見出し画像

目指すは、第三のゲーム会社!? 集英社が推し進めるゲーム事業のカギは 優秀なクリエイターの発掘・支援にあり

自社の強みを最大限に生かし、新たな事業領域を開拓していくには──。
エンタメのみならず、すべての企業が直面しているこの課題。
その中で、新たなチャレンジとしてゲーム事業に乗り出した集英社が注目を集めている。主任として複数の事業開発に携わる森通治さんにお話を伺うと、FIREBUGがキーワードとして掲げる「少数精鋭による制作スタイル」、「新たな才能への投資やクリエイター同士のマッチング」といった共通点が見えてきた。

──2019年に新規事業開発室が設立され、現在は新規事業開発部 ゲーム事業・映像事業開発課となり、森さんが主任を務められています。集英社が手がける新規事業がゲームというのは意外でした。

そうですね。たしかに「集英社がゲーム事業!?」と、驚かれることは多いですね。集英社が出版事業だけでなく、世の中の変化に対応していくためのメディアコンテンツ企業として新たな事業領域を開拓していく上で何にチャレンジするか、さまざまな検討を重ねました。
そこで、集英社のマンガ事業を改めてマッピングすると、ゲーム分野に可能性があることが見えてきた。いまや世界のゲーム市場は20兆円規模にまで成長を遂げていて、魅力的であることは明らかです。近年、紙と電子を合わせたマンガ市場は絶好調ですが、それでもなお、ゲーム市場のほうが圧倒的に大きい。

画像1

(森さんのnoteより引用:https://note.com/moritsuu/n/n248a542c3e45

ゲームを出すことを、ゲーム業界では「パブリッシュ」と言います。長年にわたってマンガ事業で培ってきたキャラクターやシナリオを生み出すという制作の部分はもちろん、世に広めていくためのプロモーションや販売流通といったマーケティングの部分も含めて、集英社のノウハウを生かしたパブリッシュができるのではないか。つまり、着手できそうな領域で一番大きな市場、それがゲームでした。約2年半、試行錯誤を続けてきましたが、ゲーム事業への挑戦は間違っていなかったという手応えを感じていますし、さらに事業を強化すべく、組織力の向上に取り組んでいる最中です。

──具体的にはどのようにゲーム事業を推し進めているのでしょうか?

大きく2つの柱で進めています。ひとつは、集英社のクリエイティビティをうまくミックスしながら進めていく大規模なプロジェクト。グローバル展開するゲーム企業と一緒に企画を立てて、集英社はキャラクターとシナリオの制作を担います。現在、世界に向けてリリースする案件を2本進めていて、そのうちのひとつの企画では有名な漫画家さんにご協力いただき、とても魅力的なキャラクターと世界観が出来上がっており、早く世の中に出していけるよう、開発を進めています。
もうひとつは、ゲームクリエイターの発掘・支援。昨今のゲーム業界は、個人もしくは少人数チームでゲームを制作し、さらに販売まで行う動きが盛り上がりを見せています。これまではゲームを作ることはできていてもパッケージを作って売っていくことは難しかったのですが、PCは「Steam」というゲーム販売プラットフォームがあり、スマホもiOS、Androidともに個人でリリースできる環境が整い、オンラインでの販売を通して個人もしくは少人数チームでもゲーム制作にチャレンジできる時代になりました。

「ビットサミット」という日本最大級のインディーゲームイベントが9月2日、3日に京都で開催されますが、そこで集英社も5作品を出展します。いずれも個人もしくは少人数チームに対して支援を行なったもので、そのうちのひとつ「にゃんばーカードWars」は8月26日、ほか4作品も年内から来春にかけてリリース予定です。大掛かりな内容ではないものの、クリエイターの才能が尖った作品ばかりなので、ぜひご注目ください。

──新人クリエイターの発掘・支援の取り組みとして、今年4月に「集英社ゲームクリエイターズCAMP」という新プロジェクトがスタートしました。

ゲームクリエイターズCAMPは、集英社がマンガ事業で培ってきた新人クリエイターの才能を発掘・支援するノウハウをゲーム事業にも生かしたいと考えて立ち上げたプロジェクトで、ゲーム制作を志すクリエイター同士がつながることができる場所になります。

想定の10倍以上のアプローチがあり、現時点で登録者は3,000人以上。実質的に日本一と言えるゲームクリエイターのポートフォリオサイトになっています。実際にここから生まれるゲームも出てきていますし、今後はコンテストやスカウトなどを積極的に実施しながら新たな才能や企画への投資を進めていきます。世界のインディー市場は組織力を武器に制作されたゲームが多く、クオリティが非常に高い。日本は組織的な動きには後れを取る部分もまだありますが、ゲームクリエイターズCAMPを通して、世界で戦えるクリエイターが数多くいることがわかり、大きな期待をもって活動に取り組んでいます。

──メディアコンテンツ企業として集英社が目指すゲーム事業の展望をお聞かせください。

これまでも人気がある作品はライセンスアウトという形でゲーム展開が行われてきましたが、事業として主体的に進め、ノウハウが蓄積される形ではありませんでした。その点で私共が今進めている事業は、既存のライセンス事業とは内容も規模も大きく異なります。やるからには面白いゲームを作りたいですし、今までのゲーム業界にないような新しいアプローチをひとつでも生み出せたらと考えています。とはいえ、まだ何も成し遂げていませんので、集英社としてゲーム事業を収益化するというのがシンプルなモチベーションであり、自分が今本当に実現したいことです。その上で、出版社という業界、そして集英社という企業が「変われる」ということを証明したいですね。
ゲーム市場の黎明期にコンソールゲーム機向けに多く生まれた開発企業が第一のゲーム会社とした場合、スマホの時代にIT企業が多く参入し、第二のゲーム会社としてゲーム業界は大きく飛躍しました。そして今の時代にクリエイター投資をベースとした新しい立ち位置で我々のような企業が第三のゲーム会社として参入することで、ゲーム業界に一石を投じられればと思います

■本記事のTIPS

・世界のゲーム市場は20兆円を超える
・個人もしくは少人数チームによるゲーム開発と販売の勢いが加速
・クリエイターの発掘と支援、マッチングによって新たな作品を生み出す

■PROFILE■
森 通治(もり みちはる)
株式会社集英社 新規事業開発部 ゲーム事業・映像事業開発課 主任
2008年、新卒でApple Japanに入社。法人向けの営業部で学校や教育機関向けの営業企画などを担当。2015年に経験者採用で集英社に入社。電子書籍の販促・マーケ、マンガアプリのグロースに携わり、2019年に新規事業開発室に異動。現在は、新規事業開発部 ゲーム事業・映像事業開発課 主任としてゲームビジネス、スタートアップ協業など、複数の新規事業開発を手がけている。
出版社(マンガ業界)が進むべきDXについて記したnoteも必読。
https://note.com/moritsuu/

\こちらの記事もおすすめ!/

*株式会社FIREBUGのホームページはこちら
*お問い合わせはこちら

Writer:龍輪剛

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?