SNSで花開く若手お笑い芸人|”板橋ハウス”で大注目!めぞん・吉野が語るファンコミュニケーションのコツ
とりあえず動画を始めてみよう、から生まれた「板橋ハウス」
──まず、そもそもなぜ「板橋ハウス」が生まれたのか。その経緯についてあらためてお聞かせください。
僕は現在、吉本興業に所属して6年目の芸人で、同期の3人組(吉野、竹内、住岡)でルームシェアを始めたのは2020年の10月からでした。3ヶ月くらいは普通に生活していましたが、日常を何気なく過ごす中でも「これ動画にしたら良かったのに」と思う場面が結構ありまして。
毎日、竹内の部屋で夜遅くまで喋っていて、たまに竹内に何か面白いこと言わせて……。こんなことしながらずっと過ごしていくうちに、「とりあえず動画投稿してみようか」という雰囲気になりました。そこでまずはやってみようかなと思ったのがきっかけですね。
あとは、芸人活動を応援してくれる方にも喜んでもらいたいという気持ちもありました。SNSであれば、大阪や九州など遠方からでも応援できるので、動画をやらない理由はないなと思ったんです。
──TikTokを始めて、3~4本目くらいの動画でいきなりバズりましたよね。
そうなんですよ。最初は3人で考えついた企画をもとに動画投稿していたんですが、まさか「コンビニに行く誘いを絶対に断らない男」という、ルームシェアでふざけてやっていたネタがバズるとは想像もつきませんでした。
そこからほぼ毎日投稿するのを続けていくうちに、3~4万人くらいのフォロワー数になって、調子も上がってきました。そんな矢先に例の「アカウント凍結事件」が起きてしまって。
──間違えて吉野さんが誤操作したのが原因だったんですよね。
僕がTikTokのアカウントを管理しているんですが、誤って生年月日をその日で打ってしまい…。それが原因で垢BANされてしまったんですよ。かなり焦ったので、何度も運営に問い合わせして事なきを得たんですけど。でも、その事件がYouTubeもやるきっかけになったし、今振り返れば棚から牡丹餅だったのかもしれません。
SNSごとに「板橋ハウス」と「めぞん」の活動を分けて発信している
──TikTokとYouTubeそれぞれでファン層の違いはあると思いますが、発信するコンテンツで工夫していることはありますか。
特にこれといって考えていることはないんですよね。だいたい動画の撮影は20分くらいして、その後面白そうなところを5~10分くらいにカットしてYouTubeにアップしています。一方、 TikTokは正直何がバズるか読めないので、半ば勘で決めているようなところもあります。
好評な企画のひとつである「コンビニ飯」は、割と成り行きに任せていますね。毎回決めたお題に沿って深夜にコンビニへ行き、商品を買ってくるわけですが、最近はどんなものでも視聴者の方が面白がってくるようになった。もはや企画を考えていると言っても、フリートークの中で自然と面白いものが生まれているような感覚です。
──吉野さんはTwitterやInstagramを初め、配信アプリ等多くのSNSやツールを活用されています。SNSを通じたファンとのコミュニケーションをする中で大切にしていることは何ですか。
前提として、板橋ハウスの活動とお笑いコンビ「めぞん」のそれとは認識を分けて考えています。板橋ハウスは僕らが芸人だということを知らずに見ている人もいるわけですし。動画では漫才やお笑い芸人のことはあまり触れないように、純粋に楽しさや面白さを届けることを意識しています。
他方、SNSでは自分の場合、Twitterは芸人活動のことだけを発信しています。“ネットにいる面白い人”を演じていて、本アカウントは顔出しせずに文字だけでツイートしているんですよ。そのほか、サブアカウントであれこれと気づいたことを呟いていますが、自分が中の人を演じる“botアカウント”と呼んでいるものが5つくらいありまして。「今日の動きをツイートするbot」、「今日は帰るとツイートするbot」、「赤ちゃんのいいところをツイートするbot」など、思いついたことをなんでもSNSに投稿しています。
2ちゃんねるのようなネットカルチャーに憧れてきた
──本当にSNSを巧みに使いこなしていますね。
はい、もう生活のルーティンになっています。僕って、承認欲求が強すぎるんですよ。幼い頃から2ちゃんねるの影響でネットカルチャーに憧れを抱いてきたので、その世界観がすごく好きなんですよね。そういう意味では、自分自身を「異常なネット弁慶」だとも思っています。
例えば、板橋ハウスから僕らに興味を持ってくれて、お笑いライブを観に来てくれた方が、お目当てである僕らの出番が終わったら、最後までライブを楽しまずに帰ってしまったことがありました。もちろん、悪気があったわけでもなく、単純にルールを知らないだけだと思いましたが、ちょっとでも改善したいなと感じたときはnoteやTwitterで発信するようにしています。
──昨今は芸人さんでもSNSを積極的に使う人が増えてきましたが、SNSは炎上のリスクとも隣り合わせです。そういった中で発信を続けるモチベーションや面白さはどのようなところにありますか。
芸人さんの中にはSNSで発信することに苦手意識を持つ人も多いと思いますが、僕はそもそもモチベーションを必要としていないんですよ。SNSが大好きすぎて、SNSで息しているような感覚で、日頃生活しているからです。
SNSは炎上のリスクと隣り合わせと言われています。確かにそうで、先日LINEを使って無料のオープンチャットを立ち上げて、遊び心で「吉野以外に発言を禁止(喋った場合は退会してもらう)」という企画をやってみたんです。そしたら、『調子に乗るな』というコメントがきて、思いの外、盛り上がってしまって。遂には通報される始末にまで発展したんです。それでも、2ちゃんねるに憧れを持っていた自分にとって、予想外のトラブルやちょっとした炎上は気にしないというか、ネットカルチャーの楽しみのひとつだと捉えていたので、物怖じせずにいられたんですよ。
SNSでは有名でもお笑い芸人としては半人前。名実ともに飛躍したい
──最近ではTikTokやYouTubeを活用し”バズる”ことで知名度を上げる若手も増えてきました。SNSの活用について、吉野さんが感じる近年の業界内の変化などあればお聞かせください。
最近思うのは、芸人として足りてないことだらけだということ。SNSを駆使して認知度を上げても、漫才を観に来てくれるわけではなく、やはり実力が伴わなければ、この先難しいなと感じています。TikTokやYouTubeで有名になって人気が出ても、芸人としての力をつけたわけではないので、「もっと頑張らなくちゃ」という思いが強いですね。先輩後輩のやりとりに関しても、期待するような100点の返しができる実力も自信もない状態なので、名実ともにレベルアップしないといけないと感じています。
そんな中、僕自身はお笑いでのし上がるとか、野望みたいには正直あまりなく、初めはサークル活動くらいのノリで芸人活動をスタートさせたんですよ。自分の好きな漫画とかアニメの漫才だけしていればいいや。最初はそんな感じでした。
でもSNSで有名になってきて、僕の活躍を期待してくる人が増えてきたのもあり、自分がやりたいことだけやってもダメなんだなと。最近はそう思うようになってきています。もちろん、板橋ハウスをやる前は月に5本程度のライブ出演だったのが、今では月に30本くらいライブに呼んでもらう機会が増えたのも事実です。たくさん場数を踏ませてもらうようになったので、お笑いを続けるモチベーションにはなっていますね。
──個人的に注目されている若手の方などいらっしゃればお伺いできますと幸いです。
SNSの使い方がうまいのは吉本後輩のお笑いコンビ「10億円」の山内ですね。
ネットで誰でも発信できるようになり、おもしろおかしく笑いを提供するハードルは下がっていますが、「ネットとリアルは土壌が違うこと」は心得ていた方がいいと思っています。
表現が難しいのですが、ネットって、あまりにおもしろすぎると、評価されないんですよ。見る人が楽しいと思えるか、こんなのやりたかったと共感できるかが、ネットに求められていて、そこの温度感をしっかりと把握することが、SNSに取り組む上で大事なことなんじゃないかと考えています。
──ありがとうございます。それでは最後に吉野さん自身の今後の展望や目標などをお聞かせください。
まず、板橋ハウスの方ですが、ネットはファンが離れやすいのでこのまま現状維持だと良くないと思っています。これからも粛々と、楽しくて面白いコンテンツを出せるように努めていきたいです。コラボも興味ありますが、ハードルが上がりそうなので、「コラボするだけで面白い人」がいれば挑戦してみたいなと考えています。奇跡が起きてあと20年くらいはこのまま続けられたら嬉しいかなと。
めぞんの方は、今SNSで注目されていて、ブーストがかかっている時に、お笑い芸人として成長できるようにしたいです。M1グランプリ優勝も夢ですし、純粋にお笑い自体が好きな気持ちはずっと変わらないので、今後も好きなお笑いを続けていくことを目標に頑張っていきます。
普段は神保町よしもと漫才劇場でライブやっているので、ぜひ一度漫才を観に来ていただけたら嬉しいです!
──何か個人的に挑戦したいことなどはありますか?
そうですね。物書きが好きなので、僕が原作でラブコメ漫画や掌編小説をやってみたいという野望はあります。
あとは吉本の先輩芸人である「ぶったま」さんのTikTokをプロデュースしているんですが、自分のプロデューサーとしての手腕が発揮できたら、また新たな道が開けるかもなので、個人の活動の方も頑張っていこうと考えています。
■本記事のTIPS
・根詰めてアイデア出しせずとも、雑談から良い企画が生まれる場合もある何か思うことがあれば SNSに投稿し、アウトプットすることを心がける
・SNS上での知名度だけではなく、実力も身につけることが大切
・ネットとリアルで支持されるコンテンツは異なることを理解しておく
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Writer:古田島大介
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