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あの出来事の真相は、わかるかもしれないし、わからないかもしれない。
だから、書いた。
好奇心の塊である私が知った真相とは?
さあ、みなさんも真相エッセイを楽しんでください。

これは「創作大賞2023」の応募作です。
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 東日本大震災の起きた日からしばらくたったある日。東京の下町を歩いていた私は、ある家の軒先で豊かに実った柿の木を見つけた。それはそれで美味しそうだったが、私の目はその木の前にあった立て看板に吸い寄せられた。

 それには、この柿は放射能で汚染されているので食べないで、というようなことが書いてあったのだ。

 私は驚いた。そこは、あの原子力発電所に近いせいで放射線量が高い場所、つまりホットスポットではない、遠く離れた東京にあるのだから。また、柿に放射性物質が蓄積されているという話も知らない。私は区役所の広報新聞をきちんと読んでいるが、そういう話はなかったと思う。では、その立て看板を書いた人は、一体何を思って、そういう言葉を使ったのだろう。実際に、その人はその柿に含まれる放射性物質について調べたのだろうか。

 そして、別のことに気がついた。それは、柿の木の持ち主が柿の盗難を防ぐために、放射能のことを看板に書いたのでは? ということだ。放射能に汚染された柿なら他人は盗むまい。持ち主はそう考えたのではないか。真相はわからないが。

 それから数日後。再びあの場所を通ると、立て札はなくなっていた。


大川光夫です。スキを押してくださった方々、フォロワーになってくれたみなさん、感謝します。もちろん、読んでくださる皆さんにも。