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「まぐれ」はない世界戦

皆さんおはこんばんにちは!
(5072文字/7約分で読めると思います。)

最近原宿のデカいIKEA(新複合施設の「WITH HARAJUKU 」の中に鎮座してた)に行ってきたんですが、郊外のデッカいIKEAに比べてスペースは劣るものの、様々な空間サンプルが展示されていたり、洒落てる電球がぶら下がっていたり、郊外でも、都市に店を構えていてもIKEAの魅力は健在なんだなぁと実感した今日この頃です。

そんなIKEAですが、北欧家具というのがウリなのはなんとなく分かっていたものの、そういえばどこの国発祥の企業なんだろうと調べてみると、スウェーデンの田舎にあるエルムフルという村の通信販売会社から始まったそうです。

そんな話を友達としていたら、今では一大音楽ストリーミングサービスの一つ、「Spotify」を作ったのもスウェーデンだよねと言う話になり、初耳だった自分にとって、音楽と、インテリアというそれぞれ市場としても大きい領域の代表的なサービスを2つも作ってるのか。。という衝撃を受けました。(H&Mもスウェーデンという仰天)

スウェーデンというと、なんとなく北欧でおしゃれなイメージ(IKEAの影響でより一層そう思わされるのかもしれないですが)っ持っていましたが、サービスとしては強大な力を持っている国で、そういえば韓国とかもドラマとか、映画とかで小国ながら強いよな。。と思い今日はそんな小国ならではの強さというのはあるのか?という視点で考えていこうと思います。

スウェーデンの強さとは?

スウェーデンってそもそもどんな国だっけ?という話だったんですが、基本情報というと以下のような感じになります。

面積:45万平方km(日本の約1.2倍)
人口:約1,022万人
首都:ストックホルム(ノーベル賞の授賞式とかやってる)
言語:スウェーデン語

面積が日本に比べて特段大きい訳ではないですし、人口は日本(1億2000万人)の10分の1なので、単純な労働力の差でいうとむしろ日本の方が上回っているとすら思えます。(年齢比ではないので一概には言えませんが)

にも拘らず、「IKEA」や「Spotify」、「H&M」などのメジャーサービスを世界展開させている強さの秘訣はどこにあるのでしょうか?

Spotify CEOのダニエル・エク氏は、「スウェーデンから世界的なテクノロジー企業が生まれる理由は?」という問いに対して以下のように答えていました。

「最悪な事態に陥って倒産することもあるが、それでもここでは自分のアパートで暮らすことができ、食べ物に困ることはない。だからこそ、リスクを取ることが可能になる。リスクを取った人の中からほんの一握りがグローバル企業として躍進できる」

スウェーデンの社会保障といえば、「高福祉、高負担」が挙げられ、国民負担率(国民所得に対する税負担率と、社会保障負担率の合計)は日本が37.2%に対し、スウェーデンは76.5%とほぼ二倍の負担率となっています。

国民への負担は大きい分、見返りとしての支援は手厚く、出産費用や20歳までに掛かる医療費、大学までの学費も無料となっており、医療制度、セーフティーネット共に充実しているため、結婚などのライフイベントがあっても、自分の事業には挑戦しやすいというのは一つの側面として挙げられそうです。

次に個々の企業に焦点を移してみると、小国だからこそ世界展開を前提とした戦略を持って臨んでいるというのがありそうです。H&MやIKEAは両社共に製造小売業でありながら、自社で生産設備を持たないファブレス経営を主としています。H&Mでは世界約20カ国の生産拠点と、協力工場を800社。IKEAであれば世界50カ国で1250の協力工場を持ち、デザイナーはスウェーデン本部に据えているという体制を取っています。

要となる商品のデザイン部分は本国でやりつつ、それらを生産するコストは世界に分散させることで、流通コストを抑え、現地法人を通じて店舗間での商品の売れ行きなどを本部と共有し、各国のニーズに沿った商品を展開するという世界市場を見据えたモデルを持っています。

中でもIKEAでは「イケアのデザイナーは、わが社の特徴であるフラットパックが40フィートコンテナに幾つ積めるかを考えなければ、デザインできない」と言われるほどで、ただおしゃれな家具を作るのではなく、そこから物流にまでデザインが紐付いているという徹底度合いです。

物流や情報共有に関しても、ハードだけでなくソフト面のITもスウェーデンの強みといえそうです。国としてもIT施策を前傾で展開しており、90年代から政府によるPC購入の税控除に始まり、2000年代には家庭用PCに対しても補助金が出るなど、政策的にITインフラ整備が行われてきたそうです。かのSkype創業者、ニクラス・ゼンストローム氏もスウェーデン人だということには驚きでした。

アメリカやヨーロッパの外資系に共通するのは、そもそもの自国マーケットが巨大であるが故に、展開先である海外のローカルな市場調査をせず、自社の商品を一方的に押し付ける傾向が強い点ですが、一方のスウェーデンでは1000万人前後という国内市場の小ささもあり、海外展開が前提としてあるからこその配慮と戦略が功を奏していると言えそうです。

韓国のエンタメ文化

アパレルや、インテリアなどで独自の強さを持つスウェーデンとはまた別のエンタメという視点で、最近明らかに強いなと感じるのが韓国です。

テレビやドラマをそこまで見ない自分でさえ、日本のコンテンツ社会は韓国ドラマや、韓流アイドルに占領されまくってるなぁと感じる日々です。アカデミー賞の作品賞、監督賞など総なめにして話題をかっさらった「パラサイト・半地下の家族」も記憶に新しいですが、こちらも純韓国産の映画ということで、エンタメ業界でグイグイその影響力を強くしている印象があります。

韓国という国自体そもそもどれくらいの規模なのかと調べてみると、

面積:約10万平方km (朝鮮半島全体の45%、日本の約4分の1)
人口:約5,178万人
首都:ソウル
言語:韓国語

国土は日本の4分の1、人口は日本の約半分ということで、これまた日本と比べてハードな視点で差がある訳ではなさそうです。にも拘らず、BTSや、「半地下の家族」「愛の不時着」など昨今のエンタメ界を席巻してるのは何が要因なのでしょうか?

アメリカでも最高権威とされる音楽チャート、Billboardにて韓国人初、アジア人としては約57年振りの1位を獲得したBTSですが、「Dynamite」はシンプルに曲として気持ちよく、ダンスレベルもアイドルグループ?(という括りになるのかももはや怪しいですが)とは言えない程のクオリティで、作品として圧倒的ですが、それでも韓国という小国のグループをどうやって世界に知らしめたのかという点は気になるところです。

曲というとまず最初のハードルとして「歌詞」が挙げられますが、これまでの彼らの曲は基本的には韓国語で、本格的にアメリカに進出してからもそれは変わらなかったそうですが、Dynamiteでは初めて英語のみで歌われ、作詞はUSポップをひた走るジョナス・ブラザーズといった若手アーティストに曲を提供してきたジェシカ・アゴンバー氏とイギリス人のデービット・スチュワート氏が担当し、明らかに世界を意識した編成ということが見て取れます。

そんな英語の歌詞を違和感なく歌い切るパフォーマンス力自体も超絶なんですが、それ以外に着目したいのが、韓国の国内音楽市場規模です。韓国の国内音楽市場は5.8億ドル(約580億円)、日本は26億ドル(約2600億円)と、日本の約2割しかない市場規模こそが、海外進出を前提としてエンタメを作っていく土壌になっているのかもしれません。

BTSの広告戦略としてSNSが取り上げられることが多いですが、BTSの所属事務所がそもそも大手ではなかったことがあり、マスへの広告は打てないものの、無料で国境なく宣伝できるSNS比重を最初から重くしていたのも最初から世界進出を意識した上での一手だったと言えそうです。

デビュー当初から日常的にTwitterやYoutubeを高頻度で更新し、ファンとの距離感を確実に築いてきた結果、ファンであることを一種のステータスとする、「ARMY」というコミュニティが出来上がり、ファンが自らのSNSを通じて(ファンが自分の可処分時間を使うので、BTS側の時間は減らない)宣伝するという好循環が生まれています。

Youtubeでも1曲のMVをダンスバージョンだけで上げたりすることで、観るだけでなく、当事者として参加できるような仕掛け、振り付けなども緻密な戦略との一つとも言えるでしょう。

とはいえ、パフォーマンスを見ていて純粋なクオリティとして圧倒的ですし、外国人でありながら人柄の良さも出まくっていて、そういう戦略抜きにしてもファンになってしまうなぁと思ったので、やはりクオリティあっての広告戦略ですし、その戦略が海外に向いているのが韓国ならではの特徴なのかなと思いました。

最後に「パラサイト・半地下の家族」のアカデミー賞についても少し触れさえ下さい。本作は、「社会格差」がテーマの作品ということもあり、韓国だけでなく世界共通の問題として咀嚼されやすいテーマを意識して作られたそうで、音楽同様、映画の国内市場もそこまで大きくないからこそ、世界市場を意識した作品作りが前提のようです。

また、国を挙げての後押しも大きく、1997年の金融危機直後に就任した金大中元大統領は、小さな自国を生き延びるために、エンタメ産業に力を入れる方向へと舵を切ったそうです。金氏は選挙の公約として国費を注いで韓国映画を「世界規模のエンタメ」にすることを掲げ、当選後は、韓国映画振興委員会に年間約150億円もの助成をし、学校を創立して人材育成にも力を入れました。

個人的に驚いたのは、韓国民の映画鑑賞頻度で、年間鑑賞本数は1人当たり3,4本で、日本人の約3倍とも言われ、エンタメに向ける目の肥え度合いも高いことから、韓国映画そもそものクオリティを底上げしている要因かもしれません。

また、韓国には、コンテンツ輸出の支援を担当する韓国コンテンツ振興院たるものが存在し、その振興院が持っている2020年度予算は約440億円と、一方の「クールジャパン関連予算」におけるコンテンツグローバル需要創出促進での支援費用は31億円と比べてもかなりのお金がコンテンツに当てられていることが分かります。

クールジャパンでは、プロジェクト毎に後付けで補助金が支給される形態が多いそうですが、振興院では、そもそもの独自予算が組まれているので、機動的に動けるというメリットもあるそうです。

このように、クオリティだけでなく、国家政策としてコンテンツを積極的に海外に売り出していこうという姿勢も相まって、昨今の韓流ドラマ、映画、音楽のブームが形成されているのかもしれません。

世界に売り出す前提で勝負する

以前、西野さんが「クオリティの背の順で世界線への切符は回ってこない」という類の話をされていましたが、今回、スウェーデンや韓国の事例を見てまさにだなぁと感じました。

両国とも国内市場にそもそも期待できないからこそ、世界市場をターゲットにする前提で商品、サービス、コンテンツを作っているということで、これは偶然でなく、緻密に計算された戦略であることが分かりました。

圧倒的クオリティであれば世界に見つけてもらえるというのは幻想であって、(圧倒的クオリティであることは勿論前提ですが)それを世界の人に見つけて貰い、見てもらう機会は自らもぎ取りにいくことが必要で、それは韓国だから、スウェーデンだからできたという固有の理由ではなく、世界に打って出るぞという姿勢を貫いたからではないでしょうか。

日本も国内市場がまだ堅調とはいえ、少子高齢化、人口減少が進む中でここから市場が拡大することはないので、否が応でも世界に打って出ることが必要になりそうです。

自分自身も、日本独自の魅力や文化を絡めて世界に発信していければいいなぁと考えていましたが、それらの要素はあくまでブーストであり、浮世絵を絡めれば見つけてもらえるのではなく、浮世絵を絡めたものを「カッコイイ」と思わせて、見つけてもらいに行くコストも忘れないようにしたいです。

まずはコンテンツ作りからなので、そこはあくまで先の話なんですが、狙わないと取りに行けないという前提は忘れずにいたいと思いました!ではまた!

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