見出し画像

【映画雑記】「アングスト/不安」。体調を整えてから観ましょうね。

 ぼんやりと日常を過ごしている俺を、なかなかに鬱々としたダウナーの渦に沈めてくれる素敵な映画を観た。

「アングスト/不安」

1983年公開のオーストリア映画。

 実在の殺人鬼、ヴェルナー・クニーシェックが仮釈中に起こしたアルトレイター一家惨殺事件をベースにしたサスペンス/ホラー。殺人鬼の内面に肉迫するとても危うい映画。

 全編、どうやって撮ったんだろう?という目をみはるカメラワークが続出。自撮り棒によるセルフィー動画や、ドローンを使って撮影した映像が当たり前のようになってきた昨今。それと同じような効果を1983年にどうやって生み出したのだろう?という驚きの連続でした。(っていうか、まぁ、ネットの海でメイキング写真を見つけてしまいましたが、そうだよなぁ、そうするしかねぇよなぁ、という感じでやっぱり驚きました)。

 このカメラワークと、ピカレスク的な要素を一切排除した冷徹な視点がこの映画の恐怖と異常性を際立たせます。また、「殺したいから殺す」という単純極まりない欲求や、殺人という行為が性的な欲求と結びついている描写も時代を考えるとほんと尖りすぎ!(殺した娘っ子の血塗れの死体を嬲る、その後ズボンをおろしたまま死体をだいて寝落ち、他の死体の処理をしながら妄想で絶頂に達し、射精するようなビクビクする動きを見せる…何だこれは。

 癇に障るサウンドトラックはクラウトロックの雄、クラウス・シュルツェ。素晴らしいです。

 視覚的にもメンタル的にもかなり負荷がかかります。観た後はしばらく動けなくなりますので、体調を整えてからご覧ください。

 あと、昨年の劇場公開時、公式Twitterがやたらと「犬は無事です」というネタを投下していたが、モデルとなったクニーシェックが猫は殺したのに犬は殺せなかったという事実に基づいた描写であることを知り、2度ビックリいたしましたとさ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?