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待ち合わせの時間に合わせて支度をするのが難しく、遅刻しがち

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1.待ち合わせには遅れない方がおかしい

時間の管理と場合によってはタスクの開始の困難がありそうですね。さらにその背景には、メタ認知ワーキングメモリ計画と優先順位付け思考の柔軟性が関わっています。時間の管理で大事なのは、支度のための個々の活動にどれだけの時間がかかるかを見通す力です。タスクの開始は、必要なことを必要な時に始める力です。また、個々の能力があるだけでなく、全体をふかんして、活動が計画通りに進んでいるかをモニターするためには、メタ認知の力が必要です。さらに、メタ認知の視点と、現在の状態を対比しながらモニターし、ペースを調整するためには、それらを並行して確認するワーキングメモリが必要です。計画と優先順位付けは、これらの活動を事前に計画し、優先順位を立て、さらに、実際の活動に際して、進捗に応じて優先順位を調整する力です。最後に、頭でわかっていても、実際に活動が切り替えられないといけないので、思考の柔軟性が必要になります。「遅刻しないこと」には、これだけたくさんの能力が関わっています。本来、子供が一人でこれらすべてを完璧にこなすのは不可能で、「遅刻しない」ということには、保護者に余裕がある、家庭に人的・金銭的な余裕がある、家が近いなどの物理的なメリットがあるなど、子供自身の能力を超えた、様々な条件に恵まれた結果であると思います。ある意味、子供が遅刻しないとすれば、そのことの方が普通ではないといえるほどです。

2.まずは遅刻しても大丈夫なように

対策としては、遅刻しないようにする方向性と、遅刻しても大丈夫にする方向性の両輪が必要です。人の行動が変わるためには時間がかかるので、特に後者が重要です。遅刻しがちだということをきちんと周りの人にわかってもらうこと、そして、遅刻した場合には先に行ってほしいとか、作業を先に始めておいてほしいとか、相手がどうしたらいいかを事前に伝えておき、遅刻による周りへの悪影響を最小限に抑えます。また、特に子供が小さいうちは、親が、子供が遅刻することを想定し、準備を先回りしておくとか、可能な範囲で送り迎えをするなど、遅刻をカバーしてあげる役回りを取ることが助けになります。遅刻は、特に日本文化では必要以上にペナルティを受けるので、遅刻した後に、「遅刻が直らなくても死にはしない」、「遅刻で失った信頼は別のところで挽回すればいい」、「次は絶対に遅刻しないなど、できない約束はしない」など、身近な大人が励まし役になることもとても重要です。

3.時間の管理を鍛える:予測クイズ、タイムトライアル、逆算、余裕をもたせる

実行機能を鍛えるためには、一つ一つを意識して使うしかないと思います。一つ一つというのがポイントかもしれません。例えば、時間の管理からやるとすれば、暇な時間を使って(いきなり本番で試すのではなく)、休みの日の着替えにどれくらいの時間がかかるかを当てるクイズをするとか、タイムトライアルで記録を更新できるように掲示しておくとかが考えられます。本番ではなく、暇な時間を使うのは、実際の支度の際は、遊んだり、記録を付けたりする時間がないと考えられるからです。中高生くらいになれば、朝の支度に何が必要で、それぞれどれくらいかかるのかを書き出して、何時に起きればいいかを逆算するとか、計画するときには念のため余分な時間を入れておくなどのテクニックを教えてもいいかもしれません。

4.タスクの開始を鍛える:今すぐやるゲーム、手順を絵で提示

タスクの開始の練習は、まずは、親が合図したときに何かを始められるようにするところからでしょうか。朝の準備のような難しいテーマよりも、食事を食べるとか、遊びに行くとか、8割方できるところから始めるといいと思います。できるだけ、今すぐに何かをしたらアメや50円がもらえるという課題を突然出すなど、ゲーム性を取り入れた方法を考えられるといいでしょう。他には、自分で流れが追えるように、支度の手順を絵にして掲示しておくといいと思います。切り替えの問題が関わっていることも多いので、思考の柔軟性と同時に練習していく方がいいかもしれません。

5.思考の柔軟性を鍛える:口癖にする、タイムセール

思考の柔軟性の練習としては、とにかく切り替えを意識することです。年齢にもよりますが、切り替えを大事にしようという認識を共有できるといいと思います。「切り替え、切り替え」と、切り替えの重要さを、日常生活の中で口癖のように伝えていくことが考えられます。もっとユニークな言葉を使うと、より楽しめるかもしれません。ポイントは、「やりたいことを途中でやめて、次のことをする」ということです。意識的に、生活の中でそういう機会を作りたいと思います。まずは、どうでもいいことで練習するのがコツです。例えば、タスクの開始でやったのと同じように、中高生ぐらいであれば、暇でだらだらYouTubeを見ているようなときに、唐突に、タイムセールのように、今すぐそれをやめてごみ捨てに行ったら、食器を洗ったら500円あげるというように、何かインセンティブを付けて、切り替えの練習を提案するのもいいかもしれません。突如やるのが目的なので、何かをしたら500円もらえるというルールにするということではありません。また、このようなルールは、毎回お金を要求されるし、だんだんと必要な額があがっていくので、あまりお勧めしません。

6.メタ認知を鍛える:楽しいことの振り返り、実況中継

メタ認知は、自分の状態を観察したり、過去の状態を振り返って思い出したりというのが練習になります。基本的には楽しい話がいいと思います。本人が何かを話したら、その時の状況と本人の体験を振り返らせるような質問をします。何があったか、どう感じたか、どうしてか…などです。料理などを一緒にやりながら、「今、卵を割りました。一生懸命といています…」など、作業を実況中継するというのも、小学校低学年なんかではいいかもしれません。ところどころ、気持ちや考えを質問してあげるとよりいいと思います。

7.ワーキングメモリを鍛える:手順を絵にして掲示、好きなことを極める

ワーキングメモリは、手順を絵にして掲示するなど、ワーキングメモリ(短期記憶)の負荷を少なくするのが1番の対策です。それがメモを持ち歩くなどのスキルに発展します。鍛えるためには、ゲーム性のあることの方がいいですが、記憶力の苦手な人は、神経衰弱のような記憶力が必要なゲームは好まない傾向にあるので、難しいところです。好きなゲームや趣味を極めるのはとてもいいと思います。何事も極めるためにはマルチタスクが必要になります。それがワーキングメモリの限界を突破する大きなモチベーションになります。

8.計画と優先順位付けを鍛える:計画を一緒に立てる、ユーモアを交えておちょくる

計画と優先順位付けは、手順の掲示を作る際に、計画を一緒にしてあげるといいと思います。また、優先順位については、日ごろから、「先に~をやった方がいいんじゃない?」と、軽くリマインドしてあげるということも考えられます。あくまでリマインドなので、その通りに動かなくても仕方ありません。いうことを聞かせようと躍起になると、うざがられるので、そうではなく、ふざけた感じや、ユーモアを交えながら、「今は~する時間なのに、~からやっちゃうんだ!?」、「~と~、どっちを先にやるといいかな?え!?本当に~を先にやるの?~が悲しむんじゃないかな…」などと、大げさに伝えて、選択をするとか、物事には優先順位があるということの意識づけが重要です。子供から、「これと、これ、どっちを先にやった方がいいと思う?」と聞かれるようになったら、大成功だと思います。

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