動を変えるデザイン
はじめてのUXリサーチ
インタフェースデザインの心理学
ノンデザイナーズ・デザインブック
ストーリー
パーソナリティを科学する

・2021年12月7日
インディーゲーム・サバイバルガイド
ゲーム制作 現場の新戦略

・2022年5月2日
「気持ちいい」から考えるゲームアイデア講座
ニンテンドーDSが売れる理由
新ゲームデザイン―TVゲーム制作のための発想法

・2022年6月6日
アプリ&ゲームプランナー必読! レベルデザイン徹底指南書
ゲームクリエイターの仕事
ゲームの教科書
テンプレート式 ノベルゲームの作り方
ゲームシナリオ創作指南

・2022年6月24日
実践ゲームUIデザイン

・2022年12月26日
Dの食卓はなぜ伝説のゲームになったのか?
コンピュータゲームデザイン教本
自分だけのボードゲームを作ろう
ゲームをテストする
はじめて学ぶ ビデオゲームの心理学

・2023年6月28日
バカ売れアプリ生活
プロになるための ゲームプランニングの教科書 《基礎》
ゲームプランナーの新しい教科書
ゲーム作りの発想法と企画書の作り方

・2023年7月24日
プロフェッショナルゲームプランナー
パックマンのゲーム学入門

・2023年8月30日
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