JEITA WORLD DESIGN FORUM 2022のまなび
こんにちは、JEITAデザイン委員会NOTEの今回は三菱電機の福高が担当します。
JEITAの活動は、自分達で言うのもなんですが、ここ最近、委員長会社を中心にとてもアグレッシブです! 一昨年度から私も様々な活動に参加していますが、レクチャーやデザインワークショップを通じてたくさんのことを学んでいますし、何より、他社のデザイナーとの議論はとても刺激になっています。本日は、そんな様々な活動の中で、まだ記載ができていなかった、JEITA WORLD DESIGN FORUM 2022について、少しお話をさせていただけたらと思います。
JEITA WORLD DESIGN FORUM 2022は、「『企業の経営課題に貢献できるデザインとは』サステナブルな企業価値創造が求められる時代の新規事業創出に向けて」をテーマに2022年5月にJEITA会員企業向けに開催されました。
プログラムは基調講演とディスカッションの2部構成になっており、ファシリテーターに株式会社日立製作所研究開発グループ社会イノベーション協創センタ主管デザイン長丸山幸伸氏、基調講演ではデンマークデザインセンターのクリスチャン・ベイソン氏から社会課題への取り組みで注目されているデンマークの実例をご紹介いただき、ディスカッションには社会課題に対してデザインがどのように取り組んでいけるか、東京大学生産技術研究所/DLXデザインラボのマイルス・ペニントン氏とPublic Intelligence Japanのエスベン・グロンデル氏にて議論をしていただきました。
※ファシリテーター・基調講演者・登壇者の経歴はJEITA WORLD DESIGN FORUM 2022 開催当時のものです。
1回目も2回目のフォーラム同様、世界で活躍されている有識者の知見を通して、多くのことを学べた貴重な機会でした。今回は、そんな多くの学びから、本編では紹介できなかった「社会課題解決におけるデザインアプローチ」と本編後の質疑から「共創における知財」について紹介いたします。
本編については、こちらのフォームに登録いただけると視聴できますので、是非お願いいたします。
「社会課題解決におけるデザインアプローチ」
先ずは、本フォーラムの依頼をマイルス氏にご相談した際、お話しいただいた内容で、すごく印象的なお話しをご紹介いたします。
(インタビュア)
社会課題の解決にデザインはどのように貢献することができるでしょうか?
(マイルス・ペニントン氏)
東京大学はマイクロプラスチックを海から回収するプロジェクトを推進しています。実際に回収する機器のデザインもしていますが、人々をプロセスに巻き込んで、解決する方法を皆で考えるデザインアプロ―チもしています。
マイクロプラスチックのような社会課題はデザイナー一人で解決することは難しいですが、コラボレーティブなイメージを作ることで解決することを試みているんです。
具体的には、神奈川県の海に面した町の子供達とワークショップを複数回行い、最終的には子供たち自身で、マイクロプラスチックに関する社会課題のアプローチをしてもらうというものです。一つ例をあげると、ある男の子は、マイクロプラスチックの問題は、その問題を多くの人が知らないということで、そのことを伝えるための動画を作りました。子供ながらの目線で作られた動画にはユーモアがあり、社会課題を解決するには、真剣に取り組まないといけないが、同時にそのことに楽しく取り組むことも大事だということがとても新鮮でした。そこに参加した子供たちは、私たちのプロジェクトが終わったあとも、継続的にマイクロプラスチックの社会課題にアプローチをしています。
人々をプロセスに巻き込んで、解決する方法を皆で考える。まだスモールスケールなプジェクトですが、人々の行動をデザインし、それが次の行動に繋がっていけば、マイクロプラスチックのような大きな社会課題の解決にもつながると考えています。
「共創における知財」
他社の方と一緒にアイデアを出すようなワークショップで知財が邪魔をして思いっきり参加できないモヤモヤは個人的によく感じていましたが、スッキリさせてくれる知財のあり方を本編後の質疑からご紹介いたします。
(インタビュア)
他社との共創において知財をどのように考えるのか?
(マイルス・ペニントン氏)
私たちには、知財についてはモデルがあり、オープンイノベーションラボと呼んでいます。お互いに競合する企業が、一緒になって長期的なリサーチプロジェクトをやってもらう例がありますが、どういう風に解決するかと言うと、大学が知財のガーディアンオーナーになるわけです。そうなると、もっと客観的なネゴシエーションを会社とできるわけです。会社が所有したい時とか、アイデアを進めたい時に、既存に存在するコンソーシアムモデルがあって、共有部分の一部を使いたい時は、交渉するプロセスがあります。
大学は、そのパワフルなグループの中ではどちらかというと中立的な当事者になるわけで、大学として果たせる独自の役割だと思います。
(丸山幸伸氏)
知財のガーディアンオーナーという考え方で、大学が機能するというのは本当にその通りだなと思います。今日のトピックスのような共創において、一社が勝ち抜くようなビジネスモデルはこれからはなくなると思います。社会の課題を解決するために、みんなでエコシステムを作って頑張りましょう、という話なので、今までのように自分たちの会社の知財を財産として誰にも使わせないのではなく、ギリギリまでシェイプを小さくした知財を持って、それをみんなにうまく使ってもらって世界を良くしていく方向に使う、そういうことを考えないといけないと思います。そこに教育機関というのがすごくうまく機能するんじゃないかなっていうふうに考えます。
今回は二つの内容のみのご紹介となりましたが、本編ではクリスチャン・ベイソン氏の基調講演「『デザインの未来』持続可能な成長のためのイノベーション」、エスベン・グロンデル氏からご紹介いただいたSmart Home Healthの活動や、ディスカッションパートでの不確実/複雑な社会課題を解き明かす方法としてのダイバーシティなど、企業の経営課題に貢献できるデザインのヒントがたくさん紹介されています。
是非、登録してご覧いただき、多くの方にとって有益なフォーラムにしていただけると大変うれしいです!
<登壇者関連URL>
クリスチャン・ベイソン氏
・Danish Design Centre DDC – Danish Design Center
マイルス・ペニントン氏
・東京大学生産技術研究所 DLXデザインラボ Home | DLX Design Lab
エスベン・グロンデル氏
・Public Intelligence Japan New Home Page (publicintelligence.jp)
・Synean Synean - Service Design Agency<2022年7月より>
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