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【創作帯付レコード Vol.5】BIG STAR / #1 RECORD

 個人的なプロジェクトとして、アナログレコードの帯を自分で新たにデザインする、創作帯活動をしています。レコード帯とはなんぞや?という方のために簡単に説明します。



レコード帯とは?


 レコード帯とは本来、レコード屋などでアルバムの特徴を説明する広報の補助媒体として1950年代後半からぐるりとタテに巻いて、アーティスト名やアルバム名、収録曲や特徴を説明するものとして付録されてきました。いかに買ってオトクかというのを、レコード会社の広報部デザイナーがレタリングに凝ったり、コピーにこだわったりと、四苦八苦して販売していた形跡が当時の雰囲気を伝える側面と、現代までそれが残されているものは逆にレコードの保存状態の高さを表すものとして、高いレアリティを有無側面もあり、国内だけでなく海外でも高い人気を誇っています。


創作帯:BIG STAR / #1 RECORD


「待ったぜヒーロー! やったぜチルトン!! すべてのカットがシングルになりうる―ビル・ボード誌」
斜めからのショット
裏面 (Atarimae いい音を、いいオーディオで。)


アレックス・チルトンはいかにして悲劇のロックスターになったか?


 60年代にボックス・トップスの一員としてデビューし、「あの娘のレター」などでスマッシュヒットをとばしたアレックス・チルトン。バンド解散後に、ソロキャリアをスタートし、間もなく1971年に自身のバンド、ビッグ・スターを結成する。
 かくして、入魂の1stアルバムをリリースことになるが、評判の高さと裏腹にセールス面がふるわず、その状態に業を煮やしたメンバーが次々離脱。(よりによって"#1 RECORD(ナンバー・ワン・レコード)"のタイトルも悲しく見えてくる……)
 さらには録音した3rdアルバムが、採算不振を理由にお蔵入りにされる憂き目にも合ってしまい、あえなくバンドは解散の道をたどった。

 その後、チルトンはソロ歌手として地道な活動を続けることになる。
 一時は音楽をやめ、レストランの皿洗い・清掃員・庭師の仕事に就くなど、音楽での成功を諦めかけていた。80年代から90年代はじめにかけて、ビッグ・スターのアルバムに影響を受けたフォロワーが次々と出現。メディアなどでその影響を公言することで、【早すぎたパワー・ポップの名盤】として再評価の大きな波が訪れることになる。

 現在では、ローリングストーン誌が選ぶ「500グレイテスト・アルバムス・オブ・オールタイム」の474位に"#1 RECORD"が、285位に当時お蔵入りとなった3rdアルバムの"Third/Sister Lovers"が選出されているほどだ。

 チルトンは2010年に心臓発作で亡くなり、多くのかけがえのないファンと仲間のミュージシャンに囲まれて、天に見送られた。
 死の数年前まで安価な中古物件を購入し、自らリフォームしたり、過去の印税収入で細々と生活をするなど、決してビッグ・スターな人生ではなかったようだ。


もしもビッグ・スターがリアルタイムでヒットしていたら……


 今回制作した帯のテーマは「IF~もしも」である。
 もし、ビッグ・スターがきちんプロモーション活動されていたら……
 もし、ビッグ・スターが当時世界的にヒットしていたら……
 もし、ビッグ・スターの1stが日本国内で販売されていたとしたら……
 
 当然付けられる帯のイメージはこれしかない!

 ザ・ナックで、マイ・シャローナ!!!


THE KNACK / GET THE KNACK 国内盤帯付レコード


プロモーションの重要さと、時代性合ったリリース


 実際、ザ・ナックのマイ・シャローナがヒットしたのは、1979年。ビッグ・スターの1stが1972年と、実に7年ものスパンがあり、単純な比較で同じ系統と見るのは間違いかも知れない。マイ・シャローナ自体が、まずパンク・ムーブメント以降のポスト・パンク、ニュー・ウェイブ期において、わかりやすさ前回のキャッチーなリズムとメロディが受け入れられやすい土壌もあっただろう。それに発売元がキャピトル・レコードで、全世界的に売り出しやすい環境というのもあったはず。

 一方、ビッグ・スターの生まれた時代は、ビートルズが解散してからの新時代。シンガー・ソング・ライターか、ハード・ロックか、どっちかでしょ?というくらい、ビートルズ・フォロワーのポップなロックというのが見向きもされない時代。

 同じ72年にキャピトルからデビューした、比較対象になりうるかも知れないパワー・ポップの代表格、ラズベリーズがリリースした「ゴー・オール・ザ・ウェイ」は全米5位を記録するヒットとなったものの、ビッグ・スターの発売元だったアーデント・レコードは、メンフィスのスタックス配給。黒人R&Bを売りにしていたレーベルだったことも災いしてか、大きな話題になることがなかった。

  時代に逆行して、いいと思う音楽を貫いた選択があったからこそ、現代の高評価につながるかも知れないが、チルトン本人に経済的な余裕があれば、もっと脂が乗った時代に多くの作品を残せたかもしれない……

 いや、もしかしたらナック同様に、一発屋扱いされた未来もあったのだろうか……アメ・トーークのOPに「Feel」が使われていた未来も合ったのだろうか……

まとめ:こんな話に意味などないのです


 こんな「もしも」にまったく意味などはないけれど、この時代性とプロモーションの問題は、現代に至ってもつくづく語りやすいテーマで、いつになっても話がつきないなぁと、考えさせられるものであります。。。

 

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