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『Jodo Journal』 巻頭言をweb公開

浄土複合スクールで発行しましたZINE『Jodo Journal vol.1』の巻頭言を掲載します。内容の紹介とともに、どのように受講生が年間通じて書くことに取り組んできたのかを感じていただければ幸いです。

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巻頭言

二〇一九年三月、京都の浄土寺エリアにアートスペース浄土複合がオープンし、主軸となる活動のひとつとして、浄土複合ライティング・スクールは同年四月に始動した。本誌は受講生とともに歩んできた一年間の集大成であり制作物である。

完成までいよいよ佳境といった段階で、新型コロナウイルスの問題が燎原の火のごとく広がっていった。この巻頭言を書いている今、学校や美術館、図書館などが軒並み休校・休館するという非常事態の只中にある。振り返ってみれば昨年には、あいちトリエンナーレ2019における「表現の不自由展・その後」の中止や、それに続く文化庁による補助金不交付の決定など、芸術文化の根幹に関わる出来事が立て続けに起きていた。

こうして揺れ動く状況下にあって私たちは、年間を通じて一定のペースを保ちながら書くことを持続させてきた。それはすなわち、不安定な状況にも決して揺るがない——と言えるほど確たるものではないが、それでもなお進行形の芸術文化に注目し、思考し、執筆に取り組む習慣を形成してきた、ということである。ままならない日々のなかでも書くことの足場を保ち続けてきた延長上に、本誌『Jodo Journal』は成立している。

「浄土の本棚」では、スクール周辺のエリアを足元から見つめ直すべく、本棚という切り口からいくつかのスペースに注目した。それぞれに紹介していただいた三冊の本を通じて、いずれ劣らぬユニークな場の固有性が感じられるはずだ。「浄土複合の本棚」では、ライティング術から編集、デザイン、造本にいたるまで、書くことをめぐって参照しうる本を一二冊選び出し、ブックガイドを作成した。

「書き続けるための相談室」では、スクールで行われたゲスト講義の記録をQ&A形式で掲載している。千葉雅也、小林えみ、福永信、小崎哲哉各氏による少人数での講義は、どれも大変に刺激的であり、再構成された誌面でも、いかに書き続けるのか、そして発信していくのかをめぐる、ヒントに満ちたものとなっている。

これに続く「成果物レビュー集」では、受講生のそれぞれが展覧会を訪れて執筆した文章を集めている。講師やゲストによる綿密なフィードバックが行われ、その過程で繰り返し推敲を重ねることによって、いずれも力作として仕上がった。読者=他者と書き手の往復のなかで磨かれた文章は、一人では決して到達できなかった、それぞれにとっての新たな「基準地」となっているはずだ。ブラッシュアップに関して、とりわけ二〇一九年度講師の櫻井拓さんの力が多く注がれている。記して感謝したい。

受講生の多くは仕事や学業と並行しながら、執筆に年間通じて取り組んできた。決して軽いとは言えない分量の課題に熱意をもって向かい合い、スクールでの講義やディスカッションに参加し、本誌制作にも携わるなかで、書くことをめぐる多くをすでに学び、実践したはずである。ここで得たものを、それぞれの仕方で継続し、展開していけるよう願っている。

一年間の成果を世に放つときが来た。journal に含まれるjour は、「日(day)」を意味するラテン語diēsが語源となっている。bonjour は「良い(bon)日(jour)」という意味だ。スクールでの濃密な日々、その蓄積を刻む意味を込めてjournal という語を採る。これを手にしたあなたにとって本誌が、慌ただしい日々のなかでもなお、芸術文化や書物を通じて思考し続けるための触発となるのであれば、これに勝るものはない。『Jodo Journal』創刊号をお届けする。

二〇二〇年二月二九日

池田剛介(浄土複合スクール ディレクター)

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目次

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