「アン・ブロンテ全詩集」の読書感想文
「アン・ブロンテ全詩集」(藤木直子訳)を読みました。ブロンテ三姉妹はシャーロットとエミリは「ジェーン・エア」と「嵐が丘」は読んだことがありました。しかし、アンについては有名な姉達の妹ぐらいのイメージでした。詩集を読んでみると16歳の時に描かれた「レディー・ジェラルダによる詩」の自然描写と母の死、結末には希望を持って新たな一歩を踏み出す人物が登場する展開の上手さに驚かされました。
詩の多くのは希望を持ち続ける前向きな展開です。しかし、人生の厳しさや不条理を内包しているので丁度よい熱量で最後まで飽きずに読めました。
姉エミリと共に架空の国、ゴンダル国の物語を創り、それを起点にしたした詩も多くありました。暗い地下牢の中にいて明かりは遠い鉄格子の向こう側にしか存在しない、それでも前向きに希望を捨てない、それを自然と届けてくれる作品たちでした。特に好きなフレーズは「人生観」の中の次の部分です。
〜あるいは不運が来れば希望がしばしば現れる、我々の悲しみは我々の恐怖より軽くなる、〜 「人生観」より
神についても描写も多くありました。とても強く、深い信仰の念を持っていたのだと思います。姉のシャーロットは「ジェーン・エア」でローウッドでの酷い環境やジェーンの幼い頃の友人ヘレン・バーンズの死で教会に対する不信感と天国に対する複雑な気持ちを描いたと思います。もうひとりの姉エミリは「嵐が丘」で聖書を自分の都合よく解釈して周囲の人間を貶めるジョウゼフの存在と人里離れた《嵐が丘》と《スラッジ・クロスス》の周辺には教会は牧師補すら派遣してくれないことで教会とは距離をおいていることを示したと思います。
アンは神にその身を捧げることを詩で表明しています。そして、カルバン派を批判しています。解説に依れば彼女はユニバーサリズム(普遍救済説)への信仰を表明していますと説明がありました。「ユニヴァーサリズムは〘ジェイン・エア〙のヘレン・バーンズの考え方でもある。」と解説で説明されていました。この詩集はブロンテ姉妹の作品を手に取った経験があれば他の作品と比較しながら楽しめると思います。
今回の詩集を読んだことにより、アービング著「スケッチ・ブック」を読んだときに感じた詩と小説やエッセイは意外と近いところにある感覚は実感できました。
#読書感想文
#ブロンテ姉妹
#詩集
この記事が参加している募集
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?