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「オクトーバー・ライト」の読書感想文〜その3〜

ジョン・ガードナー著「オクトーバー・ライト」は収蔵している図書館が少ないです。その理由を考えてみました。
この作品は「ショットガンでテレビを撃ち抜く老人と同居する姉の大喧嘩」をメインにして、自分の部屋に閉じこもった姉が見つけた本「ロスト・ソールズロックの密売者たち」の物語が並行して進行する枠物語です。
本筋のバーモントの田舎町で暮らす姉と弟、そして、彼らの家族及び友人にはしっかりと過去や現在の状況が描かれます。こちらは大学生だったレイモンド・カーバーに創作の講義を行った著者らしい文学的な小説らしい物語です。
入れ子構造の「ロスト・ソールズロックの密売者たち」はページが欠落しているために筋がつながらない箇所もあります。そして、マリファナの密輸船に強い興味を持って探し回る博士や意味不明の演説をする殺し屋を筆頭に常識外れな人物たちの物語です。かなり定型を無視しています。しかし例外はあります。博士に仕えるアフリカ系のメイドには暗い過去があります。それに大きな影響を受けながら現在でも生活しています。そんな彼女の存在が二つの物語が現実の世界の物語であることを示して、大都会と田舎町のバーモントの出来事を上手に繋いでいると思います。
そこにはテクニックがあり、政治的な言葉もジョークを交えた重たくないものになっています。例えばこんな表現がありました。
「つまり灯油だ。しかし、バーモンドでは民主党の連中のおかげで昔から灯油といえば火災保険に巻き上げられた金を取り戻すときにしか使わないので《保険油》と呼ぶようになった」
この部分は特にお気に入りです。
この作品にはシリアスからコメディー、高尚な哲学から下品な表現まで何でもありです。その事によりジャンル分けや粗筋で簡潔に内容を説明するのが困難な作品てもあります。
内容のわりには作品の知名度が低いのが不思議な作品でした。

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