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 私が住んでいるアパートの通路に、「中南海」というタバコの箱が落ちていた。私はタバコを吸わないが、それが中国のタバコであることを知っている。だから思った。これを通路に捨てたのはどこの中国人だろう、と。それが捨てられていた階にも中国人は住んでいるから、その誰かが捨てたに違いない。


 少し時間が経ってから、私は考えた。あのポイ捨ての件で、確実に言えることは何か、ということを。それは、通路に「中南海」タバコの箱が落ちていた、ということだけだ。それを中国人が捨てたとか、このアパートの他の住人が捨てたという証拠は全くない。


 もしかしたら、日本人があれを吸っていたのかもしれないし、何かの用があってこのアパートにやって来た人物があれを捨てたのかもしれない。あるいは、極端なことを言えば、日本人と中国人の間にいさかいを起こそうとして、誰かが捨てたのかもしれない。


 あの件から確実に言えることはなにか。そして、不確実な推理はなにか。私たちは怒りに駆られて、後者を膨らませてはいないだろうか。私は中国におもねっているのではない。不確実な推理に囚われず、真相を追求したい、それだけだ。

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あの出来事の真相は、わかるかもしれないし、わからないかもしれない。だから、書いた。
好奇心の塊である私が知った真相とは?
さあ、みなさんも真相エッセイを楽しんでください。

これは「創作大賞2023」の応募作です。
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大川光夫です。スキを押してくださった方々、フォロワーになってくれたみなさん、感謝します。もちろん、読んでくださる皆さんにも。