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【映画雑記】1本のレギュラーより1回の伝説(©江頭2:50)「キング・オブ・コメディ」。

 「キング・オブ・コメディ」は去年「ジョーカー」の元ネタとしてそこらじゅうでタイトルを聞いたのがきっかけで観た。
 
 俺としたことが、大好きなマーティン・スコセッシ監督ロバート・デ・ニーロ主演の「タクシードライバー」コンビにも関わらず、観ていなかった…。そして、なんで今まで観ていなかったんだと悔やまれるくらい(観られたからいいんですけど)ものすごく面白かった…。

 テレビのトークショーの人気司会者(演じるはアメリカの萩本欽一ことジェリー・ルイス)に思い入れすぎて、熱烈なファン、というよりイカれたストーカーみたいになってる男、パプキン(デ・ニーロ)。彼が映画のタイトル通りの男「コメディの帝王」になるためあらゆる手を尽くし、最終的には犯罪者となる物語です。しかし、そこにジメッとした感触は微塵もない。カラッとしていて、文字通り喜劇。とても意外だったのはストーリーの骨組みは「タクシードライバー」と殆ど同じということ。しかし、陽性の狂気といいますか、朗らかに大迷惑を巻き起こす様は、「タクシードライバー」の主人公、トラビスよりタチが悪いというか、「いるなぁこんな奴」、もしくは「忘れたい俺の過去」感がほんとにひどくて、実際に身近にいた奴、恥ずかしい俺の過去を嫌でも思い出しました。仕事もロクにしてなさそうだし、憧れの人と妄想の中で大声で会話し、同居している母親に「うるさい」と言われたり、好きになった女と無理やりしたデートで、「来週には価値が出る」と自分のサインを渡したりする様はほんと痛々しくてたまんない。しかし、この何者でもない男の世間とのすれ違いっぷりにイライラしつつだんだん面白くなってきてしまって、最後はなぜかそこそこ感動してしまうという不思議。パプキンと共犯になるストーカー女も、ニューヨークドールズのデヴィッド・ヨハンセンみたいな面構えでなかなかよかった。

そういえば、パプキンがコントのデモテープを宅録してるときに、母親に「何やってんの!うるさい!」って怒鳴られて「いま録音してんだよ!」って怒るシーンは最高だった。筋肉少女帯の「パンクでポン」だし、中学2年生の頃に友達と嘘っぱちのオールナイトニッポンをラジカセで録音したのを思い出して甘酸っぱい気分になった。

マリリン・マンソンの歌を思い出した。

"We are nobodies , wanna be somebodies."

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