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新しいマーケットの創出-水族館の既成概念をぶち壊す①

皆さん、こんにちは!
JCEL株式会社 代表の三坂です。

前回の私の記事では、「水族館事業の軌跡」と題して、新江ノ島水族館でスタートした私の水族館人生の始まりについてご紹介しました

今回はその続きのnoteになります。
まだご覧になっていない方は、前回の記事も併せてご覧ください!

「普通の人」向けの水族館

事業会社が作った事業計画は完璧でした(数字上は…)。

端的に言えば、旧水族館の閉館前年の年間入場者数「30万人」を新規開業後「180万人」と6倍に押し上げるというもの。しかも、しっかり投資コストも抑えられており新水族館は旧水族館よりコンパクトに設計されていました。

普通に考えると、売上を6倍にするには6倍の魅力を提供する必要があるわけです。

一般的に水族館の魅力とは展示コンテンツの魅力ということになります。
なので、新水族館は「展示コンテンツの魅力を6倍にする」というのが答えとなります。

しかし、前述したように新水族館の規模は従前のものよりコンパクトで、しかも展示生物は基本的に旧水族館から譲り受けたものそのままでした。
私の知見では解決できないと思い、懇意にしていただいていたシンクタンクにヒアリングに行くと「これは無理ですよ。事業そのものを考え直しなさい。」との助言。

万事休す、そんな状況でした。

そもそも30万人を40万人、50万人に押し上げるというのは何となくイメージできるのですが、180万人となると「押し上げる」ということとは違ってきますよね。

これはどうも従来の水族館のロジックでは解けそうもありません。

開き直った私は「水族館好き(魚好き)の人は少なくとも30万人来てくれる。残りの150万人は水族館に興味がない人に来てもらおう!」とターゲットを変えることを決めました。

何故なら、当時水族館にまったく興味のない私は「水族館に興味がない人の気持ちを一番良く知っている」はずだから、その方が解きやすいと思ったのです。

今思えば、何の根拠もない思い付き以外の何物でもなかったのですが…。
もちろん「水族館に興味のない人」は水族館が嫌いな人ではなく、特に好きなわけではないということで、「普通の人(自分も含む)」と定義しました。

そして「普通の人の普通の週末」に水族館という選択肢を提案することにしました。

水族館のある日常とは?

水族館というのは海や川のいきものを展示する施設なので海に囲まれた日本とは言え、かなり非日常なものです。その非日常を普通の人の日常生活にアジャストすることが今回の課題です。

一方で既存の水族館を見てみると老若男女、あらゆる世代の人々が足を運んできていました。

週末は家族連れ(お孫さんを含めた3世代も)が目立ちますが、平日の日中はベビーカー族、夕方からは学生やカップル、夜になると会社帰りのOLさんの姿も。

今の時代「ターゲットが重要」とばかりに飲食店舗、物販店舗等、Z世代向けとか高齢者向けとターゲットを明確にした商品が大半ですが、水族館は全世代が受け入れてくれるオールターゲット商品というポジションが確立されていました。

このオールターゲットという強みを活かすことで年間180万人の可能性が見えてくると感じました。

世の中にある「オールターゲット(老若男女)の日常」と言えば…

「公園」です!

公園は家族と行っても良いし、大勢の友人と行っても、ひとりで行っても良い。わいわい楽しく過ごしても良いし、のんびりと過ごしても、考え事をしても良い。そんな水族館が良い!

私は水族館の公園化に舵を切りました!

(続く…)


JCEL株式会社 代表取締役 三坂伸也

三坂伸也の略歴

一級建築士

早稲田大学理工学部を卒業。
1985年大成建設(株)入社。
1989年オリックス(株)入社。

オリックス不動産(株)水族館事業部長、オリックス水族館(株)常務執行役員を経て、2014年12月オリックス水族館(株)代表取締役に就任。

京都水族館(京都市下京区)、すみだ水族館(東京都墨田区)の開発・運営責任者として陣頭指揮を執る。

2019年 2月JCEL(株)設立、代表取締役社長に就任
JCEL株式会社
国内で常に新たな水族館の形に挑戦をしてきた三坂伸也が代表を務めるJCEL株式会社。満を持して海外へ進出、「水族館の公園化」