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宝石商もきちんと知ろう。消費者事件の歴史と消費者法



最近ではYOUTUBEやオンラインサロン、clubhouseなどさまざまなメディアが登場したため、

過去の消費者事件を知らない世代をターゲットにした「昔あったのと似た手法」を手を変え品を変えさまざまな方法が散見されるようになりました。

私も各ジュエリー関連団体で消費者契約法や景品表示法、特定商取引法の講義やセミナーなども行ってきましたが、これらの法律が制定・改正を繰り返しているのも、「これまでの消費者被害」の積み重ね(新しい脱法手段が生まれるたびにそれに対応する形で法改正がされる)とも言えます。

私も生まれた1980年代には、宝石や貴金属を道具にした詐欺事件や消費者被害が多発した時代でもありました。

宝石やジュエリーをお仕事にしようという方は、このような歴史があったことを十分理解した上でビジネスを行っていく必要があると思いますので、改めて「何があったのか」をご紹介します。

消費者庁編『消費者問題の歴史』P17より(太字は筆者)

豊田商事事件問題化(1985)
豊田商事の悪質商法は、販売員が家を訪ね言葉巧みに金やプラチナなどを販売し、消費者には現物は引き渡さず「当社で預かり、運用益を支払いますよ。」と「預り証券」のみを渡すというものでした。現物を渡すつもりがないのに次々契約をさせました。結局、消費者には支払った代金も返らず、被害額が高額となりました。
この事件の特徴は、金とドルの交換を停止したドルショックによる金に対する関心の高まりを悪用した点、投機目的の勧誘である点、高齢者等を狙った訪問販売である点にあります。一つの地域で詐欺まがいの商法であると批判が高まると場所を移し、会社の名前を変え品を変え悪質商法を続け、被害が拡大しました。1985 年にマスコミが取り上げ大きな社会問題となり、豊田商事は事実上倒産しましたが、「預かっている」と言われていた金は偽物で被害の救済は困難でした。

金の高騰と、高齢者の独居など、最近の事情にも重なる部分があります。近年では押し買い被害に対応する形で特商法が改正されました。

霊感商法被害多発(1987)                      霊感商法とは、販売員が「手相を見ます」、「悩みはありませんか」と街頭で声を掛け、あたかも霊感があるように振る舞い、「先祖の祟(たた)りがある」と不安を煽(あお)り、「この商品を買えば先祖の祟りが消える」などと単なる壺や印鑑などを高額で購入させるものです。次々と購入し、財産のほとんどを失ってしまう人も現れ社会問題化しました。
1987 年には、通商産業省(現在の経済産業省)や国民生活センターが被害の手口を公表し注意喚起を行うなどして、未然防止や被害者の救済へと動き始めました。
近年は、開運商法として高額な祈とう料を要求したり、ブレスレット等の商品を売りつけたりする被害が起きています。

この分野もデート商法など常に新しい手法が出てきており、特商法もそれに対応するためにたびたび改正して新しい条文が増え続けています。

占いやスピリチュアルな部分は、「信じる」ことが重要な要素であるため、いきおい「根拠のない売り文句」になる危険性をはらんでいます。

また、それを信じている本人にとってはそのときは納得して買っていても、周囲の人間や家族からは「だまされている」と見える可能性もあります。

たしかに神秘的な要素や非科学的な要素は宝石の売り方としてすごく強い吸引力があることは否定できない部分ですが、使い方を間違うと消費者トラブルを招きやすい部分もあります。宝石販売に携わる皆さんは、消費者契約法や特定商取引法をきちんと把握して遵守することはもちろん、正直な商売をしていくという大原則に立ち返るようにしてください。

※ なお、パワーストーンや風水、タロットなどの占い一般について否定するものではありません。ちなみに筆者は個人的には10代の頃からライダー版タロットカードを愛用しています。


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