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エネルギーのスペシャリスト大場紀章がJDSCのエグゼクティブフェローに就任! 「高断熱住宅とウェルビーイング」を通して考える、エネルギー供給の新たな形について

JDSCでは、より高いバリューを発揮するために、多くのプロフェッショナルの方と協業しています。そのなかの1人が、エネルギー業界のスペシャリストとして、テレビやラジオなどメディアでも活躍されている大場紀章さん。JDSCではこれまで、様々な局面で大場さんにご知見を頂いてきました。
そんな大場さんがこのたび、JDSCの「エグゼクティブフェロー」に就任! より一層強い協力体制で、”UPGRADE JAPAN”を目指していきます。

今回は、外資系コンサルでキャリアを積み、現在はJDSCでエネルギー分野での社会課題解決に取り組む松野が登場。エネルギー業界に強い思いのある2人が、「高断熱住宅×ウェルビーイング」をテーマに対談します。


登場者プロフィール

大場紀章
株式会社JDSC エグゼクティブフェロー
合同会社ポスト石油戦略研究所代表
2004年に京都大学理学研究科(化学専攻)修士課程を卒業し、2008年に同大学院理学研究科博士後期課程単位取得退学。
2021年より経済産業省「クリーンエネルギー戦略検討会」委員に選出。
化学燃料供給、エネルギー安全保障、無機物性化学など、エネルギー問題の研究者としてだけでなく、サイバーセキュリティ、材料科学、人工知能研究など、幅広い分野において活動

松野淳
大手通信事業者の研究開発に従事し、その後、戦略系コンサルティングファーム等を経て、JDSCに参画。新規事業創出プロジェクト、特にエネルギー領域での新規案件開拓、ビジネスコンサルティングチームの組織組成支援等に取り組む

大場さんが、”エグゼクティブ” フェローになった訳

松野:ポスト石油戦略研究所の代表であり、エネルギー業界のスペシャリストとして活躍される大場さん。一見AIやDXとは異なる専門性に思えますが、エグゼクティブフェローとしてJDSCにご参加くださったきっかけは何だったのでしょうか。

大場:私はもともとJDSCのCEOの加藤エルテス聡志のシェアハウス仲間で、彼の取り組みのサポートをずっとしてきました。そうしてJDSCができて、会社としてどんどん大きくなっていく中で、「もっと関わってほしい」と依頼をもらって。このたび「エグゼクティブフェロー」になりました。

松野:大場さんは「エネルギーのスペシャリスト」としての印象が強くて……! JDSCになるよりもずっと前から関わってくださっていたとは、社内でもあまり知られていないかもしれません。

大場:エルテスと一緒に「朝活」と言って作業していたのが懐かしいです(笑)

松野:そんな大場さんが改めて、JDSCのエグゼクティブフェローとして目指していることがあれば、教えていただけますか?

大場:JDSCは日本の産業をUPGRADEすることを使命としているわけですが、インフラ産業としてのエネルギー業界は、業界内特有の慣習や法律、規制が多いのが特徴です。JDSCを含むスタートアップの企業とは文化やルールにギャップがあり、時として参入が困難な場合があります。私としてはそこを埋める橋渡しでありたいと思っています。

松野:エネルギー業界は専門性が高く、大場さんの存在は大変心強いです。今後ともよろしくお願いいたします。

大場 紀章さん

エネルギーの次世代トレンド「高断熱住宅×ウェルビーイング」

松野:さて、今回のテーマにもなっている「高断熱住宅×ウェルビーイング」ですが、最近エネルギー業界のトレンドとして、高断熱住宅が注目されているそうですね。その背景には何があるのでしょうか。

大場:大きくは2つ理由があります。
1つは、日本の住宅の省エネ化の遅れを取り戻そうとする動きがあること。
たとえば、日本の窓の断熱基準は、最高ランクでもヨーロッパの最低基準より低い。アジアでも中国や韓国はもっと進んでいるんです。この現状に対して、日本もキャッチアップしようという事業者が増えてきています。規制も徐々に制定されていて、2025年以降に施工する場合は、断熱性能などを含む省エネ基準の達成が義務づけられました。

もう1つは、昨今のエネルギー価格の高騰です。
消費者からの節電ニーズがいっそう高まり、断熱性能を気にする人が増えてきました。

松野:じつは私も断熱性の高い窓へのリフォームを検討したことがあって。断熱性能の注目度が高まっている印象はあります。
また、高断熱住宅とウェルビーイングの関係性についての研究も進んでいるそうですね。

大場:はい、高断熱住宅は、少ないエネルギーで温度を一定に保つことができますよね。そのため、室温と健康に関する様々な実証研究が注目されています。

たとえば、室内温度の変化と脳梗塞のリスクには相関があることがわかってきています。具体的には、冬場に室温が18度以下の部屋が一つでもあると、急激な温度変化によって脳梗塞だけではなく高血圧や心筋梗塞等のリスクが上昇してしまうという研究結果も。これに対して、断熱性の高い建物ですべての室内を快適な温度で一定にすることで、そうした疾患の予防に繋がります。

また、温度は人間の生産性にも大きな影響を与えることがわかってきています。人間がデスクワークするのに最適な温度はおよそ21~23度と言われていて、そこから1度変わると2%パフォーマンスが下がるという研究結果があります。この損失を人件費に換算すると、コストをかけて温度のコントロールを行う方がはるかにメリットが大きいことがわかります。

このような研究結果もあって、建物の断熱性能にさらに注目が集まっていますね。

「高断熱住宅×ウェルビーイング」がもたらす自治体・企業等へのメリット

松野:確かに、住民や入居者の目線では、住宅の断熱性能を上げることのメリットが多いように感じました。一方で、企業等にとっては、どのようなポジティブな影響が考えられるのでしょうか。

大場:まず考えられるのは、自治体へのメリットですね。住民の健康維持に繋がれば、社会保障費の削減が見込まれると思います。

松野:実際の実証実験には自治体の協力も不可欠になっていくと思います。事業者側は、見込まれる経済的なインパクトを数字として算出することが求められますね。

大場:また、住宅メーカー、空調機器メーカー等にとっては、新しいサービス提案のきっかけになるかもしれない。このように消費者目線でエネルギーの付加価値を考えていく流れは、今後どんどん広がっていくと思います。

松野:住宅メーカーとしては、ウェルビーイングの観点で消費者に強く訴求したことも過去にあったと思います。ただ、効果の可視化が難しく営業販促で非常に苦悩されていたはずなので、前に進むきっかけになりそうですね。

各主体で立場は異なりますが、実現のためには、自治体、企業、消費者の三方にとってメリットを享受できる形作りを進めることも重要になってきそうです。

「高断熱住宅×ウェルビーイング」においてAIベンチャーが果たすべき役割

松野:高断熱住宅の普及の流れの中で、我々のようなAIベンチャーとしてはどのような貢献が期待されるでしょうか。

大場:AIやDXの活用余地としては、空調機器の電気代への削減効果か、健康効果の測定のどちらかになると思います。
ただ、じつはエネルギーってとても安いので、コストカットの効果が低いんです。たとえば、ガソリンの値段を考えてみると1L180~190円。高騰しているとはいえ、牛乳の値段と変わらないくらいと考えることができます。つまり、10%削減できても、家計に大きな影響を与えることは難しい。

それに比べると、人間の健康は非常に価値が高いものです。健康を損ねれば、人件費や医療費はもちろん、また個人のウェルビーイングにもとても大きな負の影響を与えます。だから、効果的に健康を維持するために、AIやデータサイエンスを使って指標やデータの測定を行うアイデアが求められていると思います。

松野:健康・ウェルビーイングと一口に言っても、身体だけでなくメンタル面の要素もありますよね。人の幸福度を行動データから測定・分析するような取組みも進んでいます。

大場:エネルギー関連データは相性が良いのではないかと可能性を感じていますね。人が生活する中でエネルギーは必ず使うものですし、電力データなどはプライバシーに関わりづらく取得しやすいので。

松野:JDSCが電力データを使って取り組んでいるフレイル(※)検知もそのひとつですよね。フレイルは主に高齢者をターゲットにする一方、「ウェルビーイング」と考えると、ターゲットがぐっと広がる。ハードルはもちろんありますが、可能性を感じますね。

ただ、我々のようなDX支援企業としては、単純にDXソリューションを提供して終わりでは十分でないと考えています。例えば、JDSCのヘルスケア領域で既に立ち上げている「フレイル対策コンソーシアム」のように、社会実装や中長期的な目線での産官学連携など、業界に対してより深く貢献できる可能性を常に探索していきたいです。

※フレイル:健常と要介護の中間の状態


松野 淳

最後に

ここまで、高断熱住宅とウェルビーイング、そしてエネルギー業界に関してお話を伺ってきました。
最後に、大場さん、松野さんがいま目指されていることがあれば、教えてください。

大場:エネルギー業界の、エネルギーの使用者目線でのアップデートです。
これまでエネルギーは、供給側の論理で考えることが主流だった。つまり、いかに多くエネルギーを売るか、が基本でした。
しかし、今は違います電力会社が節電プランを提案する時代で、エネルギー業界の当たり前が変化しています。
だからこそ、エネルギーをただ使われるものとしてでなく、より高い付加価値を得られるような形で供給していく必要がある。エネルギーの本当の価値は、売られる量ではなく、使われることによる社会的な付加価値の向上で測られるべきだと思います。
 今日お話したような「ウェルビーイング」といった「使用者の観点」での分析や提案をしていきたいですね。

松野:エネルギー業界では昨今のカーボンニュートラル化の流れもあり、クライアント企業の課題意識の高まりを日々感じています。
一方で、現状、我々がそのような企業様に対して十分なご支援を提供できていないという歯痒さもあります。弊社には、フレイル、seawise等の代表的な取組みがありますが、エネルギー業界に対してもそれに続くような成果が求められていると思っています。
1社のお客様の課題解決に取組む基本姿勢は保ちながらも、中長期的な目線で共通課題を解くための仲間づくり・仕組づくりに励み、業界全体の変革に繋がるよう精進いたします。

ありがとうございました!


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