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日本を愛する辛さ 愛国者学園物語27

 ジェフはため息をついた。自分たちが愛する日本が変貌してしまった。

寿司の味は昔から変わらないけれども、政治や社会は大きく姿を変えた。平成の次の時代、日本社会では貧富の差がひどくなり、日本人たちは昔から絶やさなかった精神的余裕を失った。だから、他者へのいたわりや、社会の秩序を守ろうとする真面目さなどが薄れてしまった。

 それだけではない。安い労働力として呼び寄せた外国人に対して酷い言動をする、あるいは文字通り攻撃する日本人が増えた。

日本人はあれほど勉強するのに、外国人や外国文化との接し方をほとんど学ぶ機会がなく、それが、外国人とのトラブルの一因になっていた。英語教育も文法中心で、会話や海外文化を学ぶことは少なかった。特に中高年層はそうだ。古い教育を受け価値観や人権意識が古い彼らの中には、外国人をあからさまに侮辱するものがいて、それがこの問題を厳しいものにしていた。


 しかも、時々ではあるが国会議員や財界の著名人がそのような失言を繰り返すことがあり、それが、平成よりも厳しく評価される時代にはなった。しかし、おかしなことを言う国会議員たちは、ほとんど罰せられることはなかった。その親分たる派閥の長たちが失言議員に恩を売るために見逃したからである。

 そして、それら衝突や失言が原因で、海外ではその報復と称する、日本人を狙った犯罪が増えた。親日的とされた東南アジア某国で起きた凄惨な報復事件は、日本に深い衝撃を与えたに止まらなかった。

 それどころか、逆に、日本の攻撃的愛国心を燃え上がり、特定の国の人間を攻撃せよという有名人たちまで出現し、その主張が拍手喝采を受けたことは、日ごろ政治に関心がない人々にまで深い衝撃を与えた。


 平成の次の時代ほど、世界が日本を厳しく批判した時代はなかった。国際社会は、第二次世界大戦の責任論だけでなく、日本文化がグローバルスタンダードから見て、特異的だとする視点で日本をバッシングした。

 集団社会の、個人の幸せよりも集団の利益を重視する態度。上司への過度の配慮と服従。商業捕鯨への疑問に、時折起こるナチス賛美まがいの言動。ゴーン逮捕に見られたような、長期間の拘留や冤罪のある司法制度と、死刑制度の存続。LGBTへの侮辱に、社会のあらゆるところにあるいじめ、子供の虐待、危険な組体操を強要することなどなど。

 それを読むのも嫌になるほど、ありとあらゆる日本の社会問題が厳しく指摘された。しかし、大多数の日本人が考えていたように、それらは反日勢力の攻撃ではなく、国際社会で生きる人々の疑問がそのような形で結晶したものだった。


 ジェフをはじめとするジャーナリストたちの粘り強い取材により、反日勢力や敵対国家からの行動は考えらえていたよりも少なかったことも明らかになった。だが、日本人至上主義者たちはその結果を信じず、日本への非難は、アジアのいくつかの国が引き起こしたものだと主張したものの、それを裏付ける明白な根拠はなかった。

 そして、日本を非難する言論に腹を立てた日本人至上主義者たちは、それら非難に対し自分たちの意見を主張せず無視した。ところが、その対応に、世界の人々は、日本人は議論しない、重要な問題を説明しないなどと言って、怒りと失望を見せた。

続く 


大川光夫です。スキを押してくださった方々、フォロワーになってくれたみなさん、感謝します。もちろん、読んでくださる皆さんにも。