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「することモード」と「あることモード」 (2019年3月10日のブログから)

昨日のブログの続きです。「メンタルコンシェルジュ・セミナーでうかがった慶應義塾大学医学部精神神経科学教室ストレス研究センターの佐渡先生のお話からです。セミナータイトルは、「人事担当者のためのゼロから学ぶマインドフルネス」でした。

先生のマインドフルネスの定義です。「『今ここ』の体験に気づき、それをありのままに受け入れる態度および方法」。これもとは大谷彰先生の定義なんですね。昨日の話で説明すると、脳の注意をシフトさせないことなんだと思います。

人の脳は2つのタイプの情報処理モードを持つといいます。

① することモード  …doing mode

② あることモード …being mode

することモードというのは、「思考のモード」です。現在時点からゴールを目指して、論理的なものごとを考えて問題を解決しゴールにたどりつくことを目指すモードです。まさにビジネスモードですね。

これに対して、あることモードというのは、「感覚のモード」です。今の感覚に注意を向け続けるモードです。しっかりと味わいながらゆったりと食事をしているとき、森林で鳥のさえずりにただ耳を傾けているとき、などがわかりやすい例ですし、ヨガなんの呼吸法で呼吸に気持ちを集中させたりするのもそうです。まさに「今ここで」です。酒場で喧噪を心地よいBGMとしながら盃の酒を味わっている「酒場浴」もあることモードにほかなりません。

マインドフルネスが様々な企業でも注目されているのは、「することモード」だけではどうもいつもうまくいくとは限らなくなってきたことに気付いてきたからです。

することモードをつかさどるのは、脳の前頭皮質なんだそうです。ここは生物の中で人が突出して進化している部分であり、論理的で合理的な思考を担当しています。これに対して、脳には辺縁系という部分があり、ここは危険を察知するといった生物としての生きる力のために必要な機能を果たしているそうです。危険を察知すると恐怖の信号を発し逃げろと指示をします。危険、恐怖、ストレスというものが強くあると、この辺縁系が脳全体をハイジャックしたようなかたちになります。そうすると、相対的に前頭皮質の能力は低下します。大きなストレスに相対した時に、人が冷静に合理的に判断できなくなるのはこのためです。この辺縁系の活動をマインドフルネスが抑え込むことができるのです。それによって、結果として相対的に前頭皮質の活動を強化することもできます。つまり、マインドフルネスそして「あることモード」は、「することモード」を強化することに寄与するのです。大切な会議やプレゼンの前に意図的に「あることモード」に浸るのは有効なわけです。大切なのは、どちらのモードが重要ということではなく、自分の意志でモードの切り替えができるようになることなのかなと思います。

自分なりに「あることモード」への入り方を習得できると強いです。マインドフルネスが着目されている文脈はこういうことなのかなと私なりに解釈しました。


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