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「アホウドリの迷信」の読書感想文

「アホウドリの迷信」を読みました。翻訳者が日本ではあまり紹介されていない作家を選んで紹介する短篇集です。
日本ではあまり手の付けられていないマイナーな作家の作品が多いです。当然の事ながらかなりクセ者揃いです。小説はどこまで自由に物語を紡ぐことを許すのか?そのリトマス試験紙になるような短篇集でした。
ルイス・ノーダン著「オール女子フットボールチーム」は女子がフットボール、男子はチアリーダーとお互いに普段はやらない、もしくは避けて通りたい行為を行った時に浮かび上がるジェンダーについてをエンターテイメントに昇華した面白い作品でした。
これは私の独断と偏見に基づいた意見です。この作品はジョイスの「ユリシーズ」以前に近い、作者が読書のことを思い浮かべながら描かれた前半、「ユリシーズ」を通過した、作者が自由な翼を出版できる限界近くまで拡げた後半部分に分けられると思います。
後半のサブリナ・オラ・マーク著、岸本佐知子訳の「名簿」はエミリー、フランツ、スコット等の名前から曖昧な手掛かりしか与えられません。
同じ作者の作品には自分の子供がハイハイで立ち歩きもできない短い時間の中でも、5人の子持ちのママ友はいつの間にかに15人の子持ちになっている。その先はファンタジーと云ってよいのか?かなり跳ばされる作品です。
ローラ・ヴァン·デン・バーグ著「最後の夜」の中ではcommited sucide(はっきりと意図をもって自殺)とdied by sucide(とことん追い詰められていて意図どころではない自殺)についての説明があります。テーマは軽くありません。しかし、作品としては興味深く、面白い。
訳者も対談形式の開設の中で意味はわからないけど面白いと書いてありました。フィクションの許容度をどの程度まで認めるか?作品を鑑賞者の脳内で完成させるインスタレーションのような面白味があります。
その中にも頭をハンマーで殴られるような言葉がありした。リディア・ユクナヴィッチ著「引力」の結末はこの1年間の間に最も心に刻まれたニュース映像との関連で特に印象に残る部部分です。

この物語に結末はない。子供たちを海に追いやるのは、ほかならぬ私たちだ。

この短編集は確実に読者を選びます。しかし、新しい扉を開けてくれるような作品でした。
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