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毛を抜きながら笑って泣いた話

あなたにとって特別とは何ですか。

春は別れの季節。

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私は筋ジストロフィー症という病気で車椅子生活をしている27歳だ。
何をするのも、どこへ行くにも介助者が居なければ叶えることが出来ない。

夜中に鼻が痒くて目が覚めても、伸びた鼻毛を切るのも、放置していると仙人のように伸びる私の乳毛の処理もだ。

とは言えど、私は毎日ヘルパーさんに入ってもらい在宅生活をしながら今まで仕事もしてきた。風呂も毎日入り、好きなご飯も作ってもらえる。本当にヘルパーさんには感謝してもし切れない。

わがままパッションボーイズモード全開だったあの頃の私は、会社の給料の殆どを旅行に費やし、年の近いヘルパーさんと好きなアーティストのライブやゲームのオフ会の為に、毎月のように出かけていた。(介助者の旅費等は自己負担)

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旅先を散策し、ランダムに決めて入った飯屋で美味い食べ物に出会うと、物凄く記憶に残る。青物横丁を散策して入ったお店のクラムチャウダーは本当に美味かったな。何よりお店のおばさんが物凄く優しかった。あの店にもう一度行きたい。

そんなことを思い出しているだけで旅に出たくなる。音楽が恋しい。自分にとってライブハウスが対戦ゲーム以外で唯一の居場所だったからだ。

現在私は、コロナの影響で県をまたいだ移動だけではなく、自宅から出かけることすら制限がある。それは罹患したらワンコンボで10割ポクポクチンという事と、利用者がコロナになった場合、濃厚接触者に当たるヘルパー事業所も営業停止になってしまうからだ。そうなるとド田舎の福祉ネットワークは全く機能しなくなってしまう。

そのために今は我慢を重ねるしかないのだ。ワクチンを摂取するまで大好きなラーメン屋やライブハウスにも行けそうにない。とても悔しいが。

なんて話が書きたくて記事を書き始めた訳ではない。今日は私にとっての"大切について"書いていこうと思う。あまりゲームと関係はないので私に興味がある人だけ読んでほしい。

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私の旅行に仕事で同行しているだけのあなたが、私の"好き"に触れ、どっぷり沼にハマる様子を観るのがいつも楽しかった。

300円

基本旅行は、現地のヘルパー事業所とセッションで介助をする予定以外はノープランだった。仙台、東京、群馬、埼玉 色んな所の色んなヘルパー事業所と契約して、入浴や就寝介助をお手伝いしてもらってきた。

バリアフリー対応の部屋がある東横インにいつも泊まり、辺りをぶらついて飯屋に入るのがいつものパターンだった。孤独のグルメの見すぎだったと思う。

今日はとある旅行の話をしよう。

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2017年の暑い7月の事
私は仙台までMOROHAのワンマンライブを見に来ていた。
BOWLINE2017で初めてMOROHAのライブを見て、今回が初めてのワンマンだった。

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駅でずんだシェイクを飲み、唐突に伸びた髪を切りたくなって近くの美容院を予約して短くした。当時、私はACIDMAN大木伸夫に憧れていた。CA4LAのハットが似合う男になりたかったのだ。

知らない土地の美容師さんに近くの飯屋について聞き込みをするとその土地を知る事ができて楽しかった。

髪を切り終えて店を出た。外は蒸し暑かった。
ライブ前に腹ごしらえをする事になり、国分町を散策して牛カツ屋に入った。私はおろしポン酢牛カツ定食を選ぶことにした。

見て!!!ビール安いよ!!!

生ビールが中ジョッキ300円。外は暑い。確かにキンキンに冷えた生ビールを喉へ流し込みたかった。だが、私は酒を飲むとすぐお腹を壊す。そのために普段からお酒は控えていた。

旅行中、飲み過ぎでトイレへ駆け込んだ苦い経験もある。
私は烏龍茶を注文した。烏龍茶にして正解だった。実際に胃がモタれる事なく食べ終えることができた。

しかし、目の前の男は年下の男の金で美味そうにビールを飲んでいた。屈託のない笑顔にきれそうだった。

旅行の際、トイレと言い喫煙所へ消えるようなヘルパーは彼くらいだ。いい意味で遠慮がない彼だからこそ、私は色んな所へ連れて行きたかったのだと思う。

MOROHAのワンマンは最高だった。狭く小ぢんまりとした鬼密な空間に白いテープで四角く囲まれている場所が最全席左側に用意されていた。

事前に車椅子で見に行くことを会場に伝えていたら、お店側が私に配慮してくれていたのだ。普段ライブハウス後方で、ファンの背中を見ながら演奏や声に耳を傾けていた私にとって、この日のライブのことを一生忘れない思い出になった。

MOROHA、ありがとう。Tiki-Poto、本当にありがとう。


大切

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出会いには別れが付き物だ。

それは大切な人との永遠の別れだったり
何者でもない私を愛してくれたあの子との失恋だったり

この文書に出てくる彼もその一人だ。元気に生きてるが。

彼はあのライブを見に行った1年後結婚した。春には子どもが産まれると言っていた。急すぎてびっくりしたがとても嬉しかった。めでたい。そして、彼が春に異動で違う仕事をすることも決まっていた。

どっか気づいていた。
きっとこの楽しい旅もいつか終わりが来るんだろうなと。

だから最後にもう一回ライブに行くことにした。

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3月の仙台は死ぬほど寒かった。物販に並ぶ列も風が強すぎて死ぬかと思った。誰だよ陽が出て暖かいからホッカイロ置いていこうとか言い出したやつ。

開演まで仙台GIGSの横にある利休で焼肉を食べた。
~~~~やっぱビールは美味い。

言うまでもなくライブは最高だった。
アジカンは俺の青春。

良かった良かったと喋りながら帰って寝た。

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なんで毎回俺だけレックウザ捕まえられないんだよ。


特別とは

人生には出会いの数だけ別れがある。
だからこそ、人生の一瞬たる出会いや思い出を大切にして生きていきたいと思う。

彼が去ってから人に肩入れすることが怖くなった。
どうせいつか別れが来るからだ。
友達でもなく、ヘルパーという事を忘れてはいけないと。

それでも私は人との別れには慣れることができなくて、
こうしてまた誰かとの別れを経験する度に思い出すのでしょう。

そんな私にとっての特別とは
友達じゃないあなたとの思い出です。




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