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【交換日記】夏の合図

7月21日

吉祥寺のブックターミナルで開かれたイベント「日記・エッセイZINE市」に、こどもと一緒に出店してきた。
ブックターミナルでは、毎週末にいろいろなテーマのZINEを販売するイベントが開催されている。6月には「ワッペンとステッカー市」にも出店した。
今回も、文学フリマで頒布したものと同じ「おとな交換日記」の1と2、わたしの旅行エッセイ「はは、はしる」などを持っていった。

出店者はぜんぶで12組、小規模だけれどみなさん個性あふれるZINEを展開していて、楽しいイベントだった。

TwitterやInstagramでブースの様子をアップしていたら、たまたま暇だったという庶民くんがふらりと来てくれた。
庶民くんは、大学のゼミの後輩で、元テキストサイトの管理人というおもしろい人だ。あと歌がうまい。せっかく吉祥寺まで来てくれたので、帰りに一杯どうかと誘い、こどもと3人で駅前の小さな居酒屋に入った。

庶民くんと会うのは半年ぶりくらい。前回は、ツイッターでバズっていたエジプト料理店に、庶民くんのDJ関係の知り合いである伝(でん)さんと3人で行った。伝さんは、わたしの夫ともDJ関係で知り合いで、イベントでいつもご一緒しているらしいのだが、庶民くんとわたしの夫は会ったことがない。DJ界のことはよくわからないが、少しのジャンルの違いがあるらしい。
その時は初めてのメンバーだったが、皆ぼんやりと似た業界で仕事をしているので話は弾んだ。はず。
というのも、その日わたしはなぜか飲み会をトリプルブッキングしてしまい、昼からしゃべり続け、飲み続けていたので、開始からフルスロットルで駆け抜けすぎて、あまり会話の内容を覚えていないのだ。

そんな感じだったので、庶民くんとちゃんと話したのは久しぶりだった。というか、サシに近い状況で飲むなんて初めてだったかもしれない。
子育ての話に始まり、「田舎にはぜったいに帰りたくない」「親が人間だと気づいたのは何歳の時だったか」「酒がないとディズニーリゾートは無理」「見た目若いと言われてきたタイプの人間の老化について」など、短い時間だったが楽しい話(?)ができた。

こどものipadの電池が切れ、親たちの話につきあうのも飽きてしまったようだったので、サッと解散。
7時過ぎに自宅近くのバス停に到着すると、同じバスに乗っていた恰幅の良いおじさんが、バスを降りてそのままの勢いで道に倒れ込んでしまった。
ジャージを着た学生ふうの男性が戸惑いながらも声をかけ、起こそうとするが、まったく動かないようだ。
こどもが一緒だったので迷ったが、そのままだと車道が近くてあぶないので、声をかけてみた。
「大丈夫ですか?」と言うと、横向きに寝転がったままモゾモゾと動くおじさん。なにか言っている。顔色はそんなに悪くなく、寝ているような感じだ。
「どうしたの?酔っぱらっちゃった?」と大きめの声で聞いてみたら、「ウン…」と返事が返ってきた。どうやら酔っぱらって、気力でバスに乗ったが、最寄りのバス停に着いたところで力尽きたようだった。
「警察呼ぼうか?帰れる?」と話しながら、持っていたお茶を渡していると、バス停の前のマンションから男性と小学校高学年くらいの女の子が出てきた。マンションの住人の親子だとのことで、心配になって助けにきてくれたのだ。
男性はおじさんを見て、「酔っちゃったか~、あらおしゃれなシャツだね、おじさん」と言いながら、さきほどの学生と協力しててきぱきとおじさんを安全なところまで運んだ。
たしかに、おじさんは白地にカラフルなプリントがされているシャツを着ていて、首から下げているケータイのストラップも白黒のチェックで、おしゃれだなあ、と言われて初めて気づいた。
男性が、「あとは僕がみます」と言ってくれたので、わたしたちはその場から離れて帰宅した。

こどもは、おじさんが道に倒れたことに少しびっくりしていたようで、ずっとわたしの後ろから見守っていたが、知らない人を助けるという出来事にちょっと感動したようで、「おじさん帰れるといいね、いいことをしたね」と言っていた。

わたしの住んでいる地域のひとたちは、なんとなく酔っ払いや病人に優しい気がする。
わたしも、若い時から何度かいろんな原因で道にうずくまったり寝ていたりしたことがあるが、新宿や渋谷では完全にスルーされるのが普通だった。
最寄り駅近くでは、夜中に駅や道で寝ていたりすると(寝るなよ)、知らない人が水をくれたりする。家に帰ってカバンをあけたら、アナ雪のチョコエッグが入っていたこともある。よくわからないけど、たぶん優しい。規模のでかいご近所さんのようなものなのだろうか。

7月22日

今日からこどもは夏休み。
ふだんより1時間遅く起きて、学童へ送り出す。授業のある日より荷物が軽くて嬉しそうだった。

実は、今日はわたしも夏休み休暇を取得してあった。
とても楽しみな、でも見たくないような、とにかく心臓がざわざわすることが確定しているコンサートを観に行くからだ。
SexyZone 改め timeleszの初めてのコンサートツアー、横浜公演。会場は横浜アリーナ。開演は夕方だが、横浜中華街にあるお店のランチを予約していたので、すぐ出かけなければいけない。
アイドルコンサート3種の神器、うちわ・ペンライト・双眼鏡を準備しようとしたが、お気に入りの双眼鏡が見当たらない。
前に使ったのはいつだったっけ?と焦ったが、思い出した。先月、夫が何かのライブに行くときに貸して、まだ返ってきていなかったはず。
あわてて夫にLINEするも、「返した」「返してもらってない」と不毛な戦いが始まりそうだったので、あきらめてサブの双眼鏡をバッグに放り込んで家を出た。倍率は少し低いし担当のメンバーカラーと違う色だが、まあしょうがない。

外に出ると、完全に猛暑だった。猛という字がぴったりだ。
バス停まで歩いただけで首筋から汗が噴き出してくる。このままじゃコンサートが始まるまでにタオルがびしゃびしゃになっちゃうよ、と思いながら、ツアーグッズのタオルで汗をふいた。

横浜中華街に着いたのは11時。
目的のカフェは、中華街の少し落ち着いたエリアにある「悟空茶荘」。
中国茶がおいしくて、内装もほどよい中国っぽさが好きなので何度か通っている。いつも予約でいっぱいの、人気のお店だ。
胡麻の冷やし担担麺と、「敦煌パフェ」を食べて、2000円くらいするお茶をがぶがぶ飲む。クーラーが効いていてしあわせだ。
写真を撮って、ずっとハマっている中国系のソシャゲ仲間に送る。ゲームに「敦煌」が出てくるのでみんなおもしろがってくれた。
お店を出て、中華街をぶらぶらしてから新横浜に向かおうと思ったのだが、途中でお腹が痛くなってゲームセンターのトイレに駆け込んだ。お茶を飲みすぎたか…。

新横浜駅に着き、『吸血鬼すぐ死ぬ』にハマっているこどもにあとで見せようと「シンヨコ」っぽい写真を撮っていると、何やら改札や窓口が騒がしい。東海道新幹線が事故で止まっていたのだ。
今まさにコンサートのために新幹線に乗っている人もいただろうに、たいへんなことだ。
その影響か、駅近くのカフェなどは人で埋まっていたので、横浜アリーナまで歩きつつ、時間をつぶせる場所を探す。
居酒屋に入ってしまおうかとも思ったが、思い直してコワーキングスペースに入って仕事をすることにした。えらい。でも、ここも冷房がキンキンに効いていてお腹が痛くなった。今日は胃腸が暴れがちだ。

開演1時間前に、チケットを譲ってくれる方と合流して会場入り。
座席はスタンドの後方だけれど、6列目なのでたぶんトロッコが目の前を通るであろう場所だ。緊張してきた。
「一緒に来るはずだった子がメンタル病んじゃってこれなくなったので助かりました~!」などという話を和やかに(?)聞いていると、もう一方の隣の席の人がやってきたのだけど…

そのあとは、とにかく必死だった。
コンサートはすばらしかった。3人の決意や思いも見えたし、演出はレベルアップしていたし、驚きのゲストもいた。
すぐそばをトロッコが通った。全員、わたしと反対側を向いていたのが少し残念だったけど、担当が目の前に存在するという事実に興奮した。

それで、わたしが何に必死だったのかと言うと、”におい”対策である。
左隣の女性が、絶望するほど苦手なにおいを放っていたのだ。
マスクを2重にして、ハンカチで常に顔を覆いながらコンサートを見た。それでも貫通してくるにおい。コンサートが進むにつれ興奮して右手をふるう彼女。さらに強くなるにおい…すごく、つらかった。
傍から見たらわたしはさぞかし怪しく見えただろう。

夏のコンサートはいろんな意味であぶない。
最後の曲が終わった瞬間に、同行者にお礼を言ってアリーナを飛び出し、
混雑する東海道新幹線に乗る前にしっかり汗をふいた。

「り、さんが止めている間の話」

り、さんが交換日記を止めていたのは5月から6月で、その時期はわたしもなぜか変に忙しく、毎日あたまがぐるぐるしていた。
そんな中で、文学フリマ東京38、文学フリマ岩手9、ZINEフェス浅草、ブックターミナルマーケット「ワッペン・ステッカー市」、それから中野でフリーマーケットにも出た。出すぎじゃないか?

なんだか、今年はアウトプット、というか、「外に出す」ことが多めの年になっている気がする。
今まで自分のなかにため込んできたものを、ちぎってこねてなんとか形にしてお出ししていくような…。
いろいろなものをためこみすぎて去年メンタルを大きめに崩したので、少し発散して楽しく日々を送れるといいな。


次回のお題は「夏型ハイテンション病について」
高校時代に生み出した?我々のビョーキはいまどうなっているのか?
ぜひお願いします。

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