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「頭では分かってるけど……」はなぜ起きるのか

「こうしたほうがいいって頭では分かってるけど、感情がついてこない」

このような自己矛盾に苦しむことは、よくある。

解離している人の場合、このような葛藤が起こるのには人格(パーツ)が関わっている可能性がある。

ジェニーナ・フィッシャー著『トラウマによる解離からの回復』にあったエピソードをもとに考察してみよう。

より詳しく知りたい方は、(分厚いが)ぜひ本書のほうをご一読いただきたい。価値ある一冊だ。


人格たちはしばしば、過去の記憶の中に取り残される。

現在への記憶の流入(いわゆるフラッシュバック)はあまりに自然に起きて、気づかないうちに過去にとらわれていることも多い。

「自分(たち)は今、過去にとらわれたところから現在を見ているのではないか」と気づくことができれば打破する糸口になるのだが、渦中にいるとこれがなかなか難しいのである。

『トラウマによる解離からの回復』にも、結婚し親とは離れて暮らしているのに、パーツのひとりが実家で虐待を受けた記憶を濃く保持したままだったので、見た目も雰囲気も違う現在住む家も「家にいるのは危険だ」と感じてくつろげない人が出ていた。


冷静に見れば、その人は結婚しており、親とは離れて暮らしており、昔住んでいた家と今住んでいる家は違う場所だ。

しかし幼いパーツには、理詰めで説いても理解してもらえないことがある。だって幼いからだ。

かつては自分たちの身を守るために、「家とは危険な場所だ」と思っていることが役立ったのだろう。だからこそその思い込みを現在にいたるまで続けている。

1回で理解してもらうことが難しいのなら、何度も繰り返し伝え続けることが大事になる。

今は昔とは違う場所に住んでいるんだよ、とか、ここは安全なんだよ、とか。

イメージワークも有効に働くことがあるらしい。想像の中で、幼いパーツに現在の安全な家の中を案内してあげたりするのだ。


一度で伝われば楽だし苛立ちも少ないわけだが、過去の印象を保持し続けているパーツも、現在よりよい方へ行動しようとしているパーツも、共通の目的である「きつい環境を生き延びる」ために生まれてきたのだろうことを心の隅に留めておくのは大事だと思う。
何かの方法でそれが役にたつと思っているから、危機感を持ち続けたり、行動しようとしたりしているのだ。


文責;直也

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