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「データ取引市場」とは? メリットや国際動向、情報銀行やPDSとの違いも解説

近年「データ利活用」「DX推進」等が取り沙汰されているように、企業や自治体はデータを活用してイノベーションを起こすプロジェクトに続々と乗り出しています。

現在、日本のデータ活用事例といえば、自組織が保有するデータを利用した取り組みが大半ですが、今後さらなるイノベーションを起こすためには、組織を超えたデータ利活用が必要であると考えられます。

そういった未来を目指して徐々に形成されつつあるのが「データ取引市場」です。この記事では、データ取引市場の概要や整備のメリット、企業や自治体などの組織がデータ取引市場を利用する際のチェックポイントなどを解説します。


「データ取引市場」とは何か

「データ取引市場」とは、多数の売り手と多数の買い手が集まって、データの取引をする場所です。

証券(株式)取引市場のことを考えてみましょう。株式を買いたい人と売りたい人が同じ取引所にたくさん集まることで、スムーズな売買と妥当な値付け(市場価格の形成)を同時に達成することができます。これが「市場」です。

日本の「データ取引市場」は、まだ証券ほど柔軟な市場価格の形成には至っていませんが、いくつかの事業者が安全にデータの売買ができる取引システムを提供し、データの自由な流通を促しています。

「データ取引市場」「情報銀行」「PDS」の違い

「データ取引市場」のようにデータを扱うサービスとして、「情報銀行」や「PDS」も注目を集めています。これらのサービスはどのように異なるのでしょうか。

「情報銀行」とは

「情報銀行」とは、「個人との契約等に基づき個人のデータを管理し、個人の指示又は予め指定した条件に基づきデータを第三者に提供する事業」です。あなたがインターネット上での購買や閲覧の履歴などの個人データを「預け入れ」するとします。すると、そのデータをマーケティング等に使いたい企業が、「情報銀行」に利用の許諾を申請します。「情報銀行」はあなたが預け入れ時に決めた公開基準の範囲内でその申請を許諾します(=運用)。これによりあなたは自分の情報の利用をコントロールできるだけでなく、企業から割引クーポンといった「利子」を得ることができます。これが「情報銀行」の仕組みです。

「PDS」とは

「PDS」とは「パーソナル・データ・ストア」の略語です。「情報銀行」はあなたに代わってあなたの個人データを管理し、第三者に提供するサービスですが、「PDS」はあなたが自分で個人データを管理して第三者に提供する仕組みです。自分で蓄積したデータをさまざまなサービスに提供することで、より自分にフィットしたサービスを享受することができます。

組織間のデータ取引には「データ取引市場」が最適

以上の定義からもわかるとおり、「情報銀行」や「PDS」は個人データを取り扱う、個人を対象としたサービスです。いっぽう「データ取引市場」は、個人データ以外にも様々なデータをやりとりできるサービスで、個人のみならず法人による利用も視野に入るサービスです。したがって、企業や自治体などの組織が外部とデータのやりとりをする場合には「データ取引市場」の利用が適しています。

データ取引市場が整備されることのメリット

日本でも着々と形成されつつあるデータ取引市場ですが、データ取引市場が整備されることで、企業や自治体などの組織はどのようなメリットを享受できるのでしょうか。

データ取引の機会が増える

データ取引市場では、現代の証券取引やいわゆる「フリマアプリ」と同じように、プラットフォームとなるWEBサービスを介してデータを売買できます。

データを簡単に出品できる快適なプラットフォームが整備されることで、組織内にあるデータの出品が活性化します。また、検索性の高いデータ取引プラットフォームがあれば、買い手も自分の欲しいデータにすぐ行き着くことができ、ビジネスや研究が活性化します。

データ取引がスムーズになる

データ取引においては、利用ライセンスの設定など各種手続きのハードルが高く、これが組織を超えたデータ利活用の壁となっています。各データ取引市場ではこのような手続きの負担をなるべく削減できるよう、さまざまな機能を搭載し、データ取引の活性化につなげています。例えば、日本のデータ取引市場のひとつ「JDEX」では、個々の取引に即したデータ使用契約書の雛形を自動生成して提供することで、安心・安全なデータのやりとりをサポートしています。

また、現在ではデータ取引市場に出品するデータについて、国際標準規格の策定が進められています。この規格に則って整えられたデータの出品が増えることで、より安心・安全なデータ取引が実現すると思われます。

データ取引が安定化する

日本においては、データ取引の実例がそう多くは蓄積されておらず、データ売買の相場は各事業者が模索している状況です。しかし、今後データ取引市場での取引事例が増えるに従い、市場価格が形成され、取引の安定化が進むと考えられます。

企業に数多く眠るデータが「予算を立てて売買するもの」になれば、社会に役立つ貴重なデータの活用がいっそう促進され、データドリブン社会が実現されるでしょう。

データ取引市場の国際動向

ここで、世界におけるデータ取引市場の整備状況を確認しておきましょう。

中国ではいち早く2001年からデータ取引所が設立され、現在では10以上の取引所でデータが取引されています。さらに2021年3月には、約3億ドルの資本金を元手に北京国際ビッグデータ取引所が設立され、世界中のビッグデータが集まるハブとなることが期待されています。

EU内では2020年6月に「GAIA‐X」というデータ基盤プロジェクトが発足しました。データの仲介者を規制することでデータ取引の信頼性を担保するための「Data Governance Act」(2021年11月に政治合意)や企業同士や企業と行政の間における公正なデータ取引に関する「Data Act」といったルールを制定するとともに、業界を横断してデータを流通できるような標準規格や認証のシステムを構築しています。また、エコシステム(データ経済圏)の形成のために約1億9千ユーロを掛けての実証実験が行われています。

また、世界経済フォーラムは2020年に「DCPI(Data for Common Purpose Initiative)」というグローバル・イニシアティブを発表し、各国に置かれた第四次産業革命センターを拠点としてさまざまな調査・提言を行っています。中でも第四次産業革命センターコロンビアセンターはデータ取引市場のモデル化に取り組み、政策決定における官民データの利活用の重要性等を発信する白書を発表しています。また、日本センターも2021年8月に取引市場の運営事業者に向けた提言書を発表する等、積極的に活動をしています。

(出典)
各国が推進する「データ取引市場」関連最新動向
データ取引所の現状と課題 | SOMPOインスティチュート・プラス

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信頼できるデータ取引市場を選ぶには

日本国内でもデータ取引市場の設置が続々と進む中、どのプラットフォームを利用すべきか迷うケースもあるでしょう。そこで、適切なデータ取引市場を選ぶためのチェックポイントをお伝えします。

安全性が十分に備わっているか

2023年現在、データ取引市場について、共通の規格や認定資格の整備はいまだ完璧とは言いがたい状況です。サービスサイトや利用規約・約款等をきちんと読み、「セキュリティ体制がきちんとしているか」「会員に対する審査制度が存在しているか」「利用範囲がきちんと定められているか」「公平な取引が担保されているか」等を確認しましょう。不安な点があれば、運営事業者に問い合わせてみてください。

出品者・購入者とのやりとりがしやすいか

データは一般的な商品と異なり、買い手の利用方法によって販売価格を変えたり、契約形態を変えたりするケースが多い商品です。また、出品されているデータを見た買い手が「こういった形式で納品してもらえないか」「ほかに類似のデータはないか」などと問い合わせをしたくなることもあるでしょう。そういった場合に備えて、売り手と買い手の間で気軽にメッセージをやりとりできる仕組みがあるかどうか、確認しましょう。

コンシェルジュ・サービスが充実しているか

「わが社の保有するデータも売れるのかな?」「こんなデータが欲しいのに見つからない」など、データ利活用担当者はいろいろな悩みをお持ちだと思います。そんなときは、データの利活用の方法を相談できたり、欲しいデータをリクエストできるプラットフォームを選ぶことで、理想的なデータ取引を実現できるでしょう。

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この記事では「データ取引市場」を取り巻く現状をご紹介しました。
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