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「オクトーバー・ライト」の読書感想文


ジョン・ガードナー著、宮本陽一郎訳「オクトーバー・ライト」を読みました。
ショットガンでテレビを撃ち抜くジェイムズと同居するサリーを中心とした物語。そして彼女が見つけた本「ロスト・ソールズロックの密売者たち」の物語が並行して進行する枠物語です。
この作品は登場人物の発言と行動が特に面白い。
「バスタブの中で溺死させるのであれ、ブルドーザーで轢き殺されるのであれ、同じ方法で人が殺される番組が毎晩三つは必ずあるはずだし、」
これはジェイムズの娘のジニーの台詞です。これでジェイムズがテレビを撃ち抜いた理由が説明されていますいます。
徴兵制の存在したアメリカでは若者が集団で生活する時間がありました。そのことについてのサリーはこう考えます。
「若者が集団で生活していれば必ずそこに自由とか基本的人権とかい思想が生まれるんです。もうそうなれば時間の問題よ。ロシアやタンザニアやポルトガルみたいに革命が起こるに決まってるわ」
橋の上から入水自殺を図った男をマリファナの密輸船が助ける。マリファナがなければ芸術の発展が進まなかったのも事実だと思います。
事件現場に出動した警察官はバインダーに3センチ近い厚さの紙の束を挟んでいます。メキシコ人の神父が「それは報告書か何かですか?」と確認すると、「いやあ、こいつ、本なんか書き出しちまって」と同僚が答える。他の小説ならばセリフすら与えられないような脇役にもしっかりと光が当てられています。彼らの行動すべてに説得力がありました。

Wikipediaの説明にはこの本は1976年の全米図書館批評家協会賞を受賞しました。それにはこんな文章があります。

(the novel includes an invented "trashy novel" that the woman reads). 
〜女性が読むゴミのような物語を発明した小説〜

確かにその通りだと思います。そんな描写もありました。その歪なところにユーモアがあって面白い。
作者はレイモンド・カーバーに大学で教えた経験もある作者なので文学の知識が豊富です。日本神話の天の岩戸伝説らしき場面もありました。神社の柏手と指圧の関係は資ネットで検索しました。しかし何もヒットしませんでした。そんなところを含めても最後まで飽きずに読めました。
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